未来に作る映画の全てが詰まっている。園子温 展『ひそひそ星』


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園子温監督が本当に撮りたかった、むきだしの作家性が味わえる珠玉の野心作『ひそひそ星』。映画公開に先駆けて、4月3日(日)より東京・ワタリウム美術館で【園子温 展「ひそひそ星」】が開催中です。オープニングには園子温監督が登場し、近年の活動と切っても切れないアーティスト集団・Chim↑Pomの卯城竜太とエリイが駆け付けました。 (2016年4月2日 ワタリウム美術館)
(こちらもチェック→福島で撮影された園子温監督最新作『ひそひそ星』×東京フィルメックス
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卯城:園さんは映画監督だけどアクティビスト的な活動も多くて、やってきたこと全てを芸術家みたいに捉えられたら面白いなと思って。ジャンルに囚われず、色々なことをやっている園さんを今回展示し直したいなと(昨年夏に高円寺にて同個展を開催)。「ひそひそ星」と一緒に「東京ガガガ」が表裏一体になっているんですよね。
園監督:高円寺では「東京ガガガ」の拠点でもあったので、当時を彷彿させるようなもの凄いワイルドなものにしたかった。逆にハチ公なんかは、ちょっと真面目なものもやっておこうみたいな感じで(笑)。99%くらいはワイルド系のことをやりたかった。僕もずっとアートをやりたいと思っているところに、Chim↑Pomからのお誘いがあって。個展やらないかっていわれた時にもの凄い嬉しくて、かなりの力をいれて頑張りました。
卯城:ワイルド系でいうと、建物全部を覆うように、400メートルくらいの横断幕を公園でずっと描いてて、まぢで腰が上がらなくなってましたよね(笑)。アートは自分でやっていても、捉え直さなきゃいけないような感じになるんです。で、園さんがぴったりだったんですよ!芸術を人生でやっている人、あんまりこういうタイプの人っていないですよね。「東京ガガガ」も「ひそひそ星」と一緒で効果音だし、同じ時期くらいに構想が練られていて、とにかく暴れん坊だったんですよね??
園監督:「東京ガガガ」は映画に疲れ果てて、やめたいなって時に思い付いた、ただの遊びだったんです。最初10人くらいで、渋谷のスクランブル交差点に巨大な横断幕を張り巡らせて、車も人も止めて大騒ぎしよう!っていう本当にダメな感じの(笑)。2年くらいやってだんだん人が集まってきて、2000人くらいになって組織化をされるし、拠点も高円寺の廃墟を使って全員が合宿になっちゃうし、どこにいっちゃうんだろうって思っていたら、警察沙汰になっていって。
卯城:その時、警察に目的を聞かれなかったんですか??
sono_01園監督:それがないから疑われていて。デモ申請をしろっていわれたんで、一度だけしたことがあるんですけど、「目的」に書く事がないので「ポエム」って(笑)。そしたらふざけんなって怒られて。本当に当時は芸術とかではなくて、ハチ公も「東京ガガガ」の連中で、待ち合わせしている人たちをみて、もう一体ハチ公を置いたらどっちに集まるんだろうなって興味だけで作っちゃったんだけど。Chim↑Pomに会ったことで「俺、アートやりたい!」みたいになって。でもやってみて、金も掛かるし、毎日飲み過ぎたし…。
卯城:あれ?アート関係ないですね(笑)。
園監督:余興でやれるもんじゃないなと。これは本気でいかないとマズイなと思って。
卯城:「ひそひそ星」と「東京ガガガ」は本当に対極ですよね。ひそひそしていて、今でいったら監視社会で落ち着いていなきゃいけないみたいなのと凄くリンクしていて、「東京ガガガ」はそういうことをもっと発散して、路上でエネルギーを使いまくる最後のムーブメントだと思っているので、そこが凄く面白いなと。
園監督:『ひそひそ星』って映画の持っているテーマのひとつが、高円寺だったんですよ。社会が全てをひそひそさせようと押さえ込む、その世界観があったので。去年の高円寺でやって今年また個展をやるのが「大変だよ!」と思って凄い怖かった。いえば、自主映画の1本目は和気あいあいで許されるところがあるけど、2本目は厳しい目でみられるから、それはなぁと思ったけど、やっぱりアートの誘惑に負けて。
卯城:園さんと芸術でいうと、大島新監督のドキュメンタリー映画『園子温という生きもの』をこの間みせてもらって。なんなんですかね??あの芸術家ぽい感じ。
エリイ:あの映画はね、本当に奥さんを泣かせ、
園監督:そういう古いタイプの芸術家ね(笑)。
卯城:未だにこんな芸術家いるんだ!みたいな、ピカソみたいな感じの(笑)。僕は映画『ひそひそ星』をみて、信じられないくらいのインスピレーションを受けて、芸術のひとつの極地として色々な角度からみたいというのがありました。
sono_03園監督:映画は25年前に書いた、物凄く初心のシナリオを、25年後、本当に汚れ切って商業にまみれ切った僕が、『ひそひそ星』を作るってことで、全部を振り出しにする決意を込めた本当に重要作です。今回プロダクションを作って、自主映画という形にして。最初からこの作品は完成させたくなくて、編集も甘えてずっとやってて、音入れもまだやる予定で。
エリイ:そうだよね!私、三回みたもん。その時に歴史的な一本になるなと確信した。
園監督:もしも完成した場合、土の中に深く埋めて、何百年か眠らせて、違う人類にみつけてほしいなぁと。これは人類の想いを配達する宇宙船の話なんだけど、『ひそひそ星』自体が思い出っていうか、どこか時間を超えて、他の時代に配達されて、偶然みつけちゃったってなればいいなと思っていて。本当に公開すると思っていなかった。作っただけで満足ですね。
卯城:珍しいなと思うのが、一本の映画を作ることで展覧会や本になったりして、ひとつの作品に色々な人がインスパイアされていって、違う形を作っていくというか、みんなが主体者としてシェアしたくなる力があるんじゃないかと。
園監督:この『ひそひそ星』って映画に、本当に未来に作る映画の全部が詰まっている感じがする。今に適応させるために60%くらいに削ったのだけど、絵コンテを貼る時に読み返したら「まだある!」って感じて。結局社会の中で、声を出すことに抵抗感が生まれてくるってことが台本には散りばめられていて、今回は社会的でないのをやったんだけど、まだまだ「ひそひそ星」は終わらないなと。
卯城:まだ始まってもないのに(笑)。

