三浦友和は史上最悪の父親??『葛城事件』初日舞台挨拶
俺が一体、何をした。
『その夜の侍』で痛烈なインパクトと共に監督デビューした赤堀雅秋監督、待望の二作目『葛城事件』。人間の愚かさを描き、無差別殺傷事件の背景にある闇を炙り出す、壮絶な家族の物語。あなたの心に鋭く突き刺さる濃密な人間ドラマを描いた本作の公開を記念して、赤堀雅秋監督、三浦友和、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈が登場し、初日舞台挨拶が行われました。(2016年6月18日 新宿バルト9)
MC:初日を迎えたお気持ちを一言ずつお願い致します。
赤堀監督:もうちょっと、どんよりしているのかなと思ったんですけど、思いのほか温かい雰囲気でほっとしています。みていただいて、色々な感情が渦巻いていると思います。巷では絶望しかない、救いようがない映画だといわれてますが、僕の中では、希望の映画だと思っています!よろしくお願いします。
三浦:こんにちは。三浦友和です。あの、葛城清 (役名) が大変失礼致しました。こういう映画の上映後に出てくるのは、どうしていいかわからないんです。みなさんが胸の中にもやもや抱えている時に出てくる訳ですから。この映画、「面白かった!」という意味の幅が広い映画だと思うんですね。えっと新聞の… (ここで胸もとから新聞を出し) ちょっと切り抜いて来たんですけどね!隣が『クリーピー』なんですけど (笑)。『葛城事件』っていう、お金もないのにこんな宣伝をしていましてね。ここのところに試写会の感想よりっていうのがありまして、「邦画史上、類を見ない家庭崩壊映画の誕生!」「二度とみたくない名作!」「血の気が引くくらいのエグさ!」「みないと一番後悔する映画」というのが (笑)。
赤堀監督:それは今朝の新聞ですか??
三浦:昨日の夕刊です。こういうのを持ってきて、ちょっと時間を潰そうかと (笑)。とにかく、こういう映画を広めていただくためには、みなさんのお力をぜひ!応援よろしくお願いします!
新井:新井浩文です。(客席が)埋まって本当に良かったです!ありがとうございます!この後、集合写真撮るときのパネルがチラッとみえて「大ヒット中」って書いてあるんですけど…。これからですからね!大ヒットになるかどうかは!変な評論家より、ネットとかのみなさんの感想がとても重要になってくるので、別に良く書けとはいいませんが、いいと思った方は感想書いていただいて、また劇場に遊びに来てください!
若葉:若葉竜也です。本当にたくさんの方々にみていただきたい映画だと思っているので、何か心に良い意味でも悪い意味でも傷が残ったら、口コミで広げてください!よろしくお願いします。
田中:田中麗奈です。今日公開の映画、『クリーピー』?…『貞子』。面白そうな映画の中で『葛城事件』を選んで下さって、本当に嬉しいです。獄中結婚という、凄い貴重な体験をさせていただきました。私が演じた星野順子は凄く得体の知れない、どこから来てどこに向かってゆくのか、そういう女性でした。謎が多いからこそ、やりがいがあって、本当に自分自身熱くなれた作品なので、とても思い入れが強いです。舞台挨拶が終わってからは私も、この映画のいちファンとして、映画を広めていっていきたいと思います。
MC:三浦さん、「どうしてもこの役をやってほしい!」と監督からのラブコールを受けてとお伺いしておりますが、この役の魅力はどこだったのでしょうか??
三浦:この人の弱さとか孤独さとか、そういうところが一番魅力がありました。監督が舞台で実際にやられている役ですので、相当やりづらくて、ぶつかるかなと思ったんですけど、そんなこともなくほっとしています。
-監督は撮影現場ではどういうお気持ちで??
赤堀監督:モニターで毎シーン毎カット、隣のスクリプターの人に、「いやー、いいないいな」って素人みたいにいってました。感覚が合うというと本当におこがましい言い方なんですけど、行間の部分だったり、なんとも上手くいえないニュアンスみたいなものを、短時間で通い合わせるのはなかなか至難の業だったりするんです。そういうのところが通じ合っている気がして、大きく「ああしてくれ、こうしてくれ」ということは現場では一切なかったです。
-三浦さんは撮影シーンの中で一番印象に残っているのはどこですか??
三浦:僕は『三年目の浮気』 (を歌うシーン) に命を懸けました。
田中:あのシーン、私も大好きです!
