吉永小百合、山田洋次監督の情熱を感じた『母と暮せば』クランクアップ会見


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山田洋次監督が、作家・井上ひさしに捧ぐ。長崎を舞台に描く、優しくて悲しいファンタジー。
『母と暮せば』がクランクアップを迎え、山田洋次監督とともに、原爆で息子を失った母親・伸子役の吉永小百合、亡霊となって母親の前に現れる息子・浩二役の二宮和也、浩二の元恋人・町子役の黒木華、町子の新たな恋人・黒田役の浅野忠信が記者会見に登壇した。(2015年8月12日 ザ・プリンス パークタワー東京)

作家の井上ひさしが広島を舞台に書いた戯曲『父と暮せば』と対になるような、長崎を舞台にした『母と暮せば』という物語を書きたいと言っていたという話を、三女の井上麻矢から山田監督が聞いたことがきっかけとなり、本作の企画がはじまった。hahatokuraseba001

山田監督 8月9日、吉永小百合さんと2人で長崎の平和祈念式典に参加してきました。改めて(戦後)70年という年に、この作品を作るというのはとても意義のあることだなと。そして、ふさわしい作品になっていればいいなと思っています。

吉永 8月9日に監督と一緒に長崎の平和祈念式典参加させていただきましたが、被爆者の方たち、そして長崎市民のみなさまがこれから絶対に核兵器は使ってはいけないと願っていらして、平和に対して強い思いを持っていることを感じることができました。若い方たちの中では、広島や長崎で何が起きたのか知らないという方も増えていると聞いています。この映画を観て、あの時起こったこと、そしてこれから私たちがどんなふうに未来に向かって歩いて行かなければいけないかということを感じていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。これから封切まで監督の後について一生懸命歩いていきたいと思います。

二宮 みんなで一丸となって、改めて長崎の原爆に対して勉強する機会を与えていただき、体現することができました。自分がどう思うか、どう考えるかというものは、僕自身が役を通して映画に置いてきたつもりです。何度も何度も観ていただいて、感じていただけたらと思います。

黒木 私は、戦争をリアルに知らない年代なので、監督や吉永さんに聞くことができて、町子という前向きに生きていく役をやらせていただけて本当に嬉しく思います。早くみなさんに観てもらいたいです。

浅野 吉永さんとは『母べえ』という作品でご一緒させていただきました。今回、とても大切な役でやらせていただき、感謝しております。足を負傷してしまう方の役をやらせていただき、とても辛い事なんだなということを役を通して感じることができました。たくさん出てくる役ではないのですが、この映画で色んなことを学ばさせていただきました。hahatokuraseba010

MC 記憶に残っているエピソードがありましたらお聞かせください。
吉永 今回がいちばん、監督の情熱を感じました。怖いほどというか、危機迫るような。ワンカット、ワンカットが心からの演出をなさっていて。ただ、私がそれに応えられなくて落ち込んだことが随分ありましたが、二宮さんが軽やかに演技をしてくださっているので、それに助けられて最後までやることができました。hahatokuraseba006

Q. この作品を世に送り出す意義、どのような思いを発信したいですか?
山田監督 戦後70年だからこの映画を作ろうと思った訳ではないので、運命だとしか言えない。息子が突然死んでしまうことが、母親にとってどんなに悲しいことか。亡霊でもいいから出てきて欲しいという想いは、愛する肉親を失った人なら誰でも持っている思いだろうと。もちろん、長崎の原爆について、平和についても考えてもらいたいです。

吉永 私の役は(息子を亡くして)3年の間、どうして生きていいかわからないという思いの中で、息子に亡霊として出てきてもらって、そこから新しい自分を取り戻して、ある意味の幸せになるのですが、70年という節目の年に、戦争・命について考えてもらえる作品に声を掛けてくださった監督にとても感謝しています。

Q. 吉永さんと二宮さんは、ファーストネームで呼び合うそうですが、仲良しエピソードは?
二宮 僕は「和也(カズナリ)さん」と呼んでいただいてまして、ドキドキしました。親にも呼ばれたことがなかったので、僕の初めての人になりました(笑)「和也(カズヤ)」と読み間違いされることが多いのですが、吉永さんと第三者がいるときは、必ず「カズナリさん」と呼んでいただいて、暗に「カズヤじゃないよ、カズナリだよ!」と宣伝活動してくださって。“もうカズヤでいいや”と思っていた自分をぶん殴りたいですね(笑)

吉永 どうお呼びしていいかわからなかった時、「小百合さん」と言ってくださってとっても嬉しくて、距離が縮まりました。撮影の間は、本当のお母様といる時間より私といる時間が長いと言っていただいたので、テレビを観ていて危険な事をしているシーンを見ると、ドキドキして「大丈夫かしら、うちの息子!」と思ってます(笑)

取材・スチール撮影 南野こずえ

【ストーリー】
1948年8月9日。長崎で助産婦をして暮らす伸子の前に、3年前に原爆で亡くしたはずの息子・浩二がひょっこり現れる。「母さんは諦めが悪いからなかなか出てこられなかったんだよ」。
その日から、浩二は時々伸子の前に現れるようになる。二人はたくさんの話をするが、一番の関心は浩二の恋人・町子のことだった。「いつかあの子の幸せも考えなきゃね」。そんなふたりの時間は、奇妙だったけれど、楽しかった。その幸せは永遠に続くようにみえた―――。

『母と暮せば』
キャスト:吉永小百合 二宮和也 黒木華 浅野忠信 加藤健一 広岡由里子 本田望結 小林稔侍 辻萬長 橋爪功  監督:山田洋次
(C)2015「母と暮せば」製作委員会  2015年12月12日より公開。

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