一夜限りの【あみの3】『キネマ純情』鑑賞記


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2016年4月30日、GW真っ只中のシネマスコーレ(名古屋市 中村区)は、たくさんの観客でごった返していた。

「今までゴールデンウィークには当たらなかった井口さんの作品を、ようやくゴールデンウィークにお届けできます」

シネマスコーレの坪井篤史さんは、そう言って顔を綻ばせた。

「シネマスコーレさん、実は10年目なんですよね」

登壇した井口昇監督は、より一層の笑顔を見せた。作品がシネマスコーレで掛かるようになって、井口監督が舞台挨拶に立つようになって、今年は10年と言う節目の年に当たるのだ。
そんな井口監督が引っ提げてきた新作は、『キネマ純情』。井口監督がプロデュースする女優兼アイドル5人組【ノーメイクス】の2人も名古屋にやってきた。アイドルグループ【ノーメイクス】は、『キネマ純情』の主演である。

「醤油かと思ったら(ソースかけちゃった!)ブレーキとアクセル認識不能。宇宙のドジっ子、みのりん こと荒川実里です!」
「大きなタッパに(小リスの心!)山をも動かすLサイズのシンデレラ。ノッポのあむ こと柳杏奈です!」

ちなみに、この自己紹介はプロデューサー井口監督の考案だそう。

井口昇監督 今回は、どう言うコースを辿ったんですか?
_1100974荒川実里 まず昨日の夜、夜行バス集合(場内笑)。バスの前に、松屋でご飯を食べて……いや、名古屋で美味しいものを食べに行くので……
柳杏奈 東京では、松屋でいいか、と(笑)。で、朝6時に名古屋に着いて……
荒川 名古屋と言うことで、ちゃんとモーニングに行って来ました。
 それで、お手製のブロマイドを2人で詰めて……
荒川 納品書を書いて(笑)……
井口監督 全部、自身でやってますからね(笑)
荒川 小倉トーストが食べたかったんですけど、勝手に無いと思い込んでて……るるぶを後で見たら、「え、さっきこの店行ったよね!?」
 「小倉トースト、あるよー!!」って(笑)
荒川 ……明日、もう一回行って来ます(場内笑)

井口監督 そもそも【ノーメイクス】は、この映画を作る為に結成されたんです。皆さんオーディションで応募してくれて、僕らが選抜して……それが、もう1年以上活動しているんですね。気が付いたら、CD4枚も出してると言う。『キネマ純情』は1年前に撮影されたんですが……どんな映画ですか?
荒川 最も形容しがたい映画であることは間違いないですね……。取りあえず、“青春百合映画”って言っておけば大丈夫ってことは学びました(場内爆笑)。クラウドファンディングで作られた映画なので、直接的なファンの方の支援を感じました。
 映画に対する愛をたくさん感じます。
井口監督 今回、クラウドファンディングに条件が一つあったんですよ。“支援が100万円を突破したら、スクール水着のシーンがあります”と言う……でも、その時はストーリー何も考えてなかったんです(場内笑)。アイドル映画って言うと、芝居が出来ない人が無理矢理やらされてる感の物が多いじゃないですか。そうじゃなくて、とにかく芝居を見せるアイドル映画をやりたいな、「こんなに緻密な芝居もやるのか」って所を見せたいなと思いました。女の子同士のキスシーンが、ギネス級に出てくると言う……て言うか、ギネスに挑戦したかったんです(笑)
 たくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん怒って、たくさん悲しんでほしいと……あれ、何か順番おかしい?
荒川 最後、悲しんで終わる感じになってる(笑)
井口監督 「ここは観てほしい!」ってポイントはありますか?
荒川 好きなところで笑ってほしいですね……声に出して笑ってもらいたいです。そして、一番最後まで観てほしいです。エンドロールが終わるまで、この映画に釘付けになって、時間を忘れて楽しんでいただけたらと思います。
 ジェットコースターみたいな、最初から最後までノンストップな『キネマ純情』ですので、皆さんに思いっきり楽しんでいただければ嬉しいです!

