TheaterなCafeの流儀-名古屋・シアターカフェ訪問記-
TheaterなCafeの流儀 --シアターカフェ訪問記--
「近くにあったらお客さんとして行きたい場所ですね!」
森田亜紀さんがご自身のブログにこう記す“場所”とは、名古屋市中区大須にある喫茶店『Theater Cafe(シアターカフェ)』のことである。 主演作『へんげ』が世界中の映画祭を席巻し、監督作『雨の日はしおりちゃん家』公開を間近に控える、そんな森田さんがシアターカフェを訪れたのは3月下旬のこと。2004年の主演作『赤猫』の舞台挨拶に、大工原正樹監督と共に登壇した。
そう、『Theater Cafe』は、その名の通り映画の上映も行う…だけでなく、制作陣が舞台挨拶に来たりする、そんなカフェなのだ。
「短編の特集上映って、滅多にやらないじゃないですか」シアターカフェ代表・江尻真奈美さんは言う。
「以前勤めていたミニシアターで前田弘二監督の特集をやった時、ふと思ったんです…こんなに面白いのに、なかなか観れないのって勿体ないなって。だから、シアターカフェは“映画館でやらない作品をやろう!”そんな場所なんです」
シアターカフェは2013年4月1日で、めでたく開店1周年を迎えた。開店までは勿論のこと、開店してからの1年も、様々なご苦労があったことは想像に難くない。
「2011年1月、『アニメーション・テープス』を一人で切り盛りし、10年間機材を抱えて上映会を行っていた緑子さんに『会場探し、大変でしょ?』と年賀状の返事に書き添えたのが始まりです(笑)(林緑子さん=現シアターカフェ・ディレクタースタッフ)。開店してからも大変です…映画館じゃないので、上映会をおこなっても映画情報の媒体にいつも載せて頂ける訳じゃないですし…何より、作品選びが!」
シアターカフェは、本当に様々な上映会を企画し、色々な作品制作者・出演者がやってくる。
「映画祭には出来るだけ足を運ぶようにしています。気になる作品の監督さんにはお声を掛けて…その出会いが縁で、上映会の作品が決まったりするので。シアターカフェの軸足として、とにかくインディーズ監督を応援したい!…私には創ることができないので、才能がある人・モノを創る人を応援したいんです。これからの人の作品を、そしてビッグネームの過去作を、もっともっと観て頂けるよう頑張ります」
今後とも益々目が離せないシアターカフェ、1周年に相応しい上映企画が待っている。
4/27(土)より開催される
『シアターカフェ1周年記念大解放祭 どえりゃーえーが、もってきてちょー』である。
「全国津々浦々…東京から兵庫まで…多彩な26作品が揃いました!PVあり…アニメーションあり…パロディあり…本当に、様々です!!」上映作すべての監督や製作関係者がシアターカフェを訪れ、舞台挨拶を行う。投票で観客賞が決定し、29日にはパーティも開催される。
http://www.theatercafe.jp/schedule/screening/icalrepeat.detail/2013/04/27/436/-/1.html
また、4/27~29の『大解放祭』を挟み込む日程で4/20より行われる特集上映、『杉野希妃という女性(ひと)』も見逃せない。女優としてだけでなくプロデューサーとしてアジアをボーダーレスに駆け巡る、杉野希妃さん御自身が作品を解説してくださった。
オムニバス「まぶしい一日」より『宝島』(2006年/50分/韓国)
私のデビュー作です。二人の女の子が済州島を旅をしながら自分のアイデンティティと向き合う、キラキラしたロードムービーで、私の初々しい天真爛漫な姿が写っています。
『避けられる事』(2010年/21分/日本・マレーシア)
マレーシアの監督が日本で撮った作品です。友人の死をきっかけに再会した二人の女性が主人公で、モノクロとカラーを駆使した映像詩です。ハイテンションなキャラでデビューされた篠原ともえさんが大人の色気漂う、素晴らしい演技を見せてくださっているのも見どころの一つです。
『マジック&ロス』(2010年/82分/日本・韓国・マレーシア・香港・フランス・アメリカ・中国)
日本でも大ヒットした韓国映画『息もできない』の主演、ヤン・イクチュンとキム・コッビが出演してくれました。香港のムイウォという妖しいリゾート地を舞台にした、何と言うか…“レズビアン・エロティック・ミステリー・バカンス映画”です(笑)7カ国合作という無謀なことにもチャレンジしました。
『大阪のうさぎたち』(2011年/70分/韓国・日本)
3.11の翌日、大阪アジアン映画祭のゲストツアーでカメラを回してる監督に『何を撮ってるんですか?』と聞いたら『映画を撮ってる』と仰るので、『面白そうですね』と答えたら『じゃ、君出ない?』なんてことになって、急遽出演することになり、いつの間にか主演になっていました。人類が滅亡する最後の日に男と女はどう過ごすのかという内容の不思議なSF映画です。
5/4(土)には、杉野さんの登壇も発表されている。間近で(本当に間近で!)アジア映画のミューズに会える機会は滅多に無いので、是非ともお見逃しなく。
http://www.theatercafe.jp/schedule/screening/icalrepeat.detail/2013/04/20/465/-/
最後に、お薦めのメニューを江尻さんに尋ねてみた。
「オーガニック・コーヒーです…カフェですし(笑)スクリーン・ブレンドと呼んでください。スクリーンとは、“ストロングでクリーン”の意味です」
注文を受けてから豆を挽くスクリーン・ブレンドは、上映会の時間にはゆとりをもって頼むといい。
上映中は作品の邪魔になる音を嫌い、ミルは使わないのがTheater Cafeの流儀だ。
Theater Cafe 公式HP http://www.theatercafe.jp/
道に迷ったら…
・地下鉄鶴舞線「大須観音」駅2番出口より
http://theatercafe.blog.fc2.com/blog-entry-43.html
・地下鉄鶴舞線名城線「上前津」駅8番出口より
http://theatercafe.blog.fc2.com/blog-entry-51.html
取材・文:高橋アツシ