信念が人と事件を突き動かす『見えない目撃者』レビュー



視力を失った元警察官は、見えない犯人を追う。ハラハラと手に汗握るノンストップ・スリラー!

警察学校を優秀な成績で卒業し、警察官として将来を有望されていた浜中なつめ(吉岡里帆)は、不注意から事故を起こし、弟を死なせてしまう。彼女自身も事故の時に失明してしまい、テープ起こしの仕事をしながら母(松田美由紀)と暮らしている。3年の歳月が経つも、自責の念にかられ、塞ぎ込んだままだった。

弟のお墓参りに向かうが、母と言い争いになってしまい、盲導犬のパルとともにスマートフォンの道案内を頼りに家に向かう。その途中、横切ったスケートボードの音。数秒後に車のブレーキ音が聞こえ、慌てて近づく。

車からは大音量の音楽とともに、かすかに聞えた助けを求める女性の声。なつめは不審に思い、警察に相談するも相手にされなかった。しかし、どうしても“声”が気になり、独自で捜査をはじめようとする――。

視覚障害というハンデを感じさせない、五感の持つ力を見せつけてくれる主人公・なつめは、頑固で力強い女性であり、その信念が周囲の人たちと事件を動かしていくが、吉岡里帆の穏やかなイメージとはうらはらに、拍手を送りたいほどの難役を確実に演じ切った。そして忘れてはならないのは、彼女の目となる、盲導犬パルとの絆。

女性の声を聞いていないが、“もうひとりの目撃者”こと、スケートボードの音の主である高校生の春馬。熱心ななつめに動かされてサポートするようになり、見事なコンビネーションを披露。思春期に抱える影や、どんどん変化する心情と成長を絶妙に表現しているのは、若手俳優の筆頭株である高杉真宙。

また、安定感のあるベテラン俳優陣には、優しさと感を信じる人情派刑事に田口トモロヲ。面倒なことを避けたがる刑事・吉野役は大倉孝二。極端な2人の味わい深さがカギを握っており、さらには刑事たちが追っている「女子高生連続殺人事件」に噂される“救さま”の存在も浮上する……。

緊迫感のある展開に引きつけられる本作は、韓国で大ヒットを記録した『ブラインド』のリメイクで、日本オリジナルの設定を脚色しており、残虐なシーンもあるが表現の限界に挑んでいる。メガホンを握ったのは『重力ピエロ』や『リトル・フォレスト』を手掛けた、森淳一監督。

闇の中で犯人を追い続けるなつめ。吉岡の印象を覆す新境地とともに、最後まで予断を許さないスリルをスクリーンで体感していただきたい。

文 南野こずえ

『見えない目撃者』 R15+
(C)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (C)MoonWatcher and N.E.W.
9月20日(金) 全国公開!

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