『キネマ純情』ストーリー:
高校の演劇部に所属するヨシエ(洪潤梨)は、親友のアカリ(荒川実里)、部長のアキ(柳杏奈)と一緒に、姉のケイコ(上埜すみれ)に乞われ、大学生の自主制作映画に出演することになった。女子高生の出演に固執する監督のナオミ(中村朝佳)は、サディスティックな演出で出演者だけでなくスタッフも追い込む。度重なるキャスト交替、現場を離れる撮影クルー。カメラに煽られるうち、本当の自分をさらけ出し始める、ケイコ、アキ、アカリ、ヨシエ。そして、ナオミが封印していた記憶を呼び起こす時、映画は誰も観たことのないクライマックスへと突入する――。

上映後、再び登壇した3人を、観客は万雷の拍手で迎えた。

荒川 劇中の衣装でスクリーンの目の前に飛び出すってことは、なかなか無いですよね。
井口監督 ある意味、4DXですよね(場内笑)。どうでした、久しぶりに観て?
荒川 「こんな映画だった!」って、思い出しました(笑)
 わかる!新鮮だよね。皆さん笑ってくれて、凄く安心しました。
井口監督 みのりんの「一緒に出よう!」って言うところ、あそこ必ず笑いが起こりますね。
荒川 何回も観てて凄くお客さんが笑ってくださるんですけど、撮影してる当時は真剣すぎて、あれが笑える一文だってことを全く理解してなくて(笑)。最初に試写会で観た時に「え、何で皆笑ってるの!?」って吃驚しちゃって……そのくらいの気持ちで臨んでたんだなって、今になると凄く「あの頃の私初々しかったな」って(笑)。あめも結構、違う人に見えたんじゃないかって思うんですけど……
_1100975 怖くないですからね!大丈夫ですよ(場内笑)!何か、上映後しゃべってもらえない現象が起きるんですが……私はTwitter大好き人間なんで、しゃべることは大好きです(笑)
井口監督 今回脚本書く時、当て書きって言うか5人のイメージで書いたんですけど、あむは本人と真逆な役を演ってもらおうと思ったんです。普段は結構ニコニコしてるんですけど、時々眼が鋭くなる瞬間があるんで、クールな役を演ったら面白いんじゃないかなって……オーディションの時から思ってたんです。
 最初(脚本を)もらった時は、「これは……どうしよう」と思いました。一回アキちゃんの気持ちに置いてから、自分に取り込む作業をずっとやってて……撮影終わった後、私は男なのか女なのか分からなくなってました。
井口監督 みのりんは、一般的に抱くみのりんのイメージと重なる役だったと思うんだけど……どうでした?
荒川 全体的に濃かった5人の中では“普通な役”って言われることが多いんですけど、個人的には井口監督に見抜かれた“本当の荒川実里”に近いような性質を凄く感じる部分があって、「怖いなぁ」って思いました(笑)。

井口監督 ヨシエ役のゆんゆん(洪潤梨)とのキスシーンは、実際2人切りに近い環境で撮ったんです。
荒川 見渡せばスタッフさんは居るんですけど、凄い遠巻きで(笑)
井口監督 皆“星明子 状態”だったんですよ、『巨人の星』の(場内笑)
 私も、隠れて見てました(笑)
井口監督 「台詞なんですか?アドリブなんですか?」って聞かれるけど、半分アドリブだよね。
荒川 そうですね。「のど飴」も、潤梨ちゃんが本番だけ言った台詞なんですよ。1回か2回練習した時は、色々「イチゴの味」とか「歯磨き粉」とか「チョコ味」とか言ってたんですけど。
井口監督 あそこ、妙に生々しいよね。
荒川 のど飴は、舐めてないですけどね(笑)
 でも、チョコは食べてたよね?
荒川 チョコは、あなた(とのキス)の時(笑)!
井口監督 この作品は、合宿して5日間で撮ってるんですよね。
荒川 まだ結成して1ヶ月くらいの頃に皆で泊まり込みで撮って……そう言う意味では、私たち5人もぎこちなさが凄く画面に写ってて、それが初々しさにも見えて……あの頃としてはベストを尽くしたつもりなんですけど、今観ると凄く恥ずかしい(苦笑)
 キスして仲良くなったのは、ありますよね。
井口監督 やってよかったなぁ(場内爆笑)。じゃあ、キスしてないメンバーとは、ギクシャクしてるの?
荒川 そうですねぇ……
 それは(場内笑)……
荒川 監督の見てない所でしてるんで、大丈夫です(笑)!
井口監督 (笑)。ところで、誰のキスが一番よかったですか?
 私は色んな人とキスしてるんですけど、メンバーとはあんまりしてなくて……大部(彩夏:カズコ役)さんですかね。あと、みこみこ(晴野未子:モエ役)さんとは演りやすかったです。最初は「どうしよう」っておどおどしい会話をしてて、キスした後は普通にしゃべれるようになりました(笑)
荒川 私も、実は大部さんが。素敵な唇でした(笑)。メンバー5人でランキングを取ると、すーちゃん(上埜すみれ)が人気NO.1です。
 薄いけど、良い唇だって。
井口監督 どんな会話をしてるの(笑)!?

