今、この瞬間を生きる『子どもが教えてくれたこと』×フランス映画祭2018



13年ぶりに「フランス映画祭」が横浜に帰ってきた。1993年から毎年開催される日本未公開のフランス映画が楽しめるイベント「フランス映画祭」。豪華映画監督や俳優が来日し、質疑応答やサイン会などの交流イベントも行われる、フランス映画ファンにはおいしいイベントだ。そんな「フランス映画祭 2018」が2005年以来13年ぶりに横浜にて開催された。開催当初の地へと舞い戻り、「カンヌ国際映画祭」や「ベネチア国際映画祭」での受賞作をはじめ、日本にて近日公開映画などバラエティに富んだ14作品がラインアップされた。

本映画祭にて、病気を持ちながら生まれてきた子ども達のありのままの姿を描いた『子どもが教えてくれたこと』の上映後に、監督のアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンが登壇し、観客との質疑応答を行った。(2018年6月23日 イオンシネマみなとみらい)

生まれながら病気だった。病気と付き合いながら懸命に生きていく。5人の主人公アンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テュデュアルは小さな子どもながらも生まれつきの病と闘いながら生活している。しかし彼らは笑顔と優しさ満ち溢れている。暗い者など1人もいない。みんな前向きで明るくて、家族や友達を元気付けている。『子どもが教えてくれたこと』は病を背負いながらも精一杯に日々を繋いでいく子どもたちを、ありのままに描いたドキュメンタリー映画である。

Q.ジュリアンさんは元々ジャーナリストでいらっしゃったと思うのですが、どういったいきさつで映画を撮りたいと思うようになられたのでしょうか?
ジュリアン 私の子どもは難病でした。その経験を通して、どんな風に子供たちが人生を見ているかを改めて発見しました。そして私は子供たちの口からどういう風に人生を見ていて、どういう風に生きているか、その姿をみなさんと一緒にシェアしたいと思ったんです。

Q.(映画の主人公である)この5人の子どもたちはどのように選んだのでしょうか?
ジュリアン いわゆるオーディションはしたくありませんでした。だからフランス全国を回って医療スタッフやあるいは病気の子どもたちを支援している団体を調査しました。子どもたちの病気というよりかは、どういう個性を持っているか、おしゃべりな子かどうか、そういったことをお尋ねしました。そして(他の子どもは紹介されず)この5人だけを紹介していただいて、そのままこの5人を起用しました。

Q.うちの子は監督の娘さんと同じMLD(異染性白質ジストロフィー)という病気です。どんどん悪くなっていく病気なのですが、監督は映画を撮っている時、娘さんのことを思い出して辛くなったことはありませんでしたか?
ジュリアン もちろん撮影の最中、胸迫るような思いも多々ありました。乗り越えるための唯一の方法は「あまり先を考えない、子どもと同じように今、この時を生きる」それが唯一の乗り切り方でした。子どもたちを通して人生は生きる価値があるものなんだという想いを感じ取っていただけたらとても嬉しいです。

Q.次回作はどのような構想を持っていますか?
ジュリアン 企画はたくさん頭の中で描いています。伝えたい、皆さんとシェアしたいという想いはあります。ただこういったテーマではないと思います。でもそのことが大事というわけではないです。ほら、言っているように私は子どもたちから今を生きるということを教えてもらいました。だから未来のことはそれほど大事じゃないんです。なので私にとって今一番大切なことは今こうして皆さんと一緒にここにいることです。

この言葉で会場はあたたかい雰囲気に包まれた。そしてジュリアンは「撮影の中で子どもたちとの関わり合いで苦労したことはあったか?」という質問に対し、最後に「大人は子どもに期待してはいけません。子どもたちのありのままを受け止める姿勢が大切です。そしてこの映画では、私が期待していた以上のものを子どもが差し出してくれました」と答え、微笑みながら会場を後にした。

取材 神崎真由

「フランス映画祭 2018」開催期間:6月21日~6月24日
『子どもが教えてくれたこと』7月14日より、シネスイッチ銀座 ほか全国順次公開

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