大切な“誰か”が息づく上毛野 『ひとまずすすめ』鑑賞記
大切な“誰か”が息づく上毛野 ――『ひとまずすすめ』鑑賞記――
2015年6月20日(土)、名古屋市中村区椿町の横丁には、大勢の映画ファンが集っていた。
【第8回 田辺・弁慶映画祭】史上初の四冠(グランプリ・観客賞・女優賞・男優賞)受賞、【映文連アワード2014】・【長岡インディーズムービーフェスティバル】・【横濱HAPPY MUSIC映画祭】でのグランプリ獲得と言う話題作『ひとまずすすめ』(2014年/30分)がシネマスコーレ(名古屋市 中村区)で初日を迎え、柴田啓佑監督、斉藤夏美、玉川佐知、藤代太一と4名の大所帯が舞台挨拶に立ったのだ。(画像左より、藤代太一、柴田啓佑監督、斉藤夏美、玉川佐知)
今回の上映は、柴田監督が初めてメガホンを握った『ヤギ、おまえのせいだ』(2012年/38分/出演:木下あかり・渋川清彦・渡辺行毅)も併映される。
『ひとまずすすめ』Story:
人生の区切りの書類が提出される市民課戸籍係のカウンター。慌ただしい中、マイペースに働く花村美幸。三十路も目前、アラサー独身、彼氏無し。父・一雄との二人暮らし。美幸は淡々とした生活が続いていくと思っていた。
しかし、美幸は、突然直面する問題に翻弄され、「いまのままじゃいけない。でもどうしたらいいかもわからない」と悩むのであった……。
柴田「知らない土地に映画が届くのは、良いなと言う思いと、初めてのことなので僕としては不安もあります。初めてと言えば……基本的に僕らは先週までテアトル新宿(新宿区 新宿)で舞台挨拶をやってたんですけど、上映前に挨拶するのは初めてなんです。上映後じゃないんで、何を喋ったらいいのかドキドキしてるんですけど(笑)」
後から聞けば、柴田監督による司会進行も初めてだったそうだ。この日の舞台挨拶は、『ひとまずすすめ』チームにとって、初めて尽くしだったのだ。
藤代「観る人を選ぶようなどぎつい映画じゃなくて、「こう言う人って居るよな」って観てもらえる作品だと思います」
柴田「どう言う人に観てもらいたいですか?」
玉川「“普通の人”に観てほしいですね(笑)」
藤代「大体の人が“普通”だと思うよ(笑)」
斉藤「主人公の美幸ちゃんって色々我慢を抱えてると思って演じたんですけど……日常でモヤモヤしてたり、口に出せないけど悩みがある、そう言う方に少し気持ちが楽に……フワッとなってもらえたらいいなって思ってます」
藤代「リアルな場面がいっぱい描かれてると思うんで、そう言う場面を拾ってもらって、帰り道に思い出してもらえたら嬉しいです」
玉川「私はこの映画のおかげで色んな土地……和歌山や名古屋にも来れましたし、色々前に進めました。皆さんも楽しんでいってくれたら嬉しいと思ってます」
斉藤「実は私。30才なんですけど……結構、崖っぷちの状態で、この美幸にそんな自分を投入して演じたので、そう言った所も楽しんでいただけたらと思います」
柴田「テーマを押しつけるよりも、短い30分なんですが、ちょっとでも誰かのことを思いだしたり、家族のことが浮かんだらいいと思って作りました。是非楽しんでください」
悩んでいる美幸(斉藤夏美)に、香里(玉川佐知)が背中を押し、亮太(木村知貴)が、俊二(藤代太一)が手を引こうとする。美幸は、“ひとまず”でも“すすめ”るのだろうか――どうか御自身の眼で確かめて、大切な“誰か”を思い浮かべてほしい。
そして……『ひとまずすすめ』には、『ひとまずすすんだ、そのあとに』なる後日譚が存在すると言う。舞台挨拶でも柴田監督から「上映する機会があれば、どうか宜しくお願いします」と言及されたスピンオフ作品だが、聞けば柴田監督はその“機会”をシネマスコーレの上映期間内(~6/26(金))に画策しているらしい。
果たして、美幸たちの“すすんだ”様子を観ることが出来るのか……『ひとまずすすめ』及びシネマスコーレ公式サイトを、是非チェックして頂きたい。
取材 高橋アツシ
『ひとまずすすめ』
斉藤夏美 山田雅人 小林優斗 矢崎初音 木下あかり 木村知貴 玉川佐知 藤代太一 赤間麻里子 池浪玄八
監督:柴田啓佑 製作・企画・宣伝・配給:DREAM MARKET ©2014 DREAM MARKET
『ひとまずすすめ』公式サイト
シネマスコーレ公式サイト