赤堀監督:昨日『A-Studio』をみてびっくりしたんですけど、そのストレスで奥さん (山口百恵さん) と歌ったんですか??
三浦:えぇ、歌ってくれたんで、ちょっと解消になりました (笑)。
-歌っている時はどんなお気持ちでしたか??
三浦:離れたところにモニターがあって、そちらの方では大笑いしてたみたいなんですよ。あれは、もの凄い必至でしたよ!
赤堀監督:今回、客席から笑いが出るとかはなかったですよね??基本的に現場では常に大笑いというか。
三浦:何か色々な場面で、中華料理屋のシーンでもそうでしたけど。
新井:ちなみに舞台版で、赤堀さんがカラオケのシーンをやった時はダダスベリしてましたからね。
赤堀監督:いいんだよ!俺イジリは!(三浦さんに)大爆笑でした!
三浦:(新井さんに)本番でも笑ってたよね??
新井:あの、マーボー豆腐のところですよね??凄い笑ってましたね!可笑しくてしょうがないです!
赤堀監督:スタッフ間では、千葉県柏市って設定なんですけど「柏のゴットファーザー」っていうテーマが僕らの中にあって、丸テーブルで、それこそ『アウトレイジ』の中の三浦さんじゃないですけど、全然ちっちゃいですけどね!ちっちゃいゴットファーザーがあそこで会合しているっていう裏設定があるんです。
三浦:でもあんな人いますよね?? (会場:頷く) ほら、みんな頷く!そうなんですよ、タクシーに乗っていきなり威張り出す人とかね。そういう人と同じになりたくないですね。そういうのが上司にいたりするともっと嫌ですね。はい。
MC:新井さんは舞台の時は、弟の稔役を演じていて、今回は兄の保役ですが、お話を聞いたときはどんな風に思われたんですか??
新井:元々、今回の映画をやる時に、「出るのは出るのけど、どっちかわからないから」っていわれてて、友和さんが決まるまで誰も動かなかったです。それはバランスがあって。全部遅くなったのは、赤堀さんの脚本が遅くなったからゴテゴテになったんですけど (笑)。
赤堀監督:どうもすみませんでした。。
新井:その時に、万が一オーディションで (弟の稔役が)決まらなかったらやるって。それはそれでいいし、いるんだったら兄貴やるって。
-今度はお兄さん役を演じてみて『葛城事件』の新たな発見はありましたか??
新井:別モンですからね。舞台は最初で最後って赤堀さんとやらせていただいて、舞台の初日に赤堀さんが「今日から祭りの始まりだぜっ!」って。舞台って初日は祭りなんだって (笑)。
赤堀監督:自分が一番ビビってたので、そういう風に鼓舞してたんです。
新井:舞台版みた方いらっしゃいます??結構いる!別ものですよね??だから、特にどうってことなかったです。
赤堀監督:どうってことないって、何かトゲがある。。
新井:ちゃうちゃうちゃう!どっちでもいいですよって。赤堀さんとやることに意義があるから!
赤堀監督:そうですか。すみません。
-新井さんからみて、赤堀監督はどんな方ですか??
新井:赤堀さん、俳優もやってるんですよ!俳優としては正直ウチの方が上です!
会場:爆笑
新井:監督としては凄い好きですよ!脚本も才能あるし、演出もすごい好きだし、画のカット割りも好きだし、俳優としてはもの凄い小芝居するんですよ!なのに演出だと小芝居するの大っ嫌いなんですよ。
赤堀監督:大っ嫌いです。絶対やらせてないです。
新井:だけど、自分が俳優だとやっちゃうんですよね。
赤堀監督:怖いんです。やめます!
新井:俳優(笑)??そういう可愛らしい部分がとってもある、人間的な人です。
MC:若葉さん、監督からも死闘だったと聞いているんですか、現場はどうでしたか??
若葉:本当に毎カット、凄く大変で、撮影中のことはあまり覚えていない感じですね。
新井:え?覚えてないの??あのね、初日、ガッチガチだったよ!ガリガリ君くらいガチガチだったよ!
若葉:そうですか。新井さんに「緊張し過ぎなんじゃないの?」っていわれて、初日の数時間で凄く落ち込みました。
-三浦さんは若葉さんとご一緒したことあると思いますが、今回は如何でしたか??
三浦:十代の時に息子役で出ていて、その時は清く正しい子だったんだよね??
