リアルを凌駕するフェイク『超能力研究部の3人』レビュー
――リアルを凌駕するフェイク―― 『超能力研究部の3人』レビュー
『どんてん生活』(1999年)ばかのハコ船(2002年)『リンダ リンダ リンダ』(2004年)、『マイ・バック・ページ』(2011年)『苦役列車』(2012年)『もらとりあむタマ子』(2013年)……
画面からは常にオフ・ビートが溢れ、撮る映画は例外なく話題作となる、風雲児・山下敦弘監督――。
その最新作もまた、話題作であり、超問題作である。
『超能力研究部の3人』は、“ドラマ”と“虚構”と“現実”の境界線を描いたフェイクドキュメンタリーの新境地であり、“アイドル”と“女優”と“少女”のボーダーを写したアイドル映画の新たなる金字塔である。
『超能力研究部の3人』Story:
北石器山高校「超能力研究部」に所属する育子(生田絵梨花)、良子(秋元真夏)、あずみ(橋本奈々未)は、いわゆる「いけてない女子」で、日々超能力研究に勤しんでいる。ある日、同級生の森(碓井将大)が易々とスプーンを曲げるのを目撃、なかば強引に入部させた。森には人の心を読める超能力もあり、メンバーにはあっさりと「実は僕、宇宙人なんだ」と告白する。森君はきっと生まれた星に帰りたいんじゃないかなーと3人は勝手に決めつけ、高価なUFOマシーンを購入すべく無茶を重ねてゆく。果たしてUFOはこの町に舞い降りて来るのか……?物語は3人のアイドルが山下監督の厳しい指導のもと「女優へと脱皮する悪戦苦闘過程と巧みに二重写しにされながら進んでゆく――。
ドラマパートは大橋裕之『シティライツ』を原作として進行し、北石器山高校超能力研究部3人の“いけてない”青春模様を活写する。
山崎良子――秋元真夏は、雪子たち(安藤輪子・伊藤沙莉)と取っ組み合う。
村田育子――生田絵梨花は、叫ぶ「竹田(葉山奨之)ー!死ねーー!!」。
木暮あずみ――橋本奈々未は、同い年の竜一(泉澤祐希)と奇祭に煩悶する。
そして、佐藤 宏(『苦役列車』)が、松岡依都美(『凶悪』2013年/白石和彌監督)が、いまおかしんじ脚本の物語に力を与える。
メイキングパートはフェイクドキュメンタリーとして進行し、乃木坂46所属のトップ・アイドル3人が“女優”と成るべく奮闘する様子を描き出す。
秋元真夏は、現場マネージャー(佐藤みゆき)と統括マネージャー(山本剛史)にダメ出しされる。
生田絵梨花は、ショパンを弾き、インタビュアー(森岡 龍)に本音を漏らす。
橋本奈々未は、偶然会った大学の先輩(飯田 芳)に悩みを打ち明ける。
そして、川瀬陽太(『アントキノイノチ』2011年/瀬々敬久監督)が、阿部隼也(『サッドティー』2013年/今泉力哉監督)が、観る者に虚実を幻惑させる。
『超能力研究部の3人』の最大の特色は、作品を覆い尽くす“リアルさ”だ。
これだけあからさまに“フェイク”だと喧伝されても尚、リアルとしか映らない――そんな圧倒的なパワーが、この作品には溢れている。
秋元真夏の憤怒に触れた時、
生田絵梨花の絶叫を聴いた時、
橋本奈々未の涙を見た時、
観る者は思うのだ――これぞ、真のアイドル映画であり、真の青春群像劇である、と。
文・高橋アツシ
『超能力研究部の3人』
キャスト:秋元真夏 生田絵梨花 橋本奈々未 碓井将大 葉山奨之 佐藤宏 泉澤祐希 安藤輪子 森岡龍 佐藤みゆき 山下敦弘 山本剛史 監督:山下敦弘
©2014「超能力研究部の3人」製作委員会
『超能力研究部の3人』公式サイト