『戦争と一人の女』舞台挨拶レポート@名古屋シネマスコーレVol.1


観どころは、全部です!!
-『戦争と一人の女』舞台挨拶レポート@シネマスコーレ-

2013年4月27日、『戦争と一人の女』が封切となった。
“戦闘シーンの無い戦争映画”、“昭和官能文藝ロマン”と称される本映画は、脚本家として馴染のある井上淳一さん初長編監督作品である。

井上監督は、愛知県犬山市のお生まれ。しかも若松プロダクションのご出身なので、名古屋地区の上映館シネマスコーレとは浅からぬ縁をお持ちだ。4月28日の舞台挨拶には大勢の映画ファンで座席は満杯となった。チケットを買い求める列の先頭は早朝6時から並んだそうだが……それもそのはず。この日、井上監督だけでなく、主演の永瀬正敏さんも登壇したのだ。

永瀬「出来れば名古屋から火を点けて頂きたいので、みなさんに今日帰ったら「面白かったよ」と…「とても面白かったよ」と…「凄い映画が出来たぞ」と(笑)…宣伝して頂ければと思います。宜しくお願いします」

井上「出身地と言うだけじゃなくて、僕はこの映画館で若松孝二さんと出会って、そのまま(新幹線の)入場券で東京まで付いていったんです。(座席を指差して)3列目のあの辺の席で観てたんですよ…そしたら、若松さんが入ってきて。それで今日こうして永瀬さんに来ていただいて、本当に幸運なんです。そして何より、ありがとうございます、皆さま本日来ていただいて、本当に。この映画は10日間で、松竹京都の撮影所で撮ってですね…最初の3日、永瀬さんと江口(のりこ)さんのシーンを撮って。その後、永瀬さん、4日間まったく絶食して…なんと4日で7キロと言う無謀な減量を…。どうだったの、あれは本当に?」

永瀬「いや、まぁ…ヒロポン中毒にはなれないもんで(笑)…気持ちだけでも近付きたいなと思って、何かこう…ゼロにしないと駄目かなと思って。だけど、本当に迷惑かけたんですよ。10日しかないのに、4日空けていただくと言う…本当、スタッフの皆さんには感謝しております」

井上「4日間京都のホテルで飲まず食わずで、ただひたすら京都の街を歩かれたんですよね、なんか?」

永瀬「そうです。歩いてましたよ…限界のとこまで」

井上「セットに永瀬さんが入ってきた時、何かこう…『十戒』のようでしたね。モーゼが歩くように、すーっとみんなが永瀬さんを…(笑) 永瀬さん、「ヒロポン中毒だから涎を垂らしたい」って言ったんですけど…あまりにも、カラカラで」

永瀬「そうなんですよ。水分が足りなくて、涎が垂れなかったんですよ…すいません(笑)」

永瀬さんがここまで役に没頭する『戦争と一人の女』は、公開前から注目されている作品である。
実は、日本の戦争責任について言及している。それも、相当に攻めた表現で。

永瀬「脚本読ませてもらって「なにッ!!?」と思ったんですよ。「こんな映画、つくっちゃうんだ!」って。こう言う映画をつくりたいって話は聞くんですけど、プロデューサーさんの脳内作品で終わっちゃうんですよ…世に出せないみたいで。でも、『戦争と一人の女』は、監督も自腹切ってやるんだ!って。…だから、何回も観に来てもらって、パンフレットもいっぱい買ってください(笑)」

永瀬さんの話に出た『戦争 と一人の女』公式プログラムは、座談会あり評論ありコラムあり…極めつけは、シナリオ全編を収めるのみならず、原作である坂口安吾の短編『戦争と一人の女』『続戦争と一人の女』をも収録している。特に原作『戦争と一人の女』は、初出時GHQにより検閲削除された箇所を傍線を付して再現してある稀覯版である。この傍線部にこそ映画版『戦争と一人の女』の骨子があるのが実に興味深いので、是非手にとってほしい。

井上「ご覧になって決して口当たりの良い映画ではないですし、賛否両論あると思いますけど、作品の底辺に流れているものは読み取っていただけたらと思います」

永瀬「本当にありがとうございます。映画と言う のは劇場に来て、ここに座っていただかないと何も始まらないものですから。映画はスルーされることがいちばん危険で…何も始まらず終わってしまうことが多々あるんで、皆さんも今日帰ったら、宣伝していただいて…宣伝と言うのは、全肯定じゃなくてもいいんで…スルーされるのが映画はまったくダメなので…映画は観ていただいて完結すると思うので…皆様、是非力を貸してください。名古屋から火を点けてください」

ひとつだけ言わせていただけるなら、『戦争と一人の女』は反日映画ではない。日本の戦争責任について踏み込んだ表現を内包する作品であるのに、反日映画ではない、断じて。その意味を、是非とも劇場で確かめていただきたい。

2013年4月28日@名古屋シネマスコーレ

取材:高橋アツシ

『戦争と一人の女』
キャスト:江口のりこ 永瀬正敏 村上 淳 柄本 明 監督:井上淳一
(c)戦争と一人の女製作運動体  テアトル新宿他全国順次公開

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