SAN値の確認 忘れずに 『正気か、狂気か、日本映画界の異端児 中川究矢 短編特集上映』鑑賞記
SAN値の確認 忘れずに --『正気か、狂気か、日本映画界の異端児 中川究矢 短編特集上映』鑑賞記--
“中川究矢”と言う才能をご存知だろうか。
園子温監督作品の助監督を、白石晃士監督『コワすぎ』シリーズで録音を、話題作『KAZUYA~世界一売れないミュージシャン』では編集・プロデューサーを務めるマルチな映像作家。俳優・川連廣明と共に、短編映画連作プロジェクト「ドグマ96」の主催。
記者が鑑賞した中川究矢監督作品は、2011年シネマスコーレで開催された『HMM(ハイパー ミニマル ムービーズ)in 名古屋』にて白石晃士監督・寺内康太郎監督の作品と一緒に観た『進化』(2010年/73分)だけだった。『HMM in 名古屋』で「僕の強みは、映画撮影のことなら一通り何でも一人でこなせることです」と言っていた氏の言葉を強烈に憶えていたこともあり、今回シアターカフェで行われる中川監督特集上映を楽しみにしていた。
それにしても……『正気か、狂気か、日本映画界の異端児 中川究矢 短編特集上映』……長いプログラムタイトルである。だが、観了してみて納得することになった。なるほど、狂気じみたプログラム名をさもありなんと思えるクレイジーな作品群だ。
せっかくなので作品毎に独断と偏見で“狂気度”を設け、2014年5月17日シアターカフェに登壇した中川監督の作品解説と一緒に紹介したい。
◎Aプログラム
『クラッキングライフ』(2014年/42分)
狂気度:☆☆☆★★(60%)
「所謂“ワークショップ映画”で、ほとんどが演技始めて1年くらい、唯一の演技経験が舞台を1本やっただけって言う俳優さん達です。さりげない演技を求めるより、大胆に行こうって気持ちで…僕『○○』(某少年漫画)が好きなんですけど、“突然、崖の上から見知らぬ敵に囲まれてる”みたいなのをやってみたくて(大笑)。最後はもっとブラックな終わり方にしてたんですけど、違う感じでってオーダーを受けたんです。それはそれで良いかなと思ったので、こんなラストになりました」
『循環』(2014年/18分)
狂気度:☆☆☆☆★(80%)
「『放電』・『進化』と撮ったので、もう1本『循環』を創りたいなと言うのがありまして…4年前くらいから構想してた作品なんですが、今回のきっかけでようやく撮ることができました。映画って、普通はドラマによって進んでいくじゃないですか…登場人物のやり取りによってドラマを把握して行くと言う…。じゃあ、ひとりの人がふと思ったことだけで映画って創れないのかなと、ずっと思ってたんです」
※初回上映の数分前に完成した、ワールド・プレミアムどころか“零号試写”並みの超最新作!!※
◎Bプログラム
『放電』(2009年/28分)
狂気度:☆☆☆☆☆(計測不能)
「インスピレーションで、“宇野(祥平)君で撮ろう”と言うのは最初からあって、ストーリーは空から降ってきた的なものだったんです。この当時、オリジナルで撮るのは久しぶりだったこともあり、“身体が硬かった”ところはあります(笑)。そんなこともあって『放電』(2011年11月撮影)でやり切れなかった部分があったので、『進化』(2011年12月撮影)と言う作品が生まれたってところもあります」
『Vision』(2011年/4分)
狂気度:☆☆☆☆★(80%)
「未だに8mmで映画を撮り続けてる狂気の映画監督・大西健児さんが参加されてる“銀鉛画報会”と言う8mmのオムニバス作品の企画に僕が声を掛けられ、フィルムを渡されて撮った作品です。「ドラマっぽいのを撮ってくれると嬉しいな」と言われたためフィクションの『Vision』を撮ったんですが、上映したのは「山形国際ドキュメンタリー映画際」だったんですよね(笑)」
◎Cプログラム
『日蝕』(2012年/35分)
狂気度:☆☆★★★(40%)
「種類は違うんですけど『放電』と同じように街の群集の反応を撮りたかったんです…日蝕の映画をもし山の中で撮ってたら、別に合成でもやろうと思えばできるじゃないですか。実はこの作品、撮影の2日前に思い付きまして(大笑)、脚本書いて…俳優二人、よく台詞憶えてくれたなと思います。本当の日蝕と…時間と戦いながら撮ったので、そう言う難しさもありました。細かい反省点で、本当悔しい思いの一杯ある作品です(笑)」
『無限』PV(2013年/4分)
狂気度:★★★★★(0%)
※『日蝕』エンディングテーマ曲のPV。監督・作詞:中川究矢※
中川究矢氏の監督作品は、まさに“日本映画の異端”である。そこに込められた狂気さえ帯びた情熱を目の当たりにした時、私たちは日本映画界の命脈と言うべき大いなる希望を肌で感じる。
『正気か、狂気か、日本映画界の異端児 中川究矢 短編特集上映』は、名古屋・大須シアターカフェで5月23日まで。日本映画界の異端児・狂気の希望を、どうぞお観逃しなく。
シアターカフェ公式サイト:http://www.theatercafe.jp/
ドグマ96 公式サイト:http://dogma96.web.fc2.com/
取材:高橋アツシ