ヤリすぎ?連夜の憑依トーク!『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』秘話
ヤリすぎ?連夜の憑依トーク!--『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』秘話--
2014年6月14日、名古屋インディーズ映画の聖地シネマスコーレでは、白石晃士監督最新作『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』が初日を迎えていた。
13日(金)に行われた前夜祭が“神降ろしの儀式”であったことが噂を呼んだ上に、この日は白石監督だけでなく主演の大迫茂生さん(工藤ディレクター役)・久保山智夏さん(市川AD役)も加えたお三方が登壇すると言うので、上映は立ち見を出す満員札止めとなった。
『コワすぎ! 史上最恐の劇場版』は、新たなる和ホラーの金字塔であり、フェイク・ドキュメンタリーの到達点『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズの最新作である。物語もゴア描写も、そのサブタイトルに恥じないほど……いや、予想を凌ぐスケールアップとなっているので、どうかご期待あれ。
『コワすぎ!』シリーズを通して引っ張ってきた最大の謎が遂に解け、全く予想し得ない驚愕の伏線回収が有るので、シリーズを復習された上で鑑賞されるのが吉である。とは言え、作品全体を覆っている禍々しさはこの『史上最恐の劇場版』でピークを迎え、トンデモない展開に度肝を抜かれること間違いないので、機会があるなら是非とも劇場鑑賞してほしい作品である。後追っかけで過去作を観直し、鏤められていた伏線の数々を追体験するのも、また一興であろう。
6月14日22時過ぎ『コワすぎ! 史上最恐の劇場版』上映後のシネマスコーレは、沈黙が支配していた。観客はスクリーンから齎された凄まじい後味を消化し切ることが出来ないどころか、余韻と呼ぶには余りにも鮮烈な後口を呑み込むことにさえ苦心しているようだった。そんな中はじまった舞台挨拶は、映画本編と同じように観客の想像を軽々と凌駕するアフタートークであった。
「では、工藤ディレクター、どうぞお入りください」
司会進行は、おなじみシネマスコーレ・スタッフの坪井篤史さん……なのだが……“大迫さん”ではなく、“工藤ディレクター”と紹介しなかったか、今?
大迫茂生「ああ…市川と、田代も、呼んで」(久保山智夏さん、白石晃士監督登壇)
ちらりと前述した“前夜祭”でのトークは、白石監督の肉体に“映画の暗黒神さま”を降ろした上で行われた“口寄せトーク”であったが……まさか、手法は違うものの同様の“なりきりトーク”が、連夜に亘って繰り広げられるとは……。
白石監督「あ、済みません…カメラマンの田代と言います。どうも」
ああ、白石監督……いや、田代さん、あなたもか……。
工藤ディレクター(大迫茂生)「すげえ(お客さん)入ってるね…ホラ見ろ、ヒットしただろ!」
田代カメラマン(白石監督)「ホントですね!工藤さん、先見の明がありますよね!」
工藤ディレクター「言っただろ、絶対ヒットするからって!お前、嫌々だったけど、やってよかっただろ?」
久保山智夏「まぁ…はい、そうですね…」
……にこやかだった表情が登壇した途端に仏頂面になったのは、立っているのが久保山さんではなく市川ADだからなんですね、納得です。
田代カメラマン「今回、“映画暗黒神さま”のお力を得て、一瞬だけこのスコーレの空間に現れたってことなんですけど」
ネタバレに直結するので自重するが、『コワすぎ! 史上最恐の劇場版』を観た者はこの発言の真意を汲み取ることができる。
田代「まあ大変なことになってる訳ですが…どうですか、工藤さん、市川は?」
工藤「こいつはどんなになっても、態度でかいから!」
市川AD(久保山智夏)「そんなことないですよ」
田代「俺にも冷たい顔すること、よくありますもん」
市川AD「田代さん、セクハラするからじゃないですか!」
田代「触ったりはしないじゃん、俺は…口で言うだけでしょ?」
市川「それもセクハラですよ!」
工藤「ま、こう言う業界なんだからしょうがないんじゃないの?どんな覚悟でやってんだよ!こっちは命懸けでやってんだよ!」
