秘密を共有してこそ結ばれる絆『彼は秘密の女ともだち』×フランス映画祭2015


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親友の夫が、女ともだち?
彼の“とある告白”で、クレールの日常が一変!秘密を共有した二人の友情は、思わぬ方向へ動き出す。

滅多に会うことの出来ない来日ゲストと、観客が直接質問投げかけて対話を楽しむことができる『フランス映画祭2015』。8月8日(土)公開『彼は秘密の女ともだち』の先行上映に、アナイス・ドゥムースティエが来日してトークショーが行われました。(2015年6月27日 フランス映画祭2015 有楽町朝日ホール)

MC:観客のみなさまに、一言ご挨拶をお願い致します。
girlfriend_12.jpg アナイス:Hello!みなさんこんにちは。たくさんの人がこの映画を観に来て下さって、本当にありがとうございます。日本ではとても愛されている監督だなと思っているので、こうやってフランソワ・オゾン監督作品を携えて、みなさんの前に登場できることを大変嬉しく思っております。
MC:アナイスさん、日本は何回目ですか??
アナイス:初めてです。
MC:今のところ、(日本の)印象はいかがでしょうか??
アナイス:本当にアンビリバボーって感じで信じられないです。フランス人にとっては、世界中のどの国よりも遠くの外国に来たという感じで、全く違う惑星にきたような気がしています。

MC:アナイスさんは年間五本ずつくらいに出演されていて、今、飛ぶ鳥を落とす勢いの女優さんですが、この作品とどのように出会って出演を決められたのか、お聞かせいただけますか??
アナイス:オゾン監督は、フランスでも凄く才能のある監督のひとりですし、そういう方からオファーをいただけることは、女優にとって大きな喜びです。本当に女性を描くのが上手な監督で、この作品がオリジナルで素晴らしく、とても変わったラブストーリーだったというところがあります。また私が演じたクレールの、最初から最後まで自分自身を発見して変えようとしていく姿が、素晴らしいなと思ったこともモチベーションのひとつでした。

MC:オゾン監督に「どうして私なんですか?」と聞かれたことはありますか??
アナイス:私から聞いたことはないですが、監督が話してくださったことはあります。彼が探していた女優さんの特徴は、凄く表現豊かな視線、眼差しを持っていることでした。クレールは結構難しい役柄で、台詞もあまりなく沈黙のシーンも多くて、少しミステリアスな部分があるんです。そして彼女の視線はそのまま観客の視線でもあります。私にとってこの役は「待ってました!」という感じでした。やっぱり人は、口に出さなくても、もんもんと色々な感情が胸の中にあって、それを言わないで過ごすことが多いですよね?それが人のミステリーですけども、彼女を理解、想像しながら演じることは、女優冥利に尽きました。

Q:ロマン・デュリスさんの髭が濃くて青い顔がアップになると、笑いをこらえきれなくて噴き出してしまうことはありませんでしたか??
girlfriend_18.jpg アナイス:クレールが、そんなイケメンでもないロマン・デュリス演じるダヴィッドに、恋をするのがちょっと分からないなって思うところもあります。オゾン監督の狙いは、完璧に女性になりきれない、ちょっと男っぽいところが残っていることでした。だからこそ、クレールが彼に恋をすることがより衝撃的で感動的になる訳です。オーディションでは既に女性的で、変装すればもっとデリケートなシルエットを活かせるような俳優さんもいたんです。でもあえて、ロマン・デュリスのような非常に男っぽい顔をした俳優を選んだのは、そういう意図があります。クレールがなぜ、あんなにダヴィッドに恋をするのかは、ルックスなどのフィジカル(身体・肉体)なものではないんです。ダヴィッドの持っている自由なスピリットや魂、そういうものに彼女は惹かれていったんだと思います。クレールは最初、どちらかというと内気で、自分の居場所を世の中に見つけ出せていない印象があったんですけども、ダヴィッドの自由さに触れることで少しずつ自分を解放していって、ようやく彼女の真実を見つけ出していくのです。
-映画館に行った時、「ヴィルジニア」の膝を横から触ってくる男性がいましたが、あれは監督ですよね??
アナイス:お見事です!(笑)

