パニック♪パニック♪♪パニック♪♪♪ 【第3回 モーレツ!原恵一映画祭 in 名古屋】潜入記
「はらかんとく~~!おひさしブリブリ~~!!どようのよるに、なごやで、あつまってるんだって?なんのしゅうかいやってんの?もしかして……オトナだけの、いけないしゅうかいじゃないよね?できれば、みしゅうがくじのオラもまざりたかったんだけど……さいたまとなごや、とおいからね、またこんどっていうことで。じゃ、そういうことで~~。よろチクビ~~!!」
短いメッセージだったが、客席からは歓声が漏れ聞こえてきた。
『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』(1999年/98分)と同時上映『クレしんパラダイス!メイド・イン・埼玉』(監督:水島努/1999年/12分)を劇場公開当時の順で、しかも35mmフィルム版というマニア垂涎の環境で鑑賞したばかりの観客には、今のメッセージの持つ価値が良く分かるのだ。
なにせ、明らかに今回の上映の為だけに用意された内容で、しかも……聴き紛うはずもない、“野原しんのすけ”その人の声だったのだから!
2016年10月15日、シネマスコーレ(名古屋市 中村区)の観客席は、【第3回 モーレツ!原恵一映画祭 in 名古屋】を待ちわびた映画ファンで満席であった。
MC. 特別なメッセージ、ありがとうございました。原監督に作品についてお聞きしたいんですが、以前『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年/89分)のトークの時(【第1回 モーレツ!原恵一映画祭 in 名古屋】)に、『映画 クレヨンしんちゃん』はどんどん興行成績が下がってて、今回上映した『温泉わくわく』で一番底になったという話が……
「ふぅ~~ん……」
場内が、再びざわつく。まただ。また、“しんちゃん”の声だ。
今回の【モーレツ!原恵一映画祭】は、名古屋と春日部(?)を回線で繋いでいるとでもいうのだろうか?
??? 何やってんの!!
劇場の中扉が突然開き、一人の女性が顔を覗かせた。乱入者が誰であるのか気付いた左前方の客席から波紋のように広がった嬌声は、最後尾の座席に届く頃には叫喚(…としか思えない程の大歓声)と化していた。シネマスコーレは、お祭り騒ぎを通り越して、パニック、パニック、パニックであった。
??? ちょっとお邪魔しても、よろしくて(笑)?どうもお邪魔シマウマー。
MC. スペシャルゲストの、矢島晶子さんです!
矢島晶子 宜しくお願いします!
拍手なのか何なのか良く分からない大音響が、満席の劇場に響き渡った。涙ぐむ観客がいるのも、無理もない……ついさっき“ケツだけ歩き”で春日部を、世界を救った野原しんのすけの“声の主”が、手を伸ばせば届かんとする距離に笑顔で座っているのだ!
MC. では、改めて作品のお話を。『温泉わくわく』で一番興行成績が下になったと……
原恵一監督 9億(円)だったかな?多分、歴代最下位ですよ。でも、理由もあってね……ちょうど、オウム真理教のテロ事件の直後だったんです、公開が(1999年4月17日)。人の集まる場所は、何かテロの標的になるんじゃないかって……映画館も皆ガラガラになっちゃって。俺は見てないんだけど、初日ガラガラだったそうで……
矢島 4~5人だったような(場内笑)!?でも、誰もいないと思っていたんです……ワケありの時期だったので。それでも、万が一来てくださる方がいたら申し訳ないと、とうちゃん(藤原啓治)とかあちゃん(ならはしみき)と、ひま(こおろぎさとみ)とで舞台挨拶はやらせてもらったんですけど……舞台に立ったら、お客様がいらっしゃって、凄く吃驚して「なんて命知らずな!」と(場内笑)。申し訳ないと思いつつ、凄く嬉しかったですし、「帰りも気を付けてくださいね」と思いました。
MC. オウム事件の影響もあって、興行成績が悪かったんですね……
原監督 丹波(哲郎)さんの力を持ってしても、ね(場内笑)。
MC. 『大霊界』(『丹波哲郎の大霊界 死んだらどうなる』1989年/97分)の力を、持ってしても(笑)
矢島 丹波さん、舞台挨拶でも霊界のお話しかされないから(場内爆笑)。
原監督 しかも、試写会の時に丹波さんが来るっていうので、俺や矢島さんはじめメインのキャスト陣が控え室にいたら、そこで丹波さんが霊界の話を滔々と(笑)。「キミたちも早く霊界に行きたくないか?(モノマネ)」(場内爆笑)って。
矢島 「死んだら、二十歳(はたち)!」って言われて、真っ先に反応したメンバーがいて、「嫌ッ!二十歳には辛い思い出があるから、嫌ぁ!!(モノマネ)」って(場内爆笑)……人生色々だなって思いました(笑)。
原監督 丹波さんみたいに「早く霊界に行きたい」って言ってると、亡くなっても哀しくないよね。
矢島 願いが叶ったと!?
