鈴木タカラのお宝映画Vol.1『恋するプリテンダー』レビュー



「ラブコメ」と聞くと一歩引いてしまう人は私です。「史上最高のロマンティックコメディ」「意地とプライドを懸けた××きゅん(読み:チョメきゅん)」といったキャッチフレーズも、ラブコメに苦手意識を持つ身としては益々足を運びづらくなるパワーワード。だけど、本作はそんな人にこそ観て欲しい!ラブコメは、もうあなたが思っているラブコメではないかもしれない。ポップコーン買って、絶対もう1回観に行くもん!!

アメリカ、街角のカフェで偶然出会ったロースクールに通うビーと金融マンのベン。惹かれ合った2人はデートをし、一夜も共にするが、誤解、行き違い、勘違いでその関係は一気に冷める。

あぁなんてアメリカン!なんでカフェで偶然出会った人とすぐにデートするのよ!お互い1日暇なの?なんとなくオシャレに見えてるけどナンパだよ??ラブコメを受け入れられない人の典型的思考が爆裂する初期設定です。

数年後、二人はオーストラリアで行われる同じ結婚式に出席することとなり、最悪の再会を果たす。
真夏のリゾートウェディングに皆が心躍らせる中、犬猿の仲の2人は険悪なムードを漂わせている。周囲に気を遣わせている負い目、また復縁を求める元彼から逃げたい、元カノの気を引いてヨリを戻したいというお互いの望みを叶えるため、2人は恋人のフリをするというフェイク・カップル契約を結ぶが…果たして2人は最高のカップルを演じ切ることができるのか!?

と、来るところまで来ています、ラブコメ。10作品分くらいのラブコメあるあるを詰め込んだかのような設定。だからなのか、気がついたら設定にあれこれ疑問を抱かなくなっているのです。1mmの隙もなく、少しの躊躇もなく、最大最重量のラブコメが押し寄せてくるので余計な事を考える余裕がない!そう、圧倒的世界観なのです。圧倒的世界観のラブコメ。なかなか珍しい組み合わせですけど。

そんな圧倒的世界観を作っておきながら、これでもかと小ネタを盛り込み、貪欲に笑いも取りにいく。主人公たち(特にビー)をはじめ、メインのやりとりの横で、画面のものすごく端の方で、拾われる拾われないに関係なくボケまくる登場人物たち。気付いていないだけで、もっとたくさんのお遊びが散りばめられていたのだろうと思うと何回だって観たくなるし、観た人と答え合わせをするのも絶対楽しい。時にその小ネタが伏線として回収されるのも憎いんだよなぁ。

主演を務めるのはクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)の出演をキッカケに女優・モデルと引っ張りだこのシドニー・スウィーニーと、『トップガン マーヴェリック』(2022)のハングマン役で注目を集めたグレン・パウエル。監督は『小悪魔はなぜモテる?!』(2010)や『ステイ・フレンズ』(2011)といった名作ラブコメディを次々生み出すとともに、『ANNIE/アニー』(2014)など世界的なヒット作も手がけるウィル・グラック。人気・実力ともに最強の面々が手を組み、オーストラリアの雄大で開放的な地で、桁違いのキュンと笑いを作り上げた。

“全世界興行収入300億円超え“の評判に違わず、友達と、恋人と、ひとりだって、楽しめること間違いなしの最上級エンターテイメント!ポップコーンとLサイズドリンクもお忘れなく!

『恋するプリテンダー』
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
2024年5月10日(金)全国ロードショー

■鈴木タカラ(女優/ライター)
映像作品を中心に女優として活動しながら、執筆もおこなう。
主演作の『莉の対』(2024年)が第53回ロッテルダム国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。

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