神尾楓珠、山田杏奈、今井翼が葛藤した役作り『彼女が好きなものは』先行上映イベント



普通と自分らしさのギャップに悩む高校生を描いた『彼女が好きなものは』の先行上映イベントが行われ、神尾楓珠、山田杏奈、今井翼、草野翔吾監督が登壇した。(2021年11月26日 TOHOシネマズ日比谷)

本作の内容は、ゲイであることを隠しながら生活する高校生の純(神尾楓珠)の恋人は、妻子持ちの誠(今井翼)だった。ひょんなことからBL好きの同級生・紗枝(山田杏奈)と純が付き合うことになり、揺れる三角関係の狭間で“普通”という価値観に向き合う男女の姿を描いた物語となっている。


MC 役柄について演じてみてどうでしたか?
ゲイであることに悩みながら生きる純。
神尾「僕自身には経験がないことだったので、演じるうえでどういう部分で一番葛藤しているんだろう、どういう悩みが純のなかにあるんだろうとかがつかみずらくて難しかったんですけど、今回ゲイが題材になっていますが、他のものに変換したときに多数派、少数派はいくらでもあるし、僕も少数派の部分は沢山あるので、世間の目と自分の考えをすり合わせて向き合っていったという感じです」

純に恋をし、BL好きを隠している腐女子の紗枝。
山田「紗枝はBLが好きということを人に言えない好きなものがあるところが純とも共通していて。本当に好きなものを人に言えないというのはすごく苦しい部分があるし。みんながみんな本当の自分をさらけ出して生きるのって、誰にとってもすごく難しいことだなと思いながら。そのなかで周りの人と一緒に生きていくにはどうしたらいいんだろうと考えたんですけど、紗枝は本当にまっすぐで。自分自身も悩みを抱えているからこそしっかりと純と向き合っていたので、そういうところがすごく素敵な人だなと思いながら、紗枝の姿が純の助けになればいいなと思いながら演じていました」

家庭を持ちながらも純と付き合っている誠。
今井「僕自身にとってこのような役柄がはじめてで。誠自身も幼いころから悩んできたことで。妻子を持ちながらも高校生の純と愛し合うという。閉鎖的に過ごさなければいけないとか、固定観念とかは時代錯誤だと思っていて。人を受け入れるとか、自分を肯定してあげるとか、様々なことが社会のなかで認識されているように、同性を愛することが特別ではない、なおかつ周りの人たちも特別視しないという大切なメッセージを純を思う包容力をとおして大事に演じさせてもらいました」

MC 苦労したシーン、印象に残ったシーンについて。
神尾「日常的なシーンの方が難しくて。隠しながら、でも観ている人にはひっかかりを作らなければという部分が難しかったというのもありますけど、印象に残っているのは病室でお母さんに感情をぶつけるシーン。他ではずっと抑えて演じることを意識していて。一番近くで一緒に暮らしていたはずなのに自分もさらけ出せなかったし、わかってもらえてなかった虚しさを埋めるための怒りが上手く出たらいいなと思ってました」

山田「体育館でみんなの前に立って叫ぶシーン。苦労もしたし、撮影の何日も前からプレッシャーもあったんです。演じていくなかで、純の思いや紗枝自身の思いを、あの場面で私をとおして全部出してあげたいなという気持ちにすごくなったので大事にやりたいなと。すごく印象に残っています」

草野監督「(体育館のシーンについて)むき出しの紗枝を撮りたくて、山田さんには嘘なくやってくださいと。神尾さんの病室のシーンも同じことをお伝えしました。その2つのシーンは僕もすごく印象的です」

今井「純とのデートをしている時に紗枝に見つかって水風船が顔にバシャッと当たる。一発勝負の撮影だったので、ビンタされる芝居と同じで平然をよそおいながらやっていて。純と愛し合うシーンで女性とのラブシーンもそうですけど、メインの純が美しく見えることを心がけてやらせていただいて。年下の楓珠くんが僕なんかよりしっかりしているので安心してやらせていただきました」

神尾「もう1個印象に残ったシーンがあるんです。(誠との)別れのシーンで、ラムネがこぼれたんですよ。それを今井さんが芝居でカバーしたんですよ。目の前でやられたときに泣きそうになっちゃって。誠さんの優しさがすごく出ていて、こらえながらやりました」

今井「合間の汗拭きかなんかで入れていたハンカチを瞬時に使ったと思うんです。2人の最後の切ない芝居だったので、最後の時間になるという思いのなかできっと僕も自然にそういうふうになったんだと思うんですけど、撮影を重ねるなかでのコミュニケーションが自然と出たのかなと」

草野監督「(今井が挙げたシーン)水風船じゃなくてヨーヨーなんです。当たったくらいじゃ割れないんですよ。今井さんの肩に針を仕込んで、そこにぶつけて割る仕掛けを作ったんです。一発本番で助監督が顔面にぶち当てて素晴らしいカットが撮れたなと」

MC 去年の9月に撮影ですが、撮影以外の部分で印象に残ったことは?
神尾「遊園地のシーン。亮平(前田旺志郎)とかは楽しく過ごせるんですけど、純はそれができないので、楽しみたいのに楽しめない。思ったより楽しめないので悔しいですね」

山田「お化け屋敷が明るかったよね。明るいお化け屋敷でワーワーいいながら撮っていました」

MC 神尾さんがしっかりしていると感じた理由は?
今井「主役として現場に立つシーンが多いのに、疲れた素振りとかもせずに。1回り以上違うのに年齢を感じずお話しできたので。初日から身近に思えたのでそれがお芝居に反映できたのかなと思います」

神尾「本当に濃い画ですよね(笑)濃い顔と濃い顔で。僕より先輩なので引っ張る感じというかプライドがあるのかなと思ってたんですけど、今井さんていい意味で意外となくて。僕らに合わせてくれて、弱いところを見せてくださるんですよ。構えてた部分もあったけど、それが一気になくなって。今井さんの人柄だなと」

今井「基本的に楓珠くんと2人のお芝居で。完成を観たときに高校生たちの透きとおった美しさが絵になっていると思ったし、40歳になったけど、願わくばいつか学生服を着てお芝居ができたらいいなと思いました」

MC 最後にメッセージをお願いします。
神尾「この作品を観てどう感じたかは、それぞれ自由であっていいと思いますし、深く考えなきゃいけないわけでもないので。面白かったとかSNSで言ってもらえたら嬉しいなと思います。広めてくださいね」

取材・撮影 南野こずえ

『彼女が好きなものは』PG12
配給:バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース
(c)2021「彼女が好きなものは」製作委員会
12月3日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

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