若葉:そうです!凄く平和な家庭の。
三浦:「目玉焼きのキミはちょっと柔らかくしてっていったじゃないかー。」くらいの (笑)。
若葉:そんな感じでした (笑)。
三浦:それが数年経って、こんなになっちゃった。だから今回、脚本読みで会った時、ちょっと心配だったんですけど、その時の雰囲気が完全に稔だったので、数年で随分変わるものだなぁって本当に思いました。出来上がりをみればもっとね!不気味だったでしょ??コイツ。。
若葉:すみません。
-監督も、光るものをオーディションでみつけられたんですよね??
赤堀監督:そうですね。断トツで良かったですよ!きっとこの役をやりたいっていう想いと、それと同じくらいの緊張と、何か色々なものが入り混じっていて。田中さんとのシーンをオーディションでやったんですけど、そういうエネルギーが入り混じっていて、奇跡的な本当にいい芝居でしたね。
MC:田中さん、めちゃめちゃ難しい役でしたね。
田中:そうですね。「新興宗教に入っていて遂行しているような不幸そうな女性」って監督が仰られたので、そういう方がインタビューを受けている映像をみたりして、「あっ、こういう目をしているんだ」とか、「凄く生き生きと喋っているんだけど、何か生命力を感じれないな」って自分の想像を膨らましていきました。感情の動き方っていうのが、今まで演じた他の役とは違いましたね。ひとつ、やっと感情的になって過去の恋愛の話をするシーンがあるんですけど、最初に脚本を読んだ時、あれが一番温度が伝わってきたので、イメージが沸いたんです。でも実際にやってみると、感情を押し殺すことに身体が慣れてしまっていて、入っていく状態になるエンジンが凄く遅くて、難しくなってしまいました。普段とは逆の場所から、自分が彼女に近づいていったり、彼女と同化していった気がしました。凄い貴重な体験でしたね。
-監督は田中さんの演技は如何でしたか??
赤堀監督:お世辞でもなんでもなく、素晴らしいなと思いました。田中麗奈さんで良かったなという風に、モニターをみながらつくづく感動していたのを覚えてます。難しくない役はなにひとつないんですけども、感情移入しやすいから、それがやり易い役かというと、そういうことでもないと僕は思うし、今仰っていた、いつもとは違うベクトルというか、逆から入っていくというのは、面白なと思ってちょっと感心しました。女優さんは、面白いですね。
MC:最後に三浦さん、多くの方にみていただけるようメッセージをお願いします!
三浦:先週『64』の舞台挨拶をしました。
会場:拍手喝采
三浦:で、この拍手が複雑なんですが、東宝で全国封切り323館です。この映画は全国13館です。310館の差があるんですね。映画として同じようなスクリーンにかかって、みなさんにみていただけて、そして同じ土俵に上がって、内容としてどちらをっていう単純なところにいくと思うんですよね。僕は『64』に出てますし、もちろん『64』も好きですし、この映画に対しても愛情は、もちろん大きくあるわけですね。ですから、こういうミニシアター系といわれる映画を、みなさんのお力でぜひ!これからもこの映画を発展させていただきたいという風に思います!お力をお貸しいただければと思います。よろしくお願いします。
取材:佐藤ありす
【ストーリー】
親が始めた金物屋を引き継いだ葛城清 (三浦友和) は、美しい妻との間に2人の息子も生まれ、念願のマイホームを建てた。思い描いた理想の家庭を作れたはずだった。しかし、清の思いの強さは、気づかぬうちに家族を抑圧的に支配するようになる。長男・保 (新井浩文) は、幼い頃から従順でよくできた子供だったが、対人関係に悩み、会社からのリストラを誰にも言い出せずにいた。堪え性がなく、アルバイトも長続きしない次男・稔 (若葉竜也) は、ことあるごとに清にそれを責められ、理不尽な思いを募らせている。清に言動を抑圧され、思考停止のまま過ごしていた妻・伸子 (南果歩) は、ある日、清への不満が爆発してしまい、稔を連れて家出する。そして、迎えた家族の修羅場…。ここから葛城家は一気に崩壊へと向かう―。
『葛城事件』 PG12
監督・脚本:赤堀雅秋
出演:三浦友和 南果歩 新井浩文 若葉竜也/田中麗奈
配給・宣伝:ファントム・フィルム
© 2016「葛城事件」製作委員会
新宿バルト9ほか全国公開中!
http://katsuragi-jiken.com