Q:もし自分が同じような立場になったら、主人公の女性のように苦悩して分かり合うか、それともやっぱり少し否定的になってしまうか、どちらでしょうか??
アナイス:私の周りに女装したいって(男の)人がいたら、喜んで一緒に過ごすと思います。私はそのことに対して、全く偏見を持っていません。やっぱりこの映画が素晴らしいのは、そういうクレールの接し方で、理解できるように仕向けている映画だと思うんです。もちろんクスクス笑ったり、ゲラゲラ笑ったりするかもしれませんが、それは彼をバカにして笑っているんじゃなくて、彼と寄り添いながら一緒に楽しんでいることだと思います。こういうテーマだと、少し悲壮感があったり、ドラマチックになりがちなんですけども、オゾン監督が望んだのは、軽やかで深刻さのないトーンで描きたかった、そんなところが私もとても気に入っているんです。
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Q:ロマン・デュリスさんと共演されて、何か思い出のエピソードがあったら教えてください。
アナイス:ロマン・デュリスとの共演は、本当にとっても素晴らしい体験でした。彼は女装をすることに快感を得ていて、昔から「こういう役をやりたい!」って思っていたそうです。この女装をする「ヴィルジニア」の役を、まるで子供の様に楽しんでいました。カツラを被ったり、高いヒールを履いたりすると、彼の目がキラキラっと輝き出すんです!それが私にも凄く伝わって来て、クレールを演じる上でもとても助けになりました。オゾン監督も、ロマン・デュリスが凄く喜んでいるのが分かったから、彼を選んだんだと思います。
普通は女優さんの方がお化粧が長いんですが、彼は美しくなるために、二時間くらいかけて変装していたので、私の方が女優を待っているという状況だったんです(笑)。

Q:ロマン・デュリスと関係をもつ時、男としての彼が好きなのか、女性としての彼が好きなのか、あるいは亡くなった親友とのある種レズビアン関係を求めているのか、その三つが交差しているようで、どれとも似付かないと思います。アナイスさんは、どういった解釈でしょうか??
girlfriend_13.jpg アナイス:クレールが恋をしたのは「ヴィルジニア」です。ダヴィッドのことはどうでもいいと思っています(笑)。彼女の恋愛感情はとても複雑で、「ヴィルジニア」に惹かれていったのは、そこに(親友の)ローラと共通するものを感じていたからです。ローラはクレールよりもっと大胆で、フェミニンで、「ヴィルジニア」もそういうところがあります。だから、「ヴィルジニア」を通して、ローラへの愛情に惹かれていったんじゃないかと思います。また一方、ちょっとセクシーで官能的なところにも惹かれています。もちろん、ダヴィッドが拵えた創造物ですけども、そこにも彼女は惹かれているんです。
本当にとても不思議な感覚でこの撮影をしていた気がします。ロマン・デュリスの目を見ていると、他の映画で良く見ているあの男っぽい視線を感じながら、「ヴィルジニア」になると、ダヴィッドが作りだした創造物とも対面しなければならない、非常に心が動揺するような撮影でした。

