犬童監督も絶賛!『かしこい狗は、吠えずに笑う』初日トークショー。
『かしこい狗は、吠えずに笑う』が6月22日に東京・オーディトリウム渋谷で満席の初日を迎えた。
犬童一心監督をゲストに、本作の監督である渡部亮平、主演のmimpi*β(ミンピ)、岡村いずみが登壇し、トークショーが行われた。本作は、第34回ぴあフィルムフェスティバルにて「エンタテインメント賞&「観客賞」のW受賞。福岡インディペンデント映画祭や、第13回TAMA NEW WAVEでもグランプリを受賞し、満を持して東京での公開となる。
ゲストである犬童一心監督は、「90分の映画なんだけど、サスペンスが後半に向けて組み立てられていて。意外と難しいことをしているんだけど、ちゃんと終わりまで成立しているのがすごい力量だなと思った。女の子が校舎を走り回るというありきたりな青春っぽいシーンがあるんですけど、そこでパンツを脱いでいるっていうのを加えるだけで、全く違うシーンにしているというアイデア。ただはしゃぐだけを撮れば満足する人と、満足しない人のラインがある気がしたんです。だから、これはたいしたものだなと。前半は青春っぽいキレイな光のシーンが続くけど、後半になるにつれてそういう絵がなくなっていくという光の設計がよくできていて、それにも感心した。トーク時間が15分しかないから全部しゃべるけどね(会場笑)」と早々に褒めた。
シンガーソングライターであるミンピを主演に抜擢した経緯について渡部は、「ライブハウスで歌っているのをたまたま見かけた。目がすごくキレイな印象だった。それから半年くらい経って映画を撮ることになり、あの子がいいと思ったので声をかけた。」と言い、ミンピも「よく覚えていたなと思いました。シナリオを読んですごいなと思った。」と、出演を決めたという。
現在25歳の渡部監督はシナリオライターとして活動しており、映画作りにおいては素人同然。スタッフもツイッターやミクシィで探して、はじめての人同士で撮ったこと。また、監督が撮りなれていないため、淡々としたことについて「撮影中も、OKなのかダメなのかわからないままで。」と、岡村いずみは不安だったことを明かすなど、続々とエピソードが披露された。
犬童が、「ほどんど演技をしたことがない主演の2人の演技がすごいなと。オレが明日から演技しろって言われているようなもので。なんでそれが成立しているのかっていうと、3ヶ月リハーサルしてたって言うんです。今どき映画を撮るのに3ヶ月リハーサルしている人なんて世界中にいないと思う。」と言及。渡部は、「3ヶ月くらいリハーサルするものだと思ってた。普通だと思ってやってた。」と明かしたことに対して、「それは、ただの無知なんです。(渡部が)東京に来て映画を撮り始めるときに、友達が1人しかいなかったんです。映画仲間がいたら周囲がどうやって撮っていたか見るけど、この映画を支えているのは無知なんです。」と、予想外の発想を評価。さらには「脚本でこの人は食えるなと思った。」と絶賛。終始恐縮する渡部監督が、なんとも微笑ましいトークショーとなった。
映画を作る上での常識を覆した本作。無知だからこそ生まれた無限の可能性を、思う存分活かした力が評価されたのは当然である。キャスト名に依存しない、低予算、すべてはどれだけ引き込めるかが自主映画の最大の魅力であり、ネタバレ厳禁な本作の見どころは言葉では伝えきれない。次回作の予定はないと言っているが、公開された作品を観たお客さんの反応や行動が、若き監督の次に繋がるだろう。
取材・スチール撮影 南野こずえ
『かしこい狗は、吠えずに笑う』
キャスト:mimpi*β、岡村いずみ、もりこ、瀬古あゆみ、ほりかわひろき、中澤功、真田雅隆、筧十蔵、坂本なぎ、仁後亜由美、佐藤幾優、石田剛太(ヨーロッパ企画)脚本/監督:渡部亮平
公式サイト http://www.kashikoi111.web.fc2.com
オーディトリウム渋谷にて2013年6月22日(土)~6月28日(金)21:10 の回に上映!