映画館に降臨した“二度目の奇蹟”『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』前夜祭秘記


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映画館に降臨した“二度目の奇蹟”--『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』前夜祭 秘記--

日本には、八百万(やおよろず)の神々があらせられると聞く。津々浦々に大小の神社仏閣が現代社会に根付いているのは言うに及ばず、人を依り代とした“生き神様”“現人神”までもが存在する。驚くべき星霜を経た無機物や特定の行動様式にも尊い“モノ”が憑くことを我々が漠然と認識していることを考えるに、“八百万”と言う数は決して誇張ではないのかも知れない。言うまでもないことであるが、“映画”にも神がいる。

傑作としか称しようの無い作品を作り出す映画監督や、出演作を芸術の域にまで高める映画俳優もまた“神”と讃えられるが、ここで言う“映画の神”はそんな尊敬の対象ではない。銀幕の向こうに人智も時空も超え存在する唯一絶対神は、あらたか過ぎる霊験を持つがゆえ“邪神”とも“鬼神”とも称される畏怖の対象である。極く一部の映画ファンは、こう呼んでいる……“映画の暗黒神さま”と。

『暴力人間』『オカルト』『超・悪人』と代表作は数知れず、フェイク・ドキュメンタリーの巨匠であり、POVの魂の継承者たる映画監督、白石晃士。ホラー好きのみならず映画ファンならその名を知らぬ者は居ない日本インディーズ映画界の至宝であるが、彼が“映画の暗黒神さま”の口寄せをする霊媒体質であることを知る人は少ない。東京では暗黒神さまが降臨しないことも、認知度が低い原因の一つなのかも知れない。白石監督の身体を借りて発言する内容は余りに有り難すぎて、影響が計り知れない為である。

2014年6月13日シネマスコーレ(名古屋市中村区)、白石晃士監督の新たなる代表作『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』公開記念前夜祭として開かれたトークイベントに参加した映画ファンは、我が耳を疑った。白石晃士監督自らが『コワすぎ!』シリーズ全6作の作品解説をすると言う触れ込みであったが、コメントするのは白石監督ではなく、なんと監督に憑依する暗黒神さまだと言うではないか。暗黒神さまは、過去に名古屋で2度・北海道で1度の計3回しか降臨したことがない。ちなみに、もし“神降ろし”が成功したならばシネマスコーレでは2012年2月18日以来2度目の出来事であり、再降臨は史上初の奇蹟である。“13日の金曜日”と言う星辰の導きに感謝しない者はいなかった。kowasugi3

司会進行の坪井篤史さん(シネマスコーレ・スタッフ)が白石晃士監督を壇上へ迎え、イベントがスタートした。白石監督は作法の説明を始めたが、暗黒神さまを召喚せしめる秘儀中の秘儀である式次第をここに記す訳にはいかない事を、どうかご容赦いただきたい。また、前述したが暗黒神さまの発言は余りにも霊験あらたかであらせられるゆえ、影響範囲が極めて限定的な一部の発言のみしかレポート出来ない事を、どうかお許し願いたい。(画像:シネマスコーレスタッフ坪井氏)

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01 口裂け女捕獲作戦』について

暗黒神さま「主人公の工藤(大迫茂生)は、当然のように暴力を揮う……そう言う正当なコミュニケーションを持ち備えたディレクターとして、この工藤は生まれたんだな」
坪井「キャラクターの見せ方が素晴しいですよね。どう言う男か、すぐに分かりますもんね」
暗黒神「我輩の指導があったからな」

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-02 震える幽霊』について
暗黒神「このシリーズは2本撮りなんだ。FILE-01とFILE-02、FILE-03とFILE-04、劇場版・序章と劇場版…って感じでな。人間の体力ではしんどいだろうから、この『震える幽霊』はFILE-01の時よりも力を貸してやった」
坪井「それは、どの辺りなんですか?」
暗黒神「市川(久保山智夏)が工藤に無理矢理呪いのアイテムを取りに行かされる辺りは、相当力を貸したぞ」

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-03 人喰い河童伝説』について
暗黒神「これは、捕獲のシーンでかなり力を貸した。クライマックスが盛り上がるように、色々と教えてやった訳だな。過去ついての台詞が出てきて、これが実は『劇場版』にも繋がる感じになるんだな」

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-04 真相! トイレの花子さん』について
暗黒神「女の子2人にカメラを持たせて実際に撮らせてる場面は、「スタッフが後ろから付いていくからねー」と言いながら、どんどん距離を取っていったんだ。ほとんど2人任せっきりだな。その方がリアリティのあるリアクションが撮れるってことを、ちょっと白石に指導してやったんだ」

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 劇場版・序章 真説・四谷怪談 お岩の呪い』について
暗黒神「FILE-04の中で、ADの馬鹿女・市川がディレクターの工藤を助けたような瞬間をコソッとやっている訳だ。どうも工藤はそのことを恩に感じているんだ…奴は人情のある男だからな。『序章』では市川が危機に陥るので、さて工藤は…そこが観所だな。除霊のシーンで出てくる装置を作ったのは“T”と言う眼鏡サブカル男なんだが、妙に可愛い感じの装置なんだ。「こいつ、これだから女にモテるんだな」と思ったな」

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』について
暗黒神「「ちょっとやってみたらどうだ?」って指導したんだが、本当にやるとは思わなかった…そう言う映画だな」
坪井「とにかく劇場で観てほしいのが、この『劇場版』でして…。皆さん終わった後、まあ色んなことを思うと思います」
暗黒神「ある種の“トンデモ映画”の部類に入ると思うぞ。通常トンデモ映画と言うのは超大作だったりする訳だけど、これは“トンデモ低予算作”だ。その辺は、我輩の指導による所だな」

坪井氏から人間界の時刻を確認すると、暗黒神さまは我々の終電時間を気遣って白石監督の身体を離れた。実(げ)に貴きことであらせられるは、神の思し召しである。白石監督の口から発せられた断末魔かと聞き紛う苦しげな叫喚が劇場を覆い、俯つ伏せになった四肢は痙攣が1分は続いた。永遠とも思える数秒間の沈黙が支配した後やっと起き上がった白石監督は、一人称が“俺”に戻っていた。実に芸が細……否、類い稀なるは、神の御業(みわざ)である。(画像:暗黒神さまが帰った直後の白石監督)kowasugi2

ヴ○チカンが奇蹟認定しやしないかと要らぬ心配をしてしまうほどのミラクル中のミラクルを目の当たりにした迷える子羊の群れは、次の日から封切られる『コワすぎ!史上最恐の劇場版』を必ず観ようと胸に誓い、最終電車にダッシュしたのであった。

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』は、シネマスコーレで6月20日(金)まで。

取材:高橋アツシ

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』公式HP:http://albatros-film.com/movie/kowasugi/
シネマスコーレ公式HP:http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/home.htm

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