トリを務める映画の場合『乃梨子の場合』鑑賞記


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トリを務める映画の場合 ――『乃梨子の場合』鑑賞記――

シネマスコーレ(名古屋市 中村区)で絶賛開催中の【第3回 ニューインディーズ映画総選挙】が、いよいよ佳境を迎えている。4月28日(火)より上映が始まった『乃梨子の場合』で、4作品全てが出揃った。
動員数と観客による採点で順位が確定し、1位となった暁にはリバイバル上映が約束される……それが、【ニューインディーズ映画総選挙】――伊達や酔狂で“総選挙”を名乗っている訳ではない。
【第3回 ニューインディーズ映画総選挙】のフィナーレを飾る『乃梨子の場合』は、“ピンク七福神”最年少である坂本 礼監督5年ぶりの新作で、所謂ピンク映画ではないが西山真来、川瀬陽太、吉岡睦雄、和田光沙ら出演者の濡れ場も描かれるR-15の意欲作である。

『乃梨子の場合』Story:
乃梨子(西山真来)は、どこにでもいる主婦。子供の時、万引きで2回捕まったことがある。彼女には、かわいい娘と警察に務めるやさしい夫・響一(川瀬陽太)がいる。ある日突然、響一が一年前に警察を辞めていたと乃梨子に告白してきた。退職金も使い果たし、貯金も底をついていた。パートだけではやっていけない。パート先であるスーパーの納品業者・佃煮屋の戸高(吉岡睦雄)にデートに誘われていた乃梨子は、戸高に援助交際を切り出す。見合い相手の亜紀(和田光沙)がいながら乃梨子にのめり込んでいく戸高。乃梨子、響一、戸高は、静かに狂った歯車の中をさまようのだが……。

待ちに待ったゴールデンウィークの到来を告げる4月29日(水)、シネマスコーレに登壇した坂本 礼監督、西山真来さん、川瀬陽太さんの舞台挨拶を取材した。

坂本「西山さん、今回の映画は如何でしたか?」

西山「撮影中は本当に頭を抱えて、怒られまくって……皆さんに引っ張ってもらって、何とか着いて行く日々でした。「本当に使えるのだろうか?」と思ってたんですけど……(2014年)12月に初号試写を観て、「面白い!」と思いました」

川瀬「坂本くんに「そうじゃない、そうじゃない。君はそう思うのか?」みたいに言われて、西山さんは困ってたんじゃないかな?あと、西山さんと吉岡(睦雄)くんは木村文洋監督の『へばの』(2009年/81分)で共演してて濡れ場もあったんだけど、今回は違う現場ということで、別種の緊張があったんじゃ?」

西山「はい、違う緊張感がありました」

川瀬「試写の後、新宿の神社で缶チューハイを飲みながら話してたら、吉岡くんが「いやぁ……なんか、僕らのこと嫌いなんすかねぇ(吉岡睦雄さんの真似で)」って(場内爆笑)」

西山「いや、むっちゃ緊張してたのと……旦那さんと不倫相手との距離感が、ちょっと良く解らなくて。1日目で躓いて、そんなこんなで10日間色々と(苦笑)……」
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そんな西山さんの葛藤や逡巡がそのまま“乃梨子”の立ち居振る舞いに直結し、スクリーンには息苦しいまでのわだかまりが封じ込められている。
作品を覆い尽くす重怠さは、『乃梨子の場合』の大いなる魅力となっている。

坂本「『乃梨子の場合』ってタイトルが付いてるけど……“乃梨子”って、君でしょ?君の場合、どう言う映画なの、これ?」

川瀬「……凄い質問だね(場内笑)」

西山「吉岡さん(の役)から見て、乃梨子に“女子”を感じてくれるのって、凄いことだと思ったんです。でも、それを出すと「違う!」って言われることが多くて……それで、迷ってたんですよね……。でも、最後まで演じてみて……「体験したなぁ」、と」

川瀬「ああ……自分じゃない、“役を生きた”ってこと?」

西山「はい。「最後は、ひとりで生きるしかないんだな」って……」

坂本「え?30才そこそこの西山さんが、そんな風に思っちゃうの?」

川瀬「いやいや、“乃梨子が”ってことだろ!?……酷な質問するよな、本当に(場内爆笑)」

“どこにでもいる”人々の“やってしまいがち”な選択は、積み重なるうちに様相を変えていく。
観客は、“誰にでも起こりうる”状況が、“何人たりとも抜けられぬ”陥穽たり得ることに気付かされ、戦慄する。

呼吸を忘れ、銀幕の人物の鼓動を追体験する破目になる、濃密なる71分……是非、御観逃しなきよう。

【第3回 ニューインディーズ映画総選挙】の最後を飾る『乃梨子の場合』――上映回は残すところ2日だが、ちょっとだけ追い風が吹いている。
4月30日は木曜日……シネマスコーレではレディースデーで、女性は1,100円となる。
そして、続く5月1日は、言わずと知れた映画の日……均一料金1,100円となり、しかも最終日のこの日は先着順でサイン入りポスターのプレゼントがある。

あなたは、好みの作品に出会えただろうか?
あなたの“推し作品”は、アンコール上映を勝ち獲ることが出来るだろうか?
新たなインディーズ映画の未来を決めるのは、あなたの一票なのだ。

取材 高橋アツシ

『乃梨子の場合』公式サイト
シネマスコーレ公式サイト

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