実はロマンチスト!『太陽』入江悠監督、クローズアップインタビュー!


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劇団イキウメの人気舞台を映像化した、話題作『太陽』。本作の監督を務めた入江悠監督は、いまや日本映画界に欠かせない存在となり、さらなる活躍が期待されています。今回、実はロマンチストという意外な一面も判明しました。厳しさの中にも温もりのある、入江監督の魅力をクローズアップしたインタビューです。

Q. 若手実力派の神木隆之介さんを「鉄彦」役に抜擢された経緯を教えてください。
入江監督: 脚本を書いている時に、「鉄彦という役は神木君がいいんじゃないか」とプロデューサーから言われて。名前を聞いた時に、僕もお願いできるなら是非ということでオファーしました。

Q. 実際に神木さんの演技を見て、どのように感じられましたか?
入江監督: すごく勘がいいというか、頭がいいというか、身体能力も高いですね。今まで色々な方を見てきましたが、この若さでこんなに反応が早い方は初めてでした。こちらの要望に対する反応が的確なんですよね。長年、俳優をやられていた経験や素質もあると思うのですが、すごくやりやすかったです。taiyou_iriekantoku2

Q. 神木さんが発狂するシーンが印象に残っています。今までのイメージをいい意味で覆したと感じたのですが、要望などは出されましたか?
入江監督: 最初にこの映画が描こうとする世界の設定について説明した以外には、細かい要望は出してないですね。脚本に書いてあることをどう受け取って、俳優・神木隆之介として演じてくれるかを見ていただけだと思いますね。この映画の持つリアリティをどうつかんでくれるか、については僕は全幅の信頼を寄せていました。

Q. 『愛の渦』で迫真の演技を見せた門脇麦さん、『脳内ポイズンベリー』などで人気急上昇中の古川雄輝さん、魅力的なおふたりがご出演されていますが、現場での印象は?
入江監督: 門脇さんは、年齢の割にすごく落ち着いていました。最初は寡黙なのかなと思っていましたが、ちょっと打ち解けると大人っぽくもありつつ、明るい方でしたね。
古川君は前から知っていて、一緒に仕事をするタイミングが早く来ないかなと思っていたんですが、実際に今回ご一緒してみても・・・全然わからないですね。見た目のクールさもあるのかもしれませんが、宇宙人みたいで(笑)あまり冗談も言わないし、無駄なことも言わないクールな方です。

Q. 神木さんと古川さんの友情要素がとても響いたのですが、強調したかった部分ですか?
入江監督: 僕が男兄弟で男子高校出身なので、男同士の熱い友情というか、歩み寄って行くという姿が好きで。BL的な事ではないんですけど(笑)立場や環境などが違う人が仲良くなってくというのが好きなんです。

Q. 生きる事の意味を問う物語ですが、生きる上で大事にしている言葉はありますか?
入江監督: 小学校の担任の先生が、「中学校に行ったら面白くなる、高校行ったらもっと面白くなる、大学や社会人になっていくと、人生どんどん面白くなる」って卒業式の時に言っていて。厳しい先生だったので、それがグッときて。大人になっていくって楽しいことなのかもしれないと思いました。今思えば、半分本当で半分嘘だと思うんですけど(笑)ずっと覚えていることですね。

Q. 劇団イキウメの舞台を実写化する上で、舞台と映画という異なる表現方法で苦労した点ありますか?
入江監督: 演劇は美術や装飾が抽象的なことが多いですけど、映像の場合は全てを具体的に表現しなくてはならなので、1つずつ積み上げていくのが大変でした。

記者: 入江監督の魅力をクローズアップさせていただきたいと思い、「劇団 野良犬弾」の旗揚げメンバーである、役者・和木亜央さんに同席していただきました。実は、私の小・中学校からの友人でして、このチャンスを待っておりました。taiyou_iriekantoku3

入江監督: ビックリしましたよ!嬉しいです。

Q. 入江監督と和木さんは「劇団 野良犬弾」の旗揚げメンバーとのことですが、入江監督の第一印象を正直に教えてください。
和木: 8年前に、顔合わせの時にはじめて会いました。第一印象は・・・怖かったです(笑)僕自身も芝居に対する考えができていなかったので、よく追い込んでもらって、怒ってもらいましたね。ドS感がハンパなかったです(笑)
入江監督: 今はそんなことないですよ(笑)演劇って、映像と違って稽古する時間も長いし、直接やりとりすることが多いしね。

Q.『太陽』を観て、どのようなことを感じましたか。
和木: 入江さんが「劇団 野良犬弾」で書いた作品で、『日本ノ難民、西へ』という作品の世界感に似ているなと思いました。日本沈没的な内容で、貧困や差別、そこに対する憧れなど、あの作品を観た人が『太陽』を観たらこんな感じなのかなと。
入江監督: なるほど。今言われて似ているなと気づいた。確かに、昔からSFとかそういうテーマが自分の中でずっとあったなと。