原監督 丹波さん、今頃ウハウハだろうなって(笑)。お花畑で若い女性に囲まれて……露天風呂に入ってるのかな(場内笑)。
MC. 丹波さんにはどういう経緯でオファーを?
原監督 やっぱり強烈なキャラが必要だと思って、多分無理だろうとは思いつつ、聞くだけ聞いてもらおうとプロデューサーに頼んだら……又聞きですけど、丹波さんが「その映画に、俺が必要だったら……出る!(モノマネ)」って言ってくれたらしくて(場内爆笑)。一度、丹波邸にご挨拶に行ったら、応接間に通されて、マネージャーさんが「丹波は今、お風呂に入っております」って(場内笑)。
矢島 “風呂待ち”(笑)?
原監督 ここからもう、役作りは始まってるんだな、って(場内爆笑)。
矢島 そういうことなの(笑)!?
原監督 しばらくしたら、丹波さんがバスローブ姿で右手に葉巻を持って現れて、「やあやあ、待たせたな、キミたち」って(笑)。「アニメはやったことがないんだけど……今回は、キミの好きなように私はやるから、何でも言ってくれ」って……「凄え、世界のタンバが!」って感激しまして。実際アフレコになったら、「う~ん……絵に合わん!」って(場内爆笑)。
矢島 そうでした。あと、ご自身で勝手にOK出されてましたよね(笑)。「今ので、OK!」って(場内笑)。
原監督 「はい、休憩!」って、休憩も自分で出されて(場内爆笑)。
矢島 俳優さんや色々な分野でご活躍されている芸能人の方とは別に録ることが多いので、珍しいんですけれども……丹波さんの時にはご一緒できたんですよね。
原監督 最初は一生懸命合わせようとしてくれてたんだけど、そのうち上手く合わないんで、「よし、分かった。俺が何タイプか演るから、それで合うやつを使ってくれ。それで合わなかったら……絵を、合わせてくれ!」(場内爆笑)……俺も、「ハイ、分かりましたッ!」って(笑)。
矢島 声優側からするとちょっと違う雰囲気のアフレコだったので、凄く緊張しました。大御所の俳優さんですし、マイペースぶりにも驚いて固まるばかりで。あれくらいオーラを持ってらっしゃる方とご一緒できる機会は、中々ないと思います。
原監督 もう、丹波さんが現れると、丹波さんのペースになっちゃうんですよね。アフレコの時も、スタジオの前に東宝の宣伝部のベテランの方が立って待ってて……“丹波待ち”してるんですよ。で、遠くから「丹波さん、入りましたー!」って。
矢島 「丹波さん、入られまーす!」(笑)
原監督 丹波さん、「おーい。今日は宜しく頼むよ……で、何をやれば良いんだ?」って(場内爆笑)。
矢島 私たちも皆「えぇ?ご存知なんじゃないの!?」って(笑)。「どうなる、今日?乞う、ご期待!」みたいになってました(場内笑)!でも、その登場の仕方は、今日待ち合わせを名古屋の駅でした原さんも、ちょっと近いものがありましたよ(場内爆笑)。私とマネージャーと、こちらの(映画祭)主催の方々と一緒に待ち合わせをして、「19時ちょっと前には来てくださいね」ってお願いしてくださってたんです。でも、原さん結構ゆったり、味噌煮込みうどんを嗜まれたりして……19時ちょい過ぎになってから「いやぁ~」って、右手に小っちゃいお土産みたいなものをブラブラさせながら、どう見ても普通の酔っ払いでした(場内爆笑)!
