嘘をついている感覚がない、大泉洋『グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜』公開記念舞台挨拶
『グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜』の公開記念舞台挨拶が行われ、大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、濱田岳、松重豊、成島出監督が登壇した。(2020年2月15日 丸の内ピカデリー)
戦後から間もない頃、文芸誌編集長の田島はダメ男なのに何故かモテてしまい、気付けば何人もの愛人がいた。疎開中の妻と娘のためにケジメをつけようと、愛人たちに別れを告げるために、ガサツな女・キヌ子にニセの妻役を頼み、愛人たちの元を訪れるのだが――。笑って泣ける、心温まる喜劇映画が誕生した。
劇中でニセ夫婦作戦が失敗することにちなんで、「思惑が外れて失敗したこと」を尋ねられ、大食いでパワフルなキヌ子役の小池は、映画のプロモーションで大泉と一緒にTV番組に出てきたが「友人からお喋りがすぎて、映画の印象がまったく残らなかった」と指摘を受けていたことを告白。それについてケチで優柔不断なモテ男・田島役の大泉は「非常に可愛らしい悩みだなと。私はここ5、6年ずっと悩んでいる。今回1発で気付いたのは早い!」と早々に笑いで返した。
さらには「宣伝部が『出てくれ』と言うので出るんですけど、宣伝に出すぎちゃうから、みなさんがお腹いっぱいになっちゃうんですよ。なんとなく毎日毎日大泉を見ているうちに『劇場に行かなくてもいいか』ってなる。ここにいるお客さんたちは僕と小池栄子ちゃんでお腹いっぱいなの。それでも観に来ている勇者!」と宣伝の難しさを訴えかけながらも、客席を讃えた。
“嘘をついて大失敗した経験”というお題でクロストークがはじまり、極度の方向音痴だと話す水川は「先陣切って誘導するんですけど、場所にはたどり着けないことはあります」と吐露し、橋本は小さい頃に妹のお菓子を勝手に食べ、お父さんのせいになっていたが、最近になって「私が食べたんだよね」と打ち明けて妹に驚かれたという。
泳げないのに「泳げます!」と嘘をついて水泳のコーチ役を得た木村は、水泳を習いに行ったが「泳ぐシーンが全然無かった」と振り返ると、「カーリングができると言って『シムソンズ』という映画に出ました」と堂々と発言したのは大泉。
「ちょうどTEAM NACSの全員で取材を受けていて『僕たちカーリングのチームです!』と嘘ついた。役をとったのは僕だけでしたけど(笑)」と大嘘を明らかにし、撮影直前に監督から「カーリング得意なんですよね?」と聞かれたと話し「毎日嘘をついているので、自分が嘘をついている感覚がない」と開き直った。
いっぽう濱田は、アメリカの入国審査の際に職業欄にアクターと書いてあることを質問され、出たことのある映画を挙げても認めてもらえず「高倉健と友達」と嘘をついて入国を許可してもらったというエピソードを披露。
若い頃は190センチ以上あったと話す松重は、長身すぎたため画面から見切れるので「当時は188センチと嘘をついていた」と言い、衣装合わせの時に用意された服では「ヤクザ役なのにツンツルテンになってしまうため、若い頃に出演していたVシネマでは、自前の同じスーツをずっと着ていた」と思い返した。
また、成島監督は本作では声の演出にこだわっており「(緒川)たまきさんにはブルースの女王みたいに、水川さんはマリア・カラスの色っぽさ、(橋本)愛ちゃんには昭和の大女優。一番悩んだ小池さんのカラス声ですが、舞台で(小池が)この声でやっていたので腰を抜かして。試しにカラス声をやめて普通の(小池)栄子ちゃんの声でやってみたら全然面白くなかった」と声色が醸し出すキャラクターの個性は本作の大きな見どころだが、独特の声と間合いで笑いを誘うキヌ子役の小池は「多少は傷つきますよ」と笑顔で付け加えた。
さらには裏話として、キヌ子の部屋で田島と大ゲンカするシーンでは、タンスを持ち上げる際に「はい、カラス声から白鳥へ!」と、恋心が大きくなっていく心境を表すような指示があったことを小池が明かし、大泉は採石場で砂ぼこりにまみれた時に目が開けられなかったにもかかわらず「まばたきが多いね」と監督に言われたという。
最後に小池が「みなさん広めてくださいと言うことが多いんでしょうが、そんなことは望みません。この時間を一緒に過ごせた仲間として、映画がひとりでも多くの方に支持していただけるように祈っていただければ嬉しいです」と謙虚な姿勢で呼びかけた。
しかし大泉は「みなさん、宣伝しなきゃダメですよ!小池さんはこういう方ですからそうおっしゃいますけど、私は違う!死ぬ気で宣伝しなきゃダメですよ、あなた達にはその使命がある!我々の仲間です!グッドバイ制作委員会の一員ですよ!ノルマは1人10人にメール!」と壇上を歩き回って熱弁を繰り広げ、最後まで大泉節で笑いを提供した。
取材・撮影 南野こずえ
『グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜』
©2019『グッドバイ』フィルムパートナーズ
配給:キノフィルムズ 全国公開中