Q.『ジョーカー・ゲーム』では、監督と役者として関わっていましたが、入江監督は、演技をじっくり指導されるタイプですか?役者さんに任せるタイプですか?
和木: 任せるというか、引き出すタイプだと思います。段取りはつけて、あとは役者に任せるという感じで。「時間を少しください」と言うと、時間を与えてくれるので、考えることを習慣づけさせてくれました。映像では長回しが多いですよね?
入江監督: そうですね、今回は多かったですね。このシーンにはカット割りが要らないという時にやりたくなります。俳優さんのその先の芝居を見たくなる時にやりますね。

Q. インディペンデント業界の革命児という印象がありますが、監督を志したキッカケと、監督を志す方へのアドバイスはありますか?
入江監督: 高校生の時に、漠然と映画の仕事に就きたいと思い「映画監督」という役割を知りました。俳優のように表に出るのは苦手なので(笑)専門学校などで若い方に教えることが増えてきたんですけど、映画をどれだけ観ているかって大事ですね。20代の頃にもっと観ておけば良かったと思います。

Q. 好きな映画監督はいらっしゃいますか?
入江監督: 沢山います。日本の監督さんですと、溝口健二監督は尊敬していますね。長回しも溝口監督の作品を観ると、いまだにすごいと思います。

Q. ズバリ、映画監督・入江悠さんとは、どのような方ですか?
和木: バックグラウンドを大事にされる方なので、芝居をする上でも作り込んでこない人をすぐに見抜くし、作りこんでダメでも、ちゃんと拾ってくれます。今でも覚えているのは「俺が土下座してでも、使いたくなる役者になれ」と言ってもらったことを大事にしています。僕にとって入江さんは、役者としての心構えの作り方のキッカケをくださった方ですね。taiyou_iriekantoku4

入江監督: 嬉しいですね、言葉を覚えていてくれて。辞めていく人も多い中で、ずっとやり続けていてくれるのは嬉しいです。同じ役者さんと何回もやらないというか、ベタベタするのが好きじゃなくて。次にチャンスがあるかどうかわからないという状態が好きなんですよね。
僕が顔を思い出した時に、準備が出来ているという役者さんは一緒にやる運命にあると思うんですよ。『太陽』も初めての方が多いんですけど、僕がその方の作品を観ていて、繋がったというのは運命だと。普段、どんな準備をして待っているかってすごく大きいと思います。

和木: 淡々とされていますけど、実は結構ロマンチストですよね。
入江監督: (笑)一緒に作品に関わった方には、そう言われることが多いですね。

Q.「シネマから、はじめよう」でシネマカラーズなのですが、入江監督にとって、映画とはどのような存在ですか?
入江監督: 映画とはイコールで繋がっているという感じですね。それ(映画)を取られたら死ぬというつもりでやっています。自主映画からやっているので、人からオファーがこなくなったら自分で脚本書いて、俳優さんを集めてゼロからやればいいと思っているので。劇団を作った時もそんな感じでした。好きな事だったら、勉強とかも苦にならないですし。映画は僕にとってそういう存在ですね。

Q. 今後、挑戦したいことついて教えてください。
入江監督: 今回の『太陽』もそうですけど、SFをやりたいというのはずっとあります。世代的に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ターミネーター』で育っているので、あのようなSFをいつか1本は撮りたいです。探偵モノ、推理モノもやってみたいジャンルですね。夢がありますしね。ただ、恋愛モノだけは全く興味がなくて。
記者:そうおっしゃると、観たいと思ってしまいます。
入江監督: 絶対やらないですね(笑)撮ったらそれを最後に引退するかも(笑)taiyou_iriekantoku5

Q.ハリウッドに挑戦したいというお気持ちはありますか?
入江監督: チャンスがあればしたいですね。

Q. これから観る方々に向けて、『太陽』に込めた想いをお聞かせください。
入江監督: 僕が昔から考えていた問題が、『太陽』の原作に込められていて。この先に考えなければいけない問題が詰まっています。色んな問題が内包されている映画って、日本では少なくなっている気がするんです。本作は、緊張を強いるというか、お客さんに突きつけるような映画なので、ぜひ映画館で観てほしいです。

取材・スチール撮影 南野こずえ

『太陽』
出演:神木隆之介、門脇麦、古川雄輝、綾田俊樹、水田航生、森口瑤子、高橋和也、村上淳、中村優子、鶴見辰吾、古舘寛治  監督:入江悠/脚本:入江悠、前川知大/原作:前川知大 戯曲「太陽」
配給:KADOKAWA/宣伝:ライトフィルム、アンプラグド ©2015「太陽」製作委員会
2016年4月23日 角川シネマ新宿ほか 全国ロードショー
公式サイト:eiga-taiyo.jp

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