原監督 ……山本屋総本家で味噌煮込みうどん定食を食べて、お腹いっぱいです(笑)。
MC. 待ってる間、矢島さん「原さんはアジア時間で動いてる」って仰ってましたよね?
矢島 はい(笑)。お若い頃原監督は、アジア放浪旅をされてた経験もおありですよね。それと、臼井(儀人)先生がご存命の頃、原監督と臼井先生ともう一人漫画家の大原ななこさんと私の4人でバリ島に行ったことがあるんです。もう、超マイペースで(笑)……臼井先生もマイペースな方だと思いますが、原さんは「この人絶対日本人じゃない!」って思いました(場内笑)。時間の感覚はバリもゆっくりなんですけど、いないと思ったらその辺を散歩してたり。別な機会ですが、ペットボトルに水らしき物が入ってるのを「これ、何~んだ?」ってわざわざ見せてくれたので、「え、お水じゃないんですか?」って聞いたら、「そう思うでしょう?……お酒♪」って(場内爆笑)。まだお昼前でしたよね(笑)?アフレコでお仕事させていただいてる時には、私たちは画面とマイクに向かって喋るので、後ろを向いて監督にお話しするってことは殆んど無いんですよ。なので、だいたい私が見てる原監督は、プライベートの“ブラブラアジア系”の感じですかね。
MC. アフレコの指示って、声だけなんですね。
矢島 そうですね、トークバックで。ゆったりした感じで、でも的確な。どんな表現を希望してるのかを伝えてくださいます。きちんと良い作品を作るっていう一念がある……あるはずなので(場内笑)!
原監督 いやぁ~、それほどでもぉ~(しんちゃんのモノマネ)(場内笑)
矢島 もう……マネっこして(笑)!私も、着ぐるみさんとかアニメがない時にこうやって素の顔で喋ってると、子供さんに「あの人、モノマネ下手!」って言われたり(場内爆笑)。私も思うんですけど、声だけで喋ってるのは私が勝手に作ったしんちゃん像なんですよね。絵があって、しんのすけとしての命が入ってる台詞の台本があって、その2つを頂戴して声に出すと、やっとしんちゃん完成!みたいになるので……済みません、ニセモノを聴かせてしまって。
原監督 本物ですよ!
矢島 本当?よかった!ありがとうございます(場内拍手)。
原監督 (笑)。今日、来る新幹線の中で仕事してたんですよ。
MC. 何のお仕事なんですか?
原監督 ナイショ(笑)♪
矢島 飲みながら……飲んでるのに、お仕事を?
原監督 ガリガリーって、かいてたら……気が付いたら、寝てたね(場内笑)。寝落ちしてて、床に原稿が落ちてた(場内爆笑)。
矢島 この上映会って、3回目だそうですけど……大丈夫なんですか、こんな感じで(笑)?
