疾風の如くやってきた『虎影』レビュー


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――疾風の如くやってきた―― 『虎影』レビュー

「忍びの世界で最強」の名を欲しいままにしていた虎影(斎藤 工)は6年前にその道を捨て、里の片隅で愛する妻・月影(芳賀優里亜)と子供・孤月(石川 樹)とともに静かに暮らしていた。しかし、妻と息子を人質に取られてしまい、隠された財宝が記された二つの“巻物”を巡る、命懸けの争奪バトルに巻き込まれていく。愛する者を救う為、再び刀を抜くことを決意した虎影の前に立ちはだかる、凄腕の刺客達――
果たして、財宝は誰の手に?そして、虎影を待ち受ける運命とは!?
(『虎影』公式サイトより)

『東京残酷警察』(2008年/109分)、『ヘルドライバー』(2011年/117分)、そして『進撃の巨人』(監督:樋口真嗣)では特殊造型プロデューサーと、映画ファンの五感を刺激し続ける特殊造型師・西村喜廣監督。その最新作で主演を務めるのは、CM、ドラマと幅広い活躍を見せる若手実力派、斎藤 工。スクリーンでも『欲動 TAKSU』(監督:杉野希妃/2014年/97分)、『ヌイグルマーZ』(監督:井口 昇/2014年/99分)、『愛と誠』(監督:三池崇史/2012年/134分)と実に多彩な魅力を発揮し、西村監督の作品にも多数出演、『ヘルドライバー』のハイパワーポリスは強烈な印象を残した。
西村監督が最新作に選んだのは忍者アクション映画である。【伊賀の國 忍者映画祭】(2014年8月開催)記念映画として企画が始まった『虎影』に、主演の斎藤 工はノースタントで臨んだ。こうして、全く新しいネオ・ジャポネーゼ・ニンジャ・アクションが完成した。

虎影は、強い。抜け忍となった身であるにも係わらず、凄腕の傭兵忍者・鬼卍(三元雅芸)、鬼十字(清野菜名)、目なし(水井真希)と互角に渡り合う。
虎影は、抜け目がない。残忍な首領・東雲幻斎(しいなえいひ)や悪辣な藩主・リクリ(津田寛治)を前にして、起死回生の一手を打つ。
虎影は、優しい。自身が危機的状況にあるに関わらず、人身御供とされる寸前の家族(仁科 貴・黒岩(加藤)桃子)を見捨てることが出来ない。
虎影は、かっこ悪い。照れ隠しなのか笑えないギャグを連発し、前後の見境なく狼狽えまくって駆け出す。
僅かなシーンであるが、“かっこ悪い虎影”は是非とも心に刻んでほしい。物語が進むにつれて、“かっこ悪い”が“格好いい”になる瞬間を味わうことにきっとなる。
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そんな役者陣の身体を張った熱演に相俟って、数々のギミックが物語に色を添える。竹製強化外骨格、カラダ手裏剣、そしてそして、死の巨大遊技機。
オリジナルに拘る西村監督だが、深いリスペクトに裏打ちされたオマージュが作品を眩く彩っている。その筆頭は、『仮面の忍者 赤影』(フジテレビ系/1967~68年/全52話)であろう。時代考証を半ば無視したトリッキーな仕掛けの数々に、記者も含めてどれだけの視聴者がブラウン管の虜になったことか。
スタイリッシュなアクションシーンも、いい。残酷な運命に足掻くヒーローのヒューマニティを描くのも、いい。だが、破天荒な面白さがあってこその、『虎影』だ。西村監督の、虎影・斎藤 工の声が聞こえてくる。「どうだい、ワクワクするだろ?」

『虎影』は、思わせぶりな二人の思わせぶりな台詞で、終幕を迎える。
西村監督、どうかどうか、謳ったからには観せてくださいまし……“黒船城の機密”を!

文 高橋アツシ

『虎影』
キャスト:斎藤工 芳賀優里亜 しいなえいひ 津田寛治 石川樹 鳥居みゆき 島津健太郎 三元雅芸 清野奈名 水井真希 屋敷紘子 三田真央 松浦りょう 仁科貴 村杉蝉之介
原作・監督・編集・脚本・特殊造型監督・キャラクターデザイン:西村喜廣
配給:ファントム・フィルム (C)2014「虎影」製作委員会
6/20(土)より新宿武蔵野館他にて全国ロードショー!
公式サイト http://torakage.com/

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