市川「私も命懸けでやりました!」
銀幕の中の人物が、完全に目の前に現存している。余りにも違和感が無いので観客ともども馴染んでしまっているが、この異様な光景こそ“コワすぎ!”である。
工藤「聖地だからね、ここは」
坪井「ありがとうございます」
田代「そうですね。何しろ、世界で初めて『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』FILE-01とFILE-02を公開した映画館ですからね」
坪井「せっかくですのでお聞きしたいんですが…工藤さんは今まで色んなモノと戦ってきましたが、思い出深いのはどれなんですか?」
工藤「全部思い出深いんだけど…まあ俺、結局FILE-02の幽霊にも勝ってないし…FILE-01でも逃がしたし…FILE-03も良い所まで行ったけど取り逃がして…FILE-04は別にアレ通り抜けただけだったし…あんまり俺、いい仕事してない気がするんだよね」
坪井「(大笑)そんなことはないと思いますけどね」
工藤「でも、そう言う意味では…最後の『劇場版』は…う~ん、痛み分け?(会場大笑)」
坪井「市川さんは、如何ですか?」
市川「工藤さんは厳しい人ですけど、良い所を突いてくるので、そう言う意味では尊敬しますけど…」
田代「「イ イ 所 を 突 い て く る 」??」
坪井「…田代さん…いやらしいですねぇ~」
工藤「どこか突いたっけ、俺?」
市川「そう言うことじゃないですッ!!もう…ほら、セクハラッ!パワハラッ!!」
それにしても、なんたる徹底ぶり!“なりきりトーク”でなく、“憑依トーク”とでも呼ぼうか。
坪井「でも、今後どうなって行くんでしょうね…とにかく大変なことになってますけど…?」
工藤「取り敢えず…田代にどうにかしてもらうしかないでしょ!」
市川「そうですね」
田代「はい…僕が、何とかやるしかないかな…とは思ってるんです。実は、昨日から今日にかけて“映画暗黒神さま”が「全ては、お前(田代)に懸かってる」って」
坪井「暗黒神さま以外には、今後どう言う風になるかは想像付かないですもんね」
なんとなんと……『コワすぎ!』シリーズは完結していないことが、高らかに宣言されたのだ。
白石監督と“暗黒神さま”のコンビが、あの凄まじい難局にどう始末を着けるのか……興味は尽きない。
質疑応答も大いに盛り上がった会場は、更にボルテージを上げることになる。
久保山智夏さんのイラストに全員の直筆サインが入った特製色紙10枚(!)を含む20点以上の御土産を賭けた“大ジャンケン大会”が行われたのだ。観客の内の4人に1人以上がプレゼントを手に出来ると言う大変な大盤振る舞いで、場内は一気に殺気立った。固く握り締めた拳を高らかに掲げジャンケンに興じる大の大人たちの瞳の奥には、“運命に逆らえ!”と言わんばかりの燐光が宿っていた。
工藤(大迫)「今日はこんなにたくさん集まってくれて、本当にありがとう。まだまだ続くんで…もっと儲けたいから、俺(会場大笑)。皆さん宜しく、これからも」
市川(久保山)「今のままではつらいので…本当、田代さんお願いします。…セクハラは、ちょっと、いいです(会場笑)。今後も、何卒応援宜しくお願いします」
田代(白石監督)「何とかする責任が私にはあると思っています。その為には、この『劇場版』が更にヒットして、DVDも売れて…ドキュメンタリーですから(笑)、活動資金が必要になりますので。今後も皆様のお力添えを是非頂きたいと思っております。何卒『コワすぎ!』にご協力を宜しくお願い致します」
この時点で既に、23時をとうに回っている。舞台挨拶が終わった後も、終電の時間をものともしない熱心なファンは劇場を立ち去ることが無く、三人は疲れた顔も見せずサインに応じた。
久保山「えぇと…どっちの名前でサインしましょうか?」
ようやく憑依が解けた久保山さんに笑顔が戻ると、列を作る観客の顔も一層ほころんだ。
取材 高橋アツシ
『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』公式HP:http://albatros-film.com/movie/kowasugi/
シネマスコーレ公式HP:http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/home.htm