MC. 何だか、矢島さんが原監督の保護者のように(笑)
矢島 いえいえ、とんでもございません。『クゥ』(『河童のクゥと夏休み』2007年/138分)の時も『カラフル』(2010年/127分)の時も『百日紅』(『百日紅 Miss HOKUSAI』2015年/90分)の時も、監督が映画をやるらしいと聞くと「何か来ないかなぁ~、何か来ないかなぁ~?」と念を送ってるんです。それが届いて、たまに使ってくださって……今日は、その恩返しに。
原監督 『河童のクゥ』の時は、矢島さん、3役くらい演ったよね。
矢島 アナウンサーをとうちゃん……藤原(啓治)氏が演ってて、私はアシスタントだったんです。私、「はい、はい」って相槌を打ちすぎて、原監督から「矢島さん、漫才とかじゃないですよ」って言われました(場内笑)。
原監督 あの時ちょっと俺、しまったと思ってね。矢島晶子って、普通の大人の役を演らせると、全然上手くねぇなって(場内爆笑)!すぐ声が裏返っちゃうのよ(笑)。
矢島 だってぇ……いい声を出さなくちゃ!って、思うじゃない(ファルセットで)!でもそれ、他の音響監督の方にもずっと前に言われたことがあるんですよ。打ち上げの時に、「君は普通の役を演っても、あんまり面白くないね」って(笑)。確かに、ちょっと変わった役の方が、入りやすいんです……私、変態なんですかね(場内爆笑)?クゥちゃんの声を演った(冨沢)風斗くんは初めて会う子役さんだったんですけど、ロビーで座ってる時に声を聞く前から「あ、この子がクゥだ」って分かったんです。凄く独特な雰囲気を持ってたので。
原監督 彼も、もう二十歳ですよ。
矢島 うわぁ……大きくなったねぇ!
原監督 河童を拾った康一くん(横川貴大)は、今年から社会人ですし。で、『カラフル』では、駄菓子屋の前の少年を演ってもらったね。
矢島 私と、真柴摩利さんで……私の中では、しんのすけと風間くんが、二人で何故か駄菓子屋の前にいたという(笑)。
原監督 走り去っていく矢島さんが、最後に「ケーチー!」って言うんだけど……「おいおい、完全にしんちゃんになってるよ!」って(場内笑)。
矢島 嘘ー!?可愛く演ってたんですけどね、おかしいなあ……でも、たまに無意識のうちに、そういうこともあるみたいです。
原監督 でも、矢島さんは凄いんですよ。洋画の吹き替えも……アナキンの時(『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』1999年/133分)は凄い話題になってたもんね、ルーカスが「アキコ・ヤジマ、エクセレント!」って言ったとか言わないとか(場内笑)。
矢島 言ってないでしょう(笑)?でも、私も勝手に「私は、ジョージ(・ルーカス)に選ばれた女♪」って言ってました(場内爆笑)。『スター・ウォーズ』やディズニーさんって、難しいんですよね……全員別々に録るんですよ。一人ひとりで録るので掛け合う相手がいないですし、難しかったです。あと、本国の監視役みたいな方が来られてて、スタジオでちゃんと英語の口パクと日本語の発音が、特に最初や最後が合ってないと気持ち悪いと言って、どういう日本語にしたら合うのか現場で調整したりとか。
原監督 俺も『しんちゃん』やってた頃だったから、あれは嬉しかったですよ。やっぱ矢島は、世界に通じる女なんだと思って。
矢島 男の子役でしたけどね(笑)。監督はいつまでも“『しんちゃん』の”って言われるのは嫌だったりもするかも知れないですけど、私はどこへ行っても『しんちゃん』って言われるのが凄く嬉しかったりもするんです。5年半以上前の震災が起きた時にも、しんちゃんを演ってたからこそ、信じていただいて関わらせていただけたことがあります。皆さんが知っててくださる代表作ですので、それがもしなかったら「声優って言ってるけど、自称じゃない?」って思われるかも知れません。熊本もそうだと思うんですけど……色んな方が「お手伝いしたい」って言っても、良い人もいれば、ちょっとそうじゃない人もたまに紛れ込んだりするらしいんですよ。そんな人から地域を守らなくちゃいけないので、受け入れる側の人も慎重になって……私の場合、「しんちゃんの声を演ってるんですけど」って言ったら、「証拠は?」って聞かれました(場内笑)。結局、今でもお付き合いのある土地になったので、凄く感謝しています。熊本にはまだ1~2回しか伺ってないですけど、名刺の肩書き代わりの役目をしてくれるので、有り難く思っています。
