生きてる限りは青二才ー『青二才』鑑賞記ー


生きてる限りは青二才ーー『青二才』鑑賞記ーー

「完成して皆さんに届けることが出来るのを、本当に嬉しく思っております」

正木佐和さんの笑顔が弾けた。
2013年3月の最終日、名古屋シネマテークのレイトショウ『青二才』に訪れた観客は、数日前に急遽登壇が決まった主演女優の舞台挨拶に目を輝かせていた。

『青二才』は、“青春H”として制作された作品である。
“青春”と“H”が盛り込まれれば後は監督の自由な発想が許される人気シリーズは着々と快作を産み出し、『青二才』は第26弾にあたる。

「サトウトシキ監督は普段はダンディで笑顔が素敵な方なんですが、撮影の時は凄く厳しい人で、行くのが辛くて辛くて…もう毎日が、悩んで…辛くて…出来なくて…と言う日々でした」

舞台挨拶は上映前だったのだが、観了した今ならばさもありなんと思う。正木さんの演じた紗江子は、繊細さと愚かさが絶えず見え隠れし、だからこそ刹那的な可憐さを漂わせる猫のようなヒロインだ。正木さんは、そんな難役を熱演で美事に生命を吹き込んでいる。

「どうぞ最後までごゆっくり…ちょっと重いと言うか暗いお話ですけれども…まぁ、青二才と言う事で許してください」

この言葉も実に深かったのだ…と、鑑賞後の今ならばこそ思う。
主人公・岡本(演:伊藤猛)は、48歳のフリーターである。青春Hシリーズにして、主人公は齢48なのだ!さてさて…そんな主人公、そして不倫の果て10年もの内縁関係を続けるヒロイン、観客は何処に“青春”を見出すのか?

自分の青さを見出し続ける…生きるとは、そう言うことなのかも知れない。
そして、死ぬまでそれで良いのかも知れない。
そう言われた気がした…懐の深い、サトウ監督に。そして、懐の深い、青春Hシリーズに。

取材・文:高橋アツシ

【ストーリー】
大人達の青春――――48歳の男は、叶わぬ夢を見る。
今作で3作目の脚本・竹浪春花とのコンビで描かれるのは、48歳の男・有三を中心にしたダメな大人達の群像劇。主人公・有三にサトウトシキ監督作品常連の伊藤猛。内縁の妻役に「UNDERWATER LOVEおんなの河童」の正木佐和。そして、吉岡睦雄、川瀬陽太がしっかりと脇を固めている。 有三(伊藤猛)は、家族を捨て不倫相手の紗江子(正木佐和)と暮らしている。ポスティングのバイトをし、暇さえあればひたすらギターを弾いている有三。誰の子ともわからない子を妊娠したまま、街で男に拾われどこかへ行ってしまう紗江子。静かな街で繰り広げられる物語。ダメな大人たちがたどり着くのは――――。
『青二才』(青春Hシリーズ 第26弾)
キャスト: 伊藤猛、正木佐和、櫻井拓也、吉岡睦雄、伊藤清美、川瀬陽太、内藤隆嗣
監督:サトウトシキ 撮影:道川昭如

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