取材:佐藤ありす

【園子温 展「ひそひそ星」】
ss01main 距離と時間に対するあこがれは、人間にとって心臓のときめきのようなものだろう。
国内外で絶大な支持を集める映画監督・園子温が自身の独立プロダクションを作り、本音で撮り上げた野心作「ひそひそ星」がまもなく公開される。本展は映画では描ききれなかったものをさらにインスタレーションとして、空間作品に発展させた園子温、初の美術館個展。二十五年前、園子温がアパートの一室で描いた555枚にも及ぶ絵コンテ、ストリート・パフォーマンス「東京ガガガ」から生まれた「ハチ公プロジェクト」など新作を発表。

場所:東京都 ワタリウム美術館
会期:2016年4月3日(日)~7月10日(日)※毎週月曜休館
開館時間:11:00~19:00(※毎週水曜は11:00~21:00)
料金:一般 1000円 / 学生(25歳以下)800円 / 小・中学生 500円 / 70歳以上 700円 / 大人ペア券 1600円 / 学生ペア券 1200円

http://www.watarium.co.jp/

*園子温監督最新作『ひそひそ星』5月14日(土)より、新宿シネマカリテ他、全国ロードショー!
http://hisohisoboshi.jp/

*大島新監督ドキュメンタリー映画『園子温という生きもの』と同時公開!
http://sonosion-ikimono.jp/

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