井口監督 「今だから言える」名古屋限定の話はありますか?
 “パンチラ”のパンツは、あむが西友に行って選びました(笑)。
荒川 あのパンツをノーメイクスと山本愛莉(アヤノ役)さんの6人が「これがいい」って選ぶ時、誰もカブらなかったです。ノーメイクスは、食べ物以外は割りとカブらない(笑)。居ないメンバーのことも知りたいと思うんですけど、ヨシエ役の潤梨ちゃんとナオミ役の中村朝佳ちゃんは最後まで恥ずかしかったらしいです。
井口監督 『キネマ純情』では、“別に求めてないけど写っちゃってる”パンチラもあるんですよ……心霊写真みたいなパンチラが(場内爆笑)
荒川 あと、一個メンバー内だけで共有してる面白シーンがあるんですけど……
 いやぁ(笑)……
荒川 ……あむから、ダメ出しされました(笑)
井口監督 気になって仕様がないじゃん(笑)!俺も知りたい。
 どのシーンか言わなきゃ、良いんじゃない?
荒川 じゃあ、ヒントだけ……ひらがな3つ。“お” “ひ” “つ”……メンバー内だけで共有されてる、秘密の笑いどころです(笑)

井口監督 改めて、自分のお芝居を見て、どうですか?
荒川 正直、私は……初めて言いますけど、最初に観た時からずっと悔しいなって思ってます。今までも役者として再現VTRとかエキストラで出させていただいてましたけど、これだけちゃんとした役を頂いて台詞を頂いて、自分にカメラが寄るって奇跡は本当に無かったことなので、嬉しかったんですけど……自分の未熟さが、正直、悔しかったです。
 珍しいね、あなた……心を打ち明けるなんて。
井口監督 でもね……そう言う悔しさって、心の栄養だよ。
 私もエキストラばかりだったりとか、名前の漢字が間違ってたりとか……そう言うことばかりだったので、井口監督にオーディションで選ばれて、「あれ、何で私受かったんだろ?」って今でも思います。でも、クラウドファンディングでここまで集まって、5人で映画を撮れたことは誇りなので……映画を観て「悔しい」とは思いますけど、あの時しか撮れなかったし、井口監督もOK出してくれたし……
井口監督 え、俺の責任(場内爆笑)?でも、良い芝居してたと思いますよ。
 お客さんも笑ってくれてるし、楽しんでいただけるなら、それで良い。もっと成長して、スクリーンに帰って来れるように頑張ります!

8月6日で井口監督の初上映から満10年を迎えることを記念し、シネマスコーレで夏に1週間【井口昇監督特集上映】が開催されることが発表されると、登壇者・観客を巻き込んだ拍手は最高のボルテージとなった。

_1100976――『キネマ純情』も、もう一回掛けたいと思ってますので、宜しくお願い致します。
井口監督 スコーレさんは僕の作品を毎年上映していただいて、毎年来させていただいて……第二の故郷だと思ってます。ここ(スクリーン前)に住みたいくらいです(場内笑)!
 スタッフさんにもお客さんにも温かく迎えていただいて、本当に幸せに思います。また新作でも来れるように、一つ一つ頑張って行きたいと思います。今後とも、そして『キネマ純情』を宜しくお願いします!
荒川 シネマスコーレさんに来られて本当に良かったと、心の底から思ってます。次のッ!作品でッ!是非ッ!……ちょっと今、監督にプレッシャーを(笑)……
井口監督 ……大きい目で見られましたね(笑)
荒川 絶対に、シネマスコーレさんに帰って来れると信じておりますので、一緒に応援していただければと思ってます。アイドルとしての一面だけでなく、一人ひとり女優として大きく頑張って行きたいと思います!
井口監督 映画を作る時、「またスコーレさんに行けるかな?」と思って作っています。ゴールデンウィークの最中、来ていただいて本当にありがとうございます。宜しければ『キネマ純情』、SNSや口コミで、ご家族に「お父さーん、面白い映画があるよ!」と……
荒川 (客席を見渡して)……皆さんのお父さん、“結構なお父さん”だと思いますけど(場内爆笑)……
井口監督 (笑)……“結構なお母さん”かも知れないですけど、「お母さん、面白い映画があるよ」、と(笑)。あと、お子さんに「名探偵より、もっとミステリーな映画があるぞ!」と、ぜひ口コミで……観せてしまえば、こちらの勝ちなので(場内爆笑)

今夜も素晴らしい作品を届けてくれた、最高のフィルム・メイカーと、最高の女優兼アイドルに――
ハイ!敬礼!!

取材 高橋アツシ

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