_11205712016年11月12日、『過激派オペラ』が名古屋シネマテーク(名古屋市 千種区)で封切となった。劇団【毛皮族】の脚本・演出を手掛ける劇作家・江本純子が自身の小説『股間』を原作とした初監督作品で、既にテアトル新宿(新宿区 新宿)、キネカ大森(品川区 南大井)、第七藝術劇場(大阪市 淀川区)での上映で大反響となっているR15+の話題作だ。
早織(重信ナオコ役)、中村有沙(岡高春役)という主演2人が舞台挨拶に立つこともあって、20時を回った名古屋シネマテーク『過激派オペラ』公開初日は満員の映画ファンで大入りとなった。

『過激派オペラ』ストーリー:
アバンギャルドな作風が演劇界で注目されている重信ナオコ(早織)は、“女たらし”の女性演出家。しっかり者の幸(桜井ユキ)、ムードメーカーの岳美(森田涼花)という女優二人と共に、劇団【毛布教】旗揚げ公演のオーディションを行っている。
一目惚れした岡高春(中村有沙)を主演に据えたナオコの元には、元OLの寺山田(佐久間麻由)、ハードボイルドな桃実(後藤ユウミ)、肉体言語を駆使するはつね(石橋穂乃香)、ふみ(今中菜津美/日乃陽菜美)が、新たに集まる。個性的な女優陣で挑んだ新作『過激派オペラ』は大盛況、好評のうちに楽日を迎える。
『過激派オペラ』を大成功させ、強引に春と付き合い始めたナオコは、更なる新作『花魁ゲリラ』に着手する。有名女優・夏村ゆり恵(趣里)の客演も決まり順風満帆の【毛布教】だが、瓦解の兆しは静かに忍び寄ってくるのであった――。

MC. 『過激派オペラ』は、リハーサルが6日間、実際の撮影が2週間くらいだったとか。2015年の夏だったそうですが、役作りで苦労された点は?
_1120577早織 “役作り”という言葉をみなさん聞かれたら、何か作っていくイメージを持たれるかもしれませんが……今回の現場は真逆で、削ぎ落としていく感じ、私の故意的なところは全部剥がされていく感じでした。(江本純子)監督に厳しいことを言われる中で、どんどん自分と役の境目みたいなのが無くなっていったので、それまで私が出演してきた映画での役へのアプローチとは全然違うところに行ったと思います。リハーサルが終わってクランクインしてからの撮影も、本当に演劇の稽古場のような感じで、繰り返す中でも「良し」という判断はほぼ下されないまま毎日を過ごしていたので、分からないことも一杯ありました。作品が出来上がって、映画という形になって、ようやく自分で思い返すことが出来ました。
中村有沙 映画じゃなかったら、完成してないと思います。締め切りが無かったら、ずっと今でもやってたと思います(笑)。
早織 ロケをしていた稽古場も撮影時間の制限があったので、私たちは帰れたんですよね(笑)。
中村 苦労したことと聞かれても、苦労したことというか……もう、必死でした。現場で辛いと思うことも無く、とにかく必死にそこで生きることしか許されなかったので。パンフレットの写真を見て、「私、こんな顔してたんだ」と気付くという(笑)。
早織 監督も“強さ”を大事にされるので、髪型も目がはっきり分かるようにと。
中村 “春”は舞台で主演を張るのが目標で、本当に芝居が好きな役だったので、髪型も舞台で顔がはっきり見えるようにどんどん短くなっていったんです。
早織 段階があったよね(笑)!
中村 「ヘルメットみたいで、違う」と言われて、「そうですね……じゃあ、もっと切ってきます!」って(笑)。どんどん切って、あの形になったんですね。美容院でマネージャーさんに「こんな風になりました」って写真を送るんですけど、顔が笑ってないんですよね。その時から、ずっと役になってる感じでした。
早織 私も、監督に「潔い髪型が良い」と言われました。“ナオ”になりたくて、オーディション受ける時から長かった髪をボブくらいにしてたんですけど、役が決まってから監督からベリーショートが理想だと聞き、私も演るからには監督の意向に応えたかったので。凄く髪が短い時のアン・ハサウェイ(笑)の写真を見本として教えてもらったので、美容師さんにそれを見てもらいました。

