笑顔で固定概念をぶっ壊せ!『チア男子!!』レビュー



「新しいことにチャレンジしてみないか!」大学で入部の呼びかけをする晴希と一馬。ところが返される言葉は「男子がチア?」。そう、彼らは男子チアリーディング部を作ろうとしているのだ。しかも2人はまさかの未経験で、元は柔道少年というキャリア。意外すぎる転身にももちろん理由はあるのだが――。

女子の印象が強いチアリーディング。それに挑む男子の奮闘を描いていると言うと、イメージが少し湧きづらいかもしれない。しかし、競技名が「アーティスティックスイミング」に変わった、シンクロナイズドスイミングに挑戦する男子高校生たちを映した『ウォーターボーイズ』を忘れてはならない。ゆえに思い出してほしい。固定概念をぶっ壊して生み出される青春ドラマは、眩しいほどの輝きと儚さが全開なのだ!

原作は『桐島、部活やめるってよ』や『何者』を手掛けてきた朝井リョウが、「第3回高校生が選ぶ天竜文学賞」を受賞した同名小説であり、実在する男子チアリーディングチーム“SHOCKERS”の活躍に触発され、書き上げたという。

人数が少ない、経験者がいない……。おっと、おきまりの展開じゃないか!だが、助っ人もやはり登場してくれる。仲間とか、諦めない心とか、そんなベタこそ青春。時には衝突し、あーだこーだ言ったって、それこそが青春。羨ましいくらいでいいじゃない!と素直に受け入れてしまうだろう。

柔道一家で育ってきた晴希役には、立て続けに映画の主演を務めている横浜流星。肩のケガをきっかけに自分の限界に向き合い、新たな一歩を踏み出す決意をする。続けることも大事ではあるが、迷いを感じるのなら別の道を選ぶ勇気も必要だ。晴希のよき相棒でありチア部設立の言い出しっぺ、一馬役には中尾暢樹。息の合ったコンビに、絆の強さが伝わってくる。

さらには瀬戸利樹、岩谷翔吾、菅原健、浅香航大など、注目のイケメン俳優たちがエネルギッシュな演技で魅了してくれるのは無論のこと、ぽっちゃり体型の小平大智の存在も忘れてはならない。また、それぞれが抱えている苦悩や背景もきちんと組み込まれていることで、クライマックスに向かって集結していく姿が鮮明に映えている。

撮影の約3ヶ月前から特訓をはじめた、彼らこと“BREAKERS”。吹き替えなしで全力でパフォーマンスに挑む姿は、ドローンを使っての撮影でより臨場感があふれており、観ているこっちもハラハラしながら心の中で手拍子を送っているはずだ!

誰かの背中を押すために生まれたチアリーディングだが、彼らを応援したくなる一体感が疾走する青春ど真ん中の朝井ワールドに、いつの間にか元気を与えられているだろう。

文 南野こずえ

『チア男子!!』
配給:バンダイナムコアーツ/ポニーキャニオン
©朝井リョウ/集英社・LET’S GO BREAKERS PROJECT
5月10日 全国ロードショー

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