PC画面上ですべてが完結する『search/サーチ』レビュー
妻を亡くし男手一つで娘を育てるデビット。現在高校生になった娘マーゴットとは年頃ということもあってうまくコミュニケーションが取れずにいた。そんなある日、友達との勉強会に向かったマーゴットは突然姿を消した。デビットの元に残されたのは行方不明になった日の不在着信、そして彼女のPCだけだった。マーゴットを探すべく、残された彼女のPCから手がかりを探すことに。しかしそこでみたものはいつも明るく友達に囲まれているマーゴットではなく、一人ぼっちの彼女の姿だったのだ。
映画の最大の特徴は「全てPCの画面上で物語が展開する」というところだ。FaceTime、Google、Youtube、Facebookなどあらゆるアプリケーションやインターネットサービス、SNSなどを通し登場人物の会話、心情、伏線などをすべて表現する。
「全てPCの画面上で物語が展開する」これだけ聞くと、固定された一つの画面の中で映画が完結することへの退屈さを想像するかもしれない。しかし断言できる。この映画は約100分の間全く飽きることがない。それはシーンごとに様々なアプリケーションを巧みに使い分ける演出と、全く展開が読めず終わりが予想できないストーリーによって実現されている。
この斬新な撮影方法を試みたのは監督を担当したアニーズ・チャガンティーである。彼はGoogleのメガネ型ウェアラブルである「Google glass」を用いてショートフィルムを製作し、それがきっかけで『search/サーチ』を撮影することとなったのだ。彼の斬新なアイデアとストーリングのセンスがなければ映画は成立しなかっただろう。
そしてもう一人、この唯一無二の作品である『search/サーチ』の本当の意味での生みの親として挙げられるのがプロデューサーのティムール・ベクマンベトフである。ベクマンベトフは現代の画面上で展開される生活を「スクリーン・ライフ」と名付け、人の喜怒哀楽やその感情の上で起こるコミュニケーションはデバイスなしでは語れないとして、この新しい表現方法の研究を重ねていた。 そして『search/サーチ』でチャガンティーとタッグを組み、現代社会の感情のコミュニケーションを最も表す映画作品を創ることに成功したのだ。
現在、私たちの生活はインターネットの中で完結している。人とコミュニケーションをとる手段がスマートフォンやPC上がほとんどとなり、その中で感情が動き、そして表現されている。しかし私たちは情報機器を使うことに慣れすぎて、感情が画面上に現れていることに気づけない。その気づきを与えてくれたのがこの『search/サーチ』である。本作を観ることでインターネット社会で生きる上での新しい気づきを得られることは間違いない。
文 神崎真由
『search/サーチ』
10月26日(金)全国ロードショー