求めるのではなく、消し去る『光』レビュー



三浦しをん×大森立嗣監督×瑛太の『まほろ駅前』タッグに井浦新が参戦!
腐った鎖で繋がれた2人の男が、野性と本能をむき出す。

『舟を編む』など数々の原作が映画化されてきた三浦しをん作品の中でも、暴力的な描写で異色を放っているのが本作。同著者の『まほろ駅前』シリーズでタッグを組んだ大森立嗣監督と瑛太コンビに井浦新が加わり、幻想と現実が入り混じる狂気の衝動を描く。

閉鎖的な美浜島で暮らしていた中学生の信之は、幼なじみの美花と付き合っていた。ある出来事により彼女を守るために罪を背負ってしまう。島を離れ、その後も何事もなかったかのように平穏に見える日々を送っていたが、信之を兄のように慕っていた輔との25年振りの再会により、野性と本能をむき出しにしてゆく――。

ARATA名義での初主演作『ワンダフルライフ』にて「第14回高崎映画祭」最優秀新人男優賞を受賞し、『ピンポン』『20世紀少年』などのヒット作に出演してきた井浦新。25年前に彼女を守るために罪を背負い、冷静沈着だが時に鬼のような一面を見せる黒川信之を演じる。

モデルとしてデビューし、『青い春』で映画初出演。『サマータイムマシン・ブルース』『余命1ヶ月の花嫁』をはじめ、『まほろ駅前多田便利軒』では「第33回ヨコハマ映画祭」主演男優賞を受賞している瑛太は、埋められない感情の狭間で生きる野蛮な男・黒川輔を演じ、狂ったように笑っては叫びまくる。映画最前線に立ち続けている井浦新と瑛太は、意外にも今回での共演が初となっている。

信之に対してはまるで従順な子犬のように振る舞い、それ以外には牙をむく輔。いびつな過去にとらわれ、腐った鎖で繋がれたような2人。反動のごとく本能をさらしては橋本マナミが生々しいラブシーンを見せ、長谷川京子も負けじと激しく絡む。

出口のない出口を探し続けるように暴力を暴力で重ね、どん底の闇を容赦なく描き切りすぎて光なんてどこにも見えやしない。しかし光を求めるのではなく、消し去っているのではないだろうか。あえて言うのであれば、満を持して初共演した2人が同じスクリーンでぶつかり合う化学反応こそが、本作の『光』である。

文 南野こずえ

『光』R15+
(C)三浦しをん/集英社・(C)2017『光』製作委員会
2017.11.25(土)、新宿武蔵野館・有楽町スバル座ほか全国ロードショー

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