原監督 若い頃に当時自分なりに一生懸命作った作品を、こうして大勢の人が観てくれて、喜んでくれるっていうのは、俺も嘘じゃなく嬉しいですよ。
お二人の楽しい会話は、いつ尽きるともなく続いた。とは言え、時間にも限りがある。ここで一端トークはお開きとし、客席からの質問コーナーが始まった。
Q. 今、野原ひろし役の藤原(啓治)さんが休養されて、森川(智之)さんが代役をされてますが、現場の雰囲気は如何ですか?
矢島 森川さんは、凄く一生懸命“藤原啓治氏が演っているひろし”を勉強されて、野原一家の一員になってくれようと努力してくださってるので、凄く有り難いです。色んな役をこなせる方なんですけど、今は『しんちゃん』のピンチを救ってくださるヒーローとして頑張ってくださってます。私やかあちゃん(ならはしみき)も、若い頃から一緒にお仕事させていただいてる仲なので、森川さんで良かったと思います。私は兄妹の役を演ったことがある(『ユリシーズ31』(NHKリメイク版)1991年)ので、森川さんのことを“兄さん”と呼んでます(笑)。
原監督 俺は藤原さんと初めて仕事をしたのが『しんちゃん』なんで、“ひろし”のイメージしかなかったんだけど……洋画だと格好良い役ばかり演ってんですよね、実は。
矢島 顔立ちが濃ゆいから、濃い顔の役が多いじゃないですか。
原監督 最近だと『アイアンマン』(劇場公開版/2008年~)とかね……笑っちゃうんだよね、あれ(場内笑)。啓治で一番爆笑したのが、毎年『しんちゃん』の声優さん達とメインスタッフで打ち上げやってたじゃん……忘年会みたいなの。皆でカラオケに行って誰かが何かの曲を入れたら、啓治が「あ……これ、俺出てるんだよなぁ」って言うから何のことかと思ったら、急にカラオケのイメージ画面で啓治が出てきて(場内爆笑)!
矢島 何か、歌と全然違う映像が流れたりするじゃないですか。そこで、シャドウボクシングみたいなことをやってる藤原啓治氏が映ってて(笑)!
原監督 もう、大爆笑(場内大爆笑)!今でこそ社長・藤原啓治だけど、田舎から出てきた頃はこんな苦労してたんだと思って(大笑)。
Q. 『温泉わくわく』にゲスト出演された方は、丹波さん以外も小川真司さんや家弓家正さんがいらっしゃいます。何かエピソードを聞かせていただけますか?
矢島 個人的に沢山お話をしたことはなかったんですが、やっぱり大先輩はお芝居に深みがあって、本当に素敵です。お二人とも若手にも普通に優しく接してくださり、まごついてる後輩には気を遣ってくださったり……本物の方たちって、宝ですよね。
原監督 小川さんと家弓さんのキャスティングは、俺の方からのリクエストだったんですね。洋画の吹替えとか、小川さんは『攻殻機動隊』(『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』1995年/80分)を観てて凄く良い声だったので。こういう人たちが、変な格好したり、変な組織のトップだったら面白えなと思ってお願いしたんです。凄く嬉しかったですよ。
矢島 良いですよね。「可愛いなぁ、指宿くんは」なんて普通の小父さんが言ったら「えぇ…」と思うんですけど、凄く爽やかなんですよ。
原監督 今回ここで上映するっていうんで、俺も久々に観直したんですよ。自画自賛になっちゃうんだけど、「ピンチの時に飲む牛乳は、これまた美味い!」って台詞は我ながら良く思い付けたなと思いますね(場内爆笑)。
矢島 家弓さんも凄く格好良い、素敵な俳優さんなので、私なんかが言うのも畏れ多いんですけど、何度かご一緒できて本当に有り難かったと思います。
原監督 あ、丹波さんの話をもう一つ思い出した。
矢島 なんでまた丹波さんに話を戻すんですか(場内笑)?