MC. 体当たりな演技をされているシーンが沢山ありますが、撮影初日がいきなり濡れ場だったとか?
_1120585中村 初日とクランクアップの最終日しかロケが無い作品で、初日がナオと春が初めて関係を持つシーンだったんです。ナオが私に走って付いてくるシーン……あそこ、肉離れしてるんですけどね、私たち(笑)。
早織 撮影の初日に、とにかくダッシュしたんですね。何回も、何回も。
中村 顔をはっきり撮っていただいてるシーンなので、「その顔じゃない。それじゃない!」みたいな(笑)。監督も「こう!」って、何回も行き来して……
早織 今の、江本監督に似てた(笑)。フレームに良い形で収まるまで何回もやってたら……肉離れに(笑)。
中村 走った上に絡みで色んな動きをしたので、やばいと思って……劇中劇の場面は撮影の後半だったんですけど、結構ボロボロでした。早織さん、鍼に行ってましたもんね(笑)。
早織 病院に行っても、結局湿布を渡されるしかないし、痛いままなので……深夜もやってる鍼灸院に行って、「なんとか痛みをやわらげてください!」って(笑)……
中村 「有沙ちゃん、鍼いいよ!」と言われて……「鍼ッ!?」って(笑)。
早織 そういえばラジカセを蹴るシーンの時も足は痛かったんですが、「蹴り一発で、ラジカセふっ飛んでかないと駄目だからね!」というのが監督の指示で。でもうまくいかず、撮った後に「はい駄目でしたっ」と言われました(笑)。
中村 監督の指示、面白いんです(笑)。

MC. これまでの現場と比べて、『過激派オペラ』は何が違いましたか?
_1120573早織 監督のエネルギーですね。“重信ナオコ”の百倍くらい凄いパワーで……
中村 本当は負けちゃいけないんですけど、監督が一番エネルギッシュでしたね。この映画自体、ほぼドキュメントみたいなところがあって……本当にその“場”を大事にされていました。どこから撮っててどんな流れになってるか私たちも分かってなかったんですけど、監督も仰ってるように“覗き見”をしている雰囲気がある映画ですよね。中々こんな女子の劇団の雰囲気を垣間見ることは出来ないですもんね。

MC. 自分にとって『過激派オペラ』はどんな作品になりましたか?
早織 この作品に出演できて本当に良かったと思います。他の映画と全然違う現場を経験したことによって、私の人生の分岐点だったと思っています。今後どういう風に女優の道を進んでいくか分からないですが、一つ大きな自信になったと思っています。
中村 撮影から一年経って、こういうお話をさせていただける機会があって、幸せですね。江本さんみたいに刺激的で過激な監督のおかげで、自分たちも過激になって……新鮮でもあったし、これから先“怖いもの無し”って感じです(笑)。自分でもよく把握し切れてない場所にいたんですよね。

_1120563全ての劇映画とは、架空の人物たちと架空の時間を共有することに他ならない。そして、虚構を分かち合う物語の登場人物と、謂わば“共犯関係”を結んでこそ、劇場に集う鑑賞者は暗闇の中に一欠片の真実を見出すのだ。
そんな共犯関係をより一層強い結束にしようと、舞台挨拶後のサイン会では遅い時間にも拘らずほとんどの観客が列に並び、主演の二人に思い思いの質問をぶつけていた。

江本純子監督が忍ばせた、“フィクションに見せた現実”と、“リアリティを装った虚構”……暗い映画館の虚空でしか観ることが出来ない“刹那の真実”が、『過激派オペラ』には詰まっている。

取材:高橋アツシ

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