脳のない千の頭を持つ怪物『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』Q&Aセッション


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『第28回東京国際映画祭』コンペティション部門にノミネートされた『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』のQ&Aセッションが行われ、ロドリゴ・プラ監督、プロデューサーのサンディーノ・サラヴィア・ヴィナイが登壇した。(2015年10月28日 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)

在宅介護していた夫の容体が急変する。慌てた妻は主治医に連絡を取ろうと必死になるが、事態は思わぬ方向に転がっていく・・・。平凡な主婦が絶望的な行動に走る様を、抜群のテクニックで描くノンストップ・サスペンスである。

2012年のベルリン映画祭で評価された前作『The Delay』において、働きながらの子育てが精一杯で病身の父の世話が重荷になっていくシングル・マザーの苦境を描いたプラ監督。本作でも寝たきりの夫を救うべく絶望的な行動に走る女性の姿を描き、いずれも社会の弱者の立場から現代家族のあり方を問う内容。今回はよりサスペンス色を強め、アート・エンタメ映画としても通用する作品に進化。スピーディーな演出の上手さに加え、事件に関わる細かい登場人物を丁寧に紹介した上で緊張感を維持し、それを75分という長さにまとめる技術には目を見張るものがあり、ストーリーテリングの新しい形をも提示する作品である。
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Q.タイトルの意味を教えて下さい。
A.原作は妻が書いた小説。原作タイトルは「Monster with a Thousand Heads with out Brain」=「脳のない千の頭を持つ怪物」です。
この意味というのは、劇中でも登場する大企業特有の倫理的な責任を誰も取ろうとしないという体質を表しているタイトルです。多くの人がいる大企業でもそこには深い考えや合理的な考えなどは全く無いという意味です。

Q.軸のストーリーはありながらも視点を変えて撮影しているシーンが多くあるが、どういう意図か?
A.原作から多くの視点で描かれるストーリーだったが、映像化するにあたりそこに磨きをかけた。ある一つの視点からだけで描くと、製作側の意見の押し付けのようにもなってしまうということもあり、劇中の様に事件に関わった様々な人々が組み合わさっている場合は、主人公とは反対の感情を見せることによりバランスをとった作品にしている。

Q.劇中に音楽が全然ない理由と、所々意図的なピンぼけがあったが、その意味は?
A.音楽は観客の感情を誘導してしまう。このシーンではこう感じなきゃいけないみたいなのを無くしたかった。ピンぼけの理由はこの作品全体がある事件の証言という流れになっているので、シーンはあくまでも当事者たちの記憶ということもありすべてが鮮明というよりも所々ボケている撮り方をしている。

取材・ユウイチロウ

『第28回東京国際映画祭』 会期 2015年10月22日~10月31日
会場 六本木ヒルズ、新宿バルト9、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿 他

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