2週間後の被災地を撮った『大津波のあとに』(森元修一監督)、『槌音(つちおと)』(大久保愉伊監督)。
2011年8月、1度限りの上映を前提に公開されたが反響を呼び、山形国際ドキュメンタリー映画祭、アップリンク(東京)などの上映を経て、全国各地でロードショー公開となった。

被災地の現状を目の当たりにした、2人の監督の想いをお伝えします。

撮影をしようと思ったきっかけを教えてください。
大久保愉伊監督(以下、大久保):まずは帰省という形で震災から二週間後、大槌町に行きました。僕は監督を目指して街を出たので、記録するということが必要だと思っていましたが、実際は家族の衣類や食料などを鞄に詰めていたので、カメラを持って行く余裕がありませんでした。ただ、自分の街の現状を初めて目の当たりにした時、やっぱり記録しないといけないと思いスマートフォンで記録を始めて、滞在する5日間ただ撮り溜めていきました。それから東京に帰ってきて、夢現な消化できない気持ちが続いていたので、たまたま上京時に持ち出していた震災前の映像と絡めて1本作ったら、自分の気持ちや震災に対しての向き合い方が変わるのではと思い、個人的な映像として4月上旬に『槌音』を作りました。
森元修一監督(以下、森元):3月は東京にいても被災地にいても、危険なのは一緒だと思っていました。同じ国に起こったことでも、どこか他人事になってしまっている。それを他人事にしないためにはどうしたらいいかと思い、まