福島県が舞台の『トテチータ・チキチータ』クランクアップ
前世、わたしたちは家族でした。
生死を乗り越えつながり続ける家族の絆を描くファンタジー
福島県白河市を中心に撮影が行われていた映画『トテチータ・チキチータ』が無事クランクアップを迎えた。孤独を抱え人生に絶望した男が、不思議な少女に導かれて「前世で家族だった」人々と出会い、家族の絆を知り、再び人生を歩き出すという物語。主人公・一徳を豊原功補が演じている。
エキストラは全て地元の人々が出演し「もちろん将来への不安が消えたわけではないけれど、今福島は頑張ってるよ!という明るいメッセージを伝えたい」と語っていた。ストーリーの中でもサテライト校、原発避難地域など震災の影が描かれているが、「震災で変わらざるを得なかった日常がさりげなく描かれているからこそ、今福島で映画を撮る意味を感じる」という人もいた。
本作は、生まれ変わったのち、兄は中年になっており、父は高校生、母は小学生になっている、かつて一番小さかった妹はすでに人生の終わりにさしかかっているという設定で、年齢と関係性がちぐはぐでユーモラスだが、東日本大震災のあと、再び見直されて来た人間関係の大切さ、家族の大切さや絆とは何なのかを改めて考えさせられる内容になっている。
撮影を終えて、豊原は「震災以降、福島の人達の『元気になろう』という気持ちに対して、映画の力を通してどれだけ協力というか、心の支えになれるかという意味合いも込められていますし、地元の人の強い気持ちがこの映画の後押しにもなっています」と話した。また、「出てくる人達の絆、家族の存在、あたたかいものがいっぱいつまっています。福島の美しいロケーションも楽しんでいただければ」と語っている。
本作は2012年春、フォーラム福島ほか全国公開予定。
【ストーリー】
家族を引き裂いた戦争の記憶。それから60余年、兄、母、父はそれぞればらばらに生まれ変わっていた!
一徳は事業に失敗し、詐欺まがいのリフォーム業に手を出した冴えない中年男。自殺寸前まで追い込まれていたが東京での不思議な少女との出会いから、運命の歯車がどんどん回り始める。
健人は原発事故で避難を余儀なくされた高校生。不思議な少女・凛は両親が離婚し、父のふるさと福島へやって来た小学生。凛は一徳と健人に「一徳は前世私たちの息子だった、そして健人は父、私は母だった。今、私たちを呼んでいる人がいる」と告げる。それは、戦争のとき一人生き残った妹・百合子。彼女は痴呆症を抱えながら福島で独居していた。
年齢も今の家庭環境もバラバラだけれど、それぞれに孤独を抱えた4人の出会いは偶然なのか必然なのか分からない、しかし4人でなくては築けない絆が確かにそこにはあった。だがその時間は長くはない。やがて再び別れの時がやってくる。「生まれ変わって、また会おう」そう心に誓ったとき、4人がかつて信じていた美しい龍「トテチータ」が現れ、彼らと取り巻く人々、そして福島をあたたかく包み込んでいく・・・