うつしてはいけないFOOTAGE-『フッテージ』


うつしてはいけないFOOTAGE -『フッテージ』レビュー

『フッテージ』……実はこのタイトル、邦題なのだ。
原題は『Sinister』。“不吉”とか、“邪悪”の意である。何故わざわざ配給会社は『フッテージ』と付けて公開するのか、考えを巡らせてみるのも興味深い。

主人公エリソン(イーサン・ホーク)は、デビュー作をベストセラーに持つノンフィクション作家(恐らくは、未解決猟奇事件が専門)。妻子のためにも、近作の不評を撥ね退ける起死回生の“代表作”を書こうと躍起になっている。彼が最新作の題材に選んだのは、過去作に負けず劣らぬ猟奇事件。愛する妻や幼く感受性豊かな兄妹に悪い影響を与えぬよう、作家の調査は秘密裏に行われる。遂に彼は、今回の事件が圧倒的な“邪悪”さを孕んでいる事を知ってしまう。……事件に関する、幾ばくかの“フッテージ”を見付けてしまったばかりに。

FOOTAGE……直訳すれば、“フィート数”。
物語では、撮影済みのフィルムの意味で使われる。日本語で言うなら、“尺”という言葉のニュアンスが近いだろうか。

“この世で最も慈悲深いことは、人間が脳裏にあるものすべてを関連づけられずにいることだろう”とは、コズミック・ホラーの巨人H.P.ラヴクラフトの言葉である。8mmフィルムを編集する時……すなわち、単なる断片的な素材を関連づける時……哀れなる人間の脳髄は、何を識ってしまうのであろう。

前半はむしろミステリーとして進行し、誰もが正しいと思うであろう主人公の行動こそが“Sinister”のスイッチとなる展開も面白い。後半ちゃんと(笑)ホラーとなるのだが、PG12のレイティングに相応しく極端なゴア表現や観る者にトラウマを残しそうなスプラッタ描写はない。
デートムービーにも最適な“ホラーの優等生”であるが、ファミリー連れにはお薦めしない(苦笑)

ライター 高橋アツシ

【ストーリー】
その8mmフィルムは、呪われた血で現像されていた…
ノンフィクション作家のエリソン(イーサン・ホーク)は、新作執筆のため、一家首吊り殺害現場となった家に、家族を連れて引っ越してきた。そして屋根裏で5本の8mmフィルムを発見する。それら“フッテ―ジ”には、その家で起こった首吊り現場に加え、時代も場所も異なる溺殺、焼殺、刺殺など、惨殺現場が写されていた。一体誰が、何のために?事件の謎を追うエリソンの前に、邪悪な〈呪い〉が、遂にその正体を現わす―。

『フッテージ』
キャスト:イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオ 監督:スコット・デリクソン
配給:ハピネット 配給協力:ユナイテッド・シネマ © 2012 Alliance Films (UK) Limited
公式HP:http://www.footage-movie.jp
5月11日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、ユナイテッド・シネマほか全国順次ロードショー

記事が気に入ったらいいね !
最新情報をお届け!

最新情報をTwitter で