逆境をパワーに変えろ!!『死神ターニャ』鑑賞記
逆境をパワーに変えろ!! ――『死神ターニャ』鑑賞記――
【第3回 ニューインディーズ映画総選挙】が絶賛開催中のシネマスコーレ(名古屋市 中村区)で、4/25(土)より『死神ターニャ』の上映が始まった。
「『死神ターニャ』だけ、上映期間が1日短い……勝ち目は無いですよね」
“あいつ”役の松本高士さんと共にシネマスコーレを訪れた塩出太志監督は、こう言った。
【ニューインディーズ映画総選挙】は、新作インディーズ映画を短期間で上映し、観客による採点と動員数で順位を競う企画である。見事1位になるとリバイバル上映が約束されるので、そりゃあ作り手の目の色だって変わる。
「……なので、これを“売り”にしちゃおうかな、と(笑)。観てもらえれば、自信があるんで」
塩出監督は、こう嘯いてみせた。逆境を撥ね返すだけでなく、マイナスから活路を見出す――そんな強かさが、笑みから零れていた。まさしくそれは、インディーズ作品が持つ魅力そのものであった。
『死神ターニャ』Story:
わたしは最近ついてない。バイトはクビになるわ、彼氏にフラれるわでいいとこ全くなし。おまけに車で変な男をひいてしまって絶体絶命!まぁその男は生きてたんだけど、事故のショックのせいか記憶が曖昧で……「おれは死神」だって。おかしな奴だと思ってたら、誰もいない所に向かって話しかける……ってわたし、疫病神ついてんのかー!どうやらこの男(死神)はハンバーグを食べるために人間になったらしい。
ハンバーグ?
しかも2日以内に涙を流すことができないと死ぬんだって! さらにさらに!こいつ、過去にやばいことをしでかしたみたい。知らない間にわたしまで組織に追われる羽目に!うわ!死ぬ前に殺される!果たして、こいつは無事にハンバーグを食べることができるのか? 涙を流す事が出来るのか?そして、わたしは……どうなっちゃうの!?
塩出「中々の爆笑で、嬉しかったです。今日は本当にありがとうございます。松本さん、誰も笑ってないところで笑ってましたよね。あそこは本当、誰も笑わないですよ(笑)」
松本「お気に入りのシーンなんですよね……何回観てもニヤニヤしちゃうんですけど(笑)。『死神ターニャ』は大好きな作品なので、僕は愛知……豊田市の出身なんですけど、名古屋で上映できたってことが嬉しいんです」
塩出監督による練りに練った脚本、確りした演出により、『死神ターニャ』は最初から最後まで観る者を飽きさせない。これに出演陣が見事な熱演で応えてみせる。芹澤興人、小堀友里絵の主役コンビの掛け合いは本当に素晴らしく、岡田あがさ、竹田尚弘、松本高士、河嶋健太ら脇を固めるキャストの演技も光る。特に、仁後亜由美、桜木梨奈の存在感は特筆ものだ。
塩出「はじめは書いたことが無かったアットホームな内容だったんですが……1ページ目で、「これはクソ詰まんないな」って(場内笑)。「(書いてた劇中の)コイツとコイツは死のう」って考えた時、「死ぬなら死神が出てくるでしょ」って……そんな感じで書き始めたんです。開始3分で、人が死にますからね(笑)。初稿では、もっと人が死ぬ設定だったんですよ……皆んな死ねばいいと思って(場内爆笑)」
松本「何があったんですか(笑)?」
塩出「松本さんの役も、謎があるんですよね」
松本「シンプルな話に見えて、意外に細かい伏線が張られてるんです」
『死神ターニャ』はスラップスティック・コメディと見せ掛けて、軽快な会話の端々に大小のネタを鏤めてある。忘れかけていた設定が最後の最後で効いていたり、初見だけでは気付くことすら出来ない裏設定も存在する80分は、2度観、3度観を強くお薦めしたい。
塩出監督によると「何が何でも」ソフト化を目指しているそうで、年内のリリースを目標にしているとか。
だが、やはり一番のお薦めは劇場での複数鑑賞である。その為にも、3日しかない上映期間は多くの人がシネマスコーレに足を運んでいただき、御自身の手で評価を投票してほしい。
塩出監督と松本さんは4/27(月)まで毎日舞台挨拶に立ち、更に4/26(日)は“死神”役の星野祐樹さんも登壇されると言う。
逆境から生まれたパワーが炸裂するスクリーンを、どうか御観逃し無く。
取材 高橋アツシ