AIがテーマの新しい法廷サスペンス『センターライン』レビュー


AI(人工知能)技術の発達により、自動運転が普及した近未来が舞台。交通部に配属されたばかりの新任検察官である米子天々音は、車同士の正面衝突による死亡事故に関わることに。そして、事故を起こした自動運転AIのMACO2を過失致死罪で起訴するという行動に出た。ところが、心を持つ訳がないAIが「誤動作ではなく、わざと殺した」と供述をしたのである。取り調べを続けるうちに明らかになっていく事実に、米子は……。

本作の監督は下向拓生。情報系の修士課程を修了した後、企業でソフトウェアエンジニアとして製品開発に関わりながら、インディペンデント映画の制作にも取り組んでいる異色の若手監督である。そのようなバックボーンを持つがゆえに生まれたストーリーなのは間違いない。『AIは感情を持ち得るのか』というテーマの根幹にはしっかりとした裏付けが必要だから。

一見、難しそうに思われるテーマだが、ストーリー展開に置き去りにされる心配はない。AIに関する基礎知識がなくても理解できる内容である。核となるのはあくまでも登場人物たちの感情。AIも感情のようなものを持ってはいるのだが、まだ完成されているとはいえず、それゆえにラストまで観客の興味を引っ張っていく。

検察官・米子天々音役の吉見茉莉奈の好演が目立った。MACO2というAIを相手にした演技は簡単なわけがない。でも、ときには小気味いい掛け合いの漫才のよう面白く、ときには切なさを醸し出すなど、AIとの感情のやりとりに成功した。

AI、SF、アクション、法廷サスペンスなどさまざまな要素が盛り込まれた本作。斬新なアイディア満載のエンターテイメント作品である。

文 シン上田

『センターライン』
配給(C) プロダクションMOZU
2019年4月20日より池袋シネマ・ロサにてロードショー

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