Q:クレールのファッションが、とてもかっこよくておしゃれでした!クレールの旦那さん役が、今話題のラファエル・ペルソナさんで、フランスを代表する人気の俳優さん二人に愛されて、揺れ動く女性を演じるのはどういった感じですか??
アナイス:本当にラッキーで、とても幸せでした。実はラファエル・ペルソナとは、二回ほど共演したことがあって、彼のことは良く知っていたんです。彼は今回、ちょっと運のない可哀想な人物の役で、なかなか難しかったんじゃないかなっと思いますが、彼の人をほろりとさせる、この人いい人だなって思わせる演技をされていました。ロマン・デュリスは、私よりも世代的には上の俳優さんで、私が子供の頃にちょっと彼のファンだったんです。なので今回、共演できてとても嬉しく思いました。
衣装のことに触れていただいたので、そのことについてお話させていただきたいです。オゾン監督とお話したんですが、クレールが物語が進むにつれて、彼女自身が変わっていく様子を衣装で表そうということでした。最初はとてもシンプルで、ちょっと男の子のような、自分を目立たせない服を着ています。でも、ダヴィッドが段々「ヴィルジニア」として開花して、女性的になっていくにつれて、クレールもまた、自分の中に隠れていた女性的な部分を発見していって、それを伝授していこうとする訳です。最後には赤いドレスを身に付けて、その自分の女性的な部分を受け入れたのです。
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Q:オゾン監督が、他の監督と違うなと思うところはどこでしょうか??
アナイス:オゾン監督、凄く違います!とてもスピーディーに仕事を進められる方です。それは彼が一年に一本作品を撮っているっていうのがあるんです。撮影現場でも、映画に対するパッションが凄く感じられて、まるで子供のように映画を楽しんで作っているんです。そして技術上でも、彼自身がカメラを回して構図を決めているんです。そうすることで、俳優との関係性がとても親密になります。俳優たちは演技をしている時に、カメラを覗いているのがオゾン監督ということが意識出来ますから、見られている快感を得ることができるんです。それは他の監督はされないことなので、とても気持ちのいい関係性です。

Q:最後のシーンは、親子なのか、友達なのか、恋人なのか、どういう関係性なのか、自分の中で想像も付かない終わり方だったので、どうなったんだろうって気になっています。アナイスさんが、どういう解釈をされているか教えて下さい。
アナイス:最後はやっぱり、ちょっと変わった不思議なラストシーンですよね。ちゃんと説明がされていなくて、わざと疑惑を残したオープンなラストになっています。それは監督が、観客にそれぞれが想像してもらえればいいなとした訳です。
実は監督の中ではこの映画を、寓話のような童話のような形にしたいと思っていたので、最後に三人を上から撮っていて、とても小さなシルエットが街を歩いていくものになっています。そこがとても寓話的なんですけども、それは「完全なファミリーがここにある!」っていう、オゾン監督独特のアイロニーを示したラストシーンです。他にも童話だなって思わせるシーンがあります。病院で「ヴィルジニア」の意識がないところで私が歌いますよね??そうすると、目をパチッと開ける。それは『眠れる森の美女』です(笑)。

 

失って初めて気付く本当の自分
その自分を愛するには、誰にも打ち明けられない
一番の秘密を誰かと共有して結ばれる絆もある

あなたの秘密を知ってるからこそ
あなたの一番の理解者でいたい、私だけのあなたでいて欲しい

世間の目を気にする必要なんて、これっぽっちもない
だって、人を愛するってことは、プラスもマイナスも全部ひっくるめて
自分も相手もまるごと受け止めることだから

築き上げたものを全部無くしても、愛とワインがあれば、他にはなにもいらないのだ

取材:佐藤ありす

【STORY】
girlfriend_16.jpg クレールは幼い頃からの親友のローラを亡くし、悲しみに暮れていた。残された夫のダヴィッドと生まれて間もない娘を守ると約束したクレールは、二人の様子を見るために家を訪ねる。するとそこには、ローラの服を着て娘をあやすダヴィッドの姿があった。ダヴィッドから「女性の服を着たい」と打ち明けられ、驚き戸惑うクレールだったが、やがて彼を「ヴィルジニア」と名づけ、絆を深めていく。夫に嘘をつきながら、ヴィルジニアとの密会を繰り返すクレール。優雅な立ち居振る舞いにキラキラ輝く瞳で、化粧品やアクセサリー、洋服を選ぶヴィルジニアに影響され、クレール自身も女らしさが増してゆく。とある事件を境に、ヴィルジニアが男であることに直面せざるを得なくなったクレールが、最後に選んだ新しい生き方とは──?

彼は秘密の女ともだち
監督:フランソワ・オゾン
出演:ロマン・デュリス、アナイス・ドゥムースティエ、ラファエル・ペルソナ
配給:キノフィルムズ
© 2014 MANDARIN CINEMA – MARS FILM – FRANCE 2 CINEMA – FOZ
2015年8月8日(土)、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
チケットファイル(フランス版ポスターデザイン)付き、前売り券も要チェック♪

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