ディーン・フジオカ「すごくチャレンジングな作品」『海を駆ける』完成披露上映会
『第69回カンヌ国際映画祭』「ある視点」部門で審査員賞を受賞した鬼才、深田晃司監督の最新作『海を駆ける』完成披露上映会舞台挨拶に、主演のディーン・フジオカをはじめ太賀、阿部純子、鶴田真由、深田晃司監督が次々と登壇、会場を沸かせた。(2018年5月7日 テアトル新宿)
本作品は完成までに7年の歳月を費やしたという渾身の意欲作。深田監督の高い作家性と才能に共鳴したフランス×インドネシアの共同制作であり、全く新しい日本映画だ。監督は2011年の東日本大震災後に大学の研究チームの震災復興リサーチに参加、スマトラ島沖大震災で壊滅的な被害を受けながら逞しく復興を遂げているバンダ・アチェを訪れ、映画のアイディアを得たという。監督の熱望により撮影はバンダ・アチェでのオールロケとなり、約1ヶ月の間敢行された。
インドネシア、バンダ・アチェの海岸で謎の男(ディーン・フジオカ)が倒れているのが発見され、日本からアチェに移住し、NPO法人で災害復興の仕事をしながら息子タカシ(太賀)と暮らす貴子(鶴田真由)の元に連絡が入る。記憶喪失ではないかと診断されたその男は、インドネシア語で「海」を意味するラウと名付けられ生活を共にすることになる。片言の日本語とインドネシア語を話し、いつでも穏やかに微笑むラウ。しかし彼の周りでは少しずつ不可思議な現象が起こりはじめていて――!?
MC 作品が完成した今のお気持ちを聞かせてください
ディーン 今日はちゃんと服着てきました。映画では全裸で登場しますが。皆さんにご挨拶できるのを嬉しく思います。
太賀 僕にとっても思い入れの深い作品なので、今日を迎えられてとても嬉しく思っています。
鶴田 とても無国籍な、インドネシアなのにどこか涼しげで、ちょっとお洒落で、いったいどこの国の映画なんだろうという不思議な映画に仕上がっています。
阿部 この作品を皆さんに日本で一番最初に観て頂くということで、ドキドキしています。
MC ディーンさんに伺いたいと思います。この映画のお話をいただいたときに、まずどう思ったのかをお聞きしたいです。しかもラウという役は非常に難しいのではないかと感じたのですが
ディーン そうですね、まぁ驚きがいろいろあったんですけど…ラウは人間じゃないというところも含めてすごくチャレンジングな作品で。演技していく上で監督と沢山コミュニケーションをして作っていこうと。自分にとってどれだけ器になれるかっていうんですかね。ラウっていうアーティストレ-ションみたいなものを、自分の身体だったり声だったり存在を通して作っていければいいなという。あとは、アチェっていうロケーションですよね。オールロケは最初は気が狂ってるんじゃないかと思いました。
MC 監督は「ご覧いただいた皆さんで、是非意見を交わしてほしい」という想いで作られているそうなので、出演されたキャストの皆さんは撮影して実際に出来上がった作品を観たときにどう感じたのかを伺いたいです
阿部 すごく難しい質問ですよね。人生っていうと少しオーバーかもしれないんですけど、日々の暮らしの中で素敵だな、と思う一瞬一瞬がこの作品にちりばめられたような気がします。
鶴田 頭で分析しきれないところに深田さんが描きたいポイントがあるんではないかなってすごく思っています。言葉にしきれないモヤモヤ感みたいなものを皆さんに持って帰ってもらって、考えてもらいたいという所に、ディーンさんの役割もおありでしょうし、深田さんの想いもそこに込められているんじゃないかなと思っています。今日はディーンファンが多いと思うんですけど、私とのラストシーンのディーンさんは物凄く美しいです。芝居しながらみとれました!
監督 早い段階で撮影したシーンなんですけど、本当に「ディーンさんにお願いして良かったな」って思いました。
ディーン ありがとうございます!
太賀 僕が今まで観たことの無い映画だと思いました、終わった後に残ったモヤモヤだったり、言語化されていない気持ちみたいなものは言語化する必要が無い映画だな、と思いました。脚本を読んでいるし現場にも行っているので、どんな映画になるかは理解はあるんですけれども、それを遥かに超えてまた違った作品になっていたのはすごく興奮しました。
ディーン この映画を観たときに観客の方々一人一人がどういうふうに思うかという事に僕はすごく興味があります。視点の多様性みたいなものを感じましたね。
イベントが予定終了時間を大幅に超え盛り上がりを見せる中、最後にMCより嬉しい発表が。深田監督の功績が評価されフランス文化省から芸術文化勲章の一つ「シュバリエ」が授与されることになり、『海を駆ける』のフランス、インドネシア、中国での世界公開が決定した。この発表に会場からは祝福の拍手が鳴り止まず、監督と共に喜びあうキャスト陣の姿には、チームワークの良さを垣間見ることができた。
取材 福井原さとみ
『海を駆ける』
配給:日活 東京テアトル ©2018 “The Man from the Sea” FILM PARTNERS
2018年5月26日テアトル新宿、有楽町スバル座ほか全国ロードショー