原監督 笑うシーンが結構あるんだけど、傍にマネージャーさんがいて「先生、もういいですよ」って言わないと、丹波さんってずっと笑い続けるんだよね。次のシーンまで笑い続けてることもあって、丹波さん、マネージャーさんに「おい、早く止めんか!(モノマネ)」って(場内笑)。
矢島 ちょっと天然が入ってるけど実は凄い人だっていう意味で、松岡修造さんも似てます。松岡さんもマネージャーさんが止めないと、ガンガンバリバリやり続ける方でした。
Q. それは、ファブリーズのCMの時ですか?
矢島 いえ、ファブリーズの時ではないです……私は、歌が下手なので(笑)。
原監督 いやいや、そんなことはないですよ。歌は、皆上手い!上手いんだけど……かあちゃん(ならはしみき)はイマイチかな(笑)?
矢島 かあちゃんは、勢いが気持ち良いですよ!若い頃には皆で良くカラオケに行ったんですけど、かあちゃんの『学園天国』は凄くキンキンするんですけど、発声の仕方が気持ち良いんです。「この人、本当に唄いたくて、バーッと行ってるんだな」って(笑)。
その後、プレゼント争奪・大じゃんけん大会では、座席を埋め尽くした観客が想いを込めた拳を高く振り上げた。
MC. 最後に、一言ずつお願いします。
矢島 今日は急にお邪魔したにも拘わらず、温かく迎えてくださり、本当に皆さんありがとうございました。原監督は朝から飲んじゃったりするような方ですが、土日だけだということですので(場内笑)。こんな風なメリハリのある監督ですが、凄い人なのは確かですので!!是非これからも……よろチクビ~~(場内笑・拍手)!
原監督 ……早く、春日部に帰れ(場内爆笑)!
矢島 分かりましたよ……言われるまでもなく、これから新幹線で帰るわさ(笑)!
原監督 また来年も……
矢島 来年?来年は、出所した……
MC. “出所”(場内笑)!?
矢島 (笑)……“出所”した、娑婆に出てきた藤原啓治氏では!?
原監督 “入院”じゃなかったの(笑)?いいじゃん、親子で一緒にね!
矢島 えぇ(、私も)!?……じゃあ、かあちゃん(ならはしみき)も一緒に、とか(笑)!
MC. こおろぎさとみさんは?
矢島 ……乳児はどうかな~(場内笑)?ま、ご期待ください!
原監督 ありがとうございました。
その後、開催されたサイン会に並ぶ観客は長蛇の列と化し、お二人は時間いっぱいギリギリまでパンフレットやDVD、色紙などにマーカーを走らせた。原恵一監督も矢島晶子さんも、緊張で固くなりながらも懸命に想いを届けんとするファン一人ひとりと丁寧に会話を交わされ、ここでもまた少なからぬ感涙が劇場を覆った。
名古屋駅に急ぐ矢島さんの背中には、シネマスコーレ前に熱気と共に残ったファン達の大きな大きな拍手が届けられた。いつまでも鳴りやまない拍手の音に、矢島さんは何度も笑顔で振り返った。
原恵一監督を囲む懇親会は希望者で一杯となり、夜更けまで続いた。こうして、笑いと感動のうちに【モーレツ!原恵一映画祭 in 名古屋】はお開きとなった。
次回開催の予言めいた発言も思わず飛び出した【第3回 モーレツ!原恵一映画祭 in 名古屋】、その“次回予告”が叶ったかどうかの真偽は、【第4回 モーレツ!原恵一映画祭 in 名古屋】に……
「くれば~?」
取材:高橋アツシ