松山ケンイチ、ムロさんは好きな俳優『川っぺりムコリッタ』公開記念舞台挨拶
友達でも家族でもない。でも孤独ではない。同じアパートで暮らす住人の不思議な関係を描いた『川っぺりムコリッタ』の公開記念舞台挨拶が行われ、松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆、荻上直子監督が登壇した。(2022年9月17日 新宿ピカデリー)
川べりの古いアパート“ハイツムコリッタ”に孤独な男・山田(松山ケンイチ)は無一文のような状態で引っ越してきた。図々しいほどに距離感が近い隣人の島田(ムロツヨシ)、夫に先立たれた大家の南(満島ひかり)、墓石の販売員の溝口(吉岡秀隆)。様々な事情を抱えた住人たちにより、山田の心は少しずつほぐされていく・・・。『かもめ食堂』の荻上直子監督がオリジナル脚本で贈る、新しい「つながり」を描いている本作。
主人公の山田を演じた松山は「公開してお客様に届けるまでが僕たちの仕事だと思っているんですけど、撮影がはじまってから随分かかりましたが無事に公開することができてホッとしています」と安堵の表情。大家の南役の満島は「書かれていること以上に見えないものがいっぱい映っているような映画だなと。人生にある不思議がたくさん描かれているところがすごく好きな作品。久々に映画体験をした」と感想を述べた。
ほっこりした空気感の中で愛おしいキャラクターたちが登場する荻上ワールド全開となっている本作だが、松山は「ムロさんはとっても好きな俳優で大切な仕事仲間ですけど、いきなり家に入ってきて『風呂貸してくれ』ってどんな気持ちで言ったんですか?」と2人がはじめて会うシーンについてムロに心情を問うと「自分の中にも少しだけあるさみしさをごまかす孤独の恐怖を見て見ぬふりするために、隣人と関係性を持とうと。とにかくお風呂に入りたかったんだよね(笑)」と説明。
また、「(松山と)2人で一緒にご飯を食べるシーンが多かったんですけど、関係性が生まれてはじめてからは演じていてもワクワクしました。この男といるとなんでご飯が美味しいんだろうって。そういう雰囲気はありましたね」とムロも独特な関係への思いを語り、満島は「撮影中にスコールが多くて。よく虹がでていて荻上さんの作品っぽいなと思った」と話し、さらには舞台となったハイツムコリッタのアパートについて触れ「実際に暮らしている方もいて、家賃が1万円しなかったんですよね」と驚きの事実も明かされた。
また、劇中に住人が集まって美味しそうにすき焼きを囲むシーンがあるが、吉岡は「僕、お肉を食べてなかったんです。肉を取ろうとすると満島さんが器を出してきて。だからネギとしらたきだけで。僕はまったく食べてないです」と撮影裏話も飛び出した。
各自の”ささやかな幸せ”について問われると、ムロは「ジョギング」と話しつつ、「今、台風が近づいていて、日本中のみなさんが『台風過ぎればムコリッタ』って言い合っているじゃないですか。ご自分の身を守りつつ言いふらしてください!」と見事な宣伝文句を生み出て笑いを誘い、満島は台風の話に便乗するように「沖縄で育っているので、台風の目に入るとみんなが集中してレンタルビデオ屋さんに行くっていう幸せはありますね」と振り返った。
最後の挨拶で松山は「江口のりこさんがどこに出ていたかわかりました?」と客席に投げかけると、気づいたお客さんたちが拍手で反応。「江口さんも喜ぶと思います。みんなわからないと思ってました」とカメオ出演も注目ポイントとして挙げ、「劇場から出たあとに何かが残っている作品だと思います。自分自身の小さな幸せを実感できるか、発見できるかがこれから必要になってくる時代になるんじゃないなと勝手に思っていて。そのいいヒントになるんじゃないかなと。言語化できない曖昧なものをみなさんに届けて、いつまでも残っていることが理想だと僕は思っています」と作品の魅力をアピールした。
取材・撮影 南野こずえ
『川っぺりムコリッタ』
配給 KADOKAWA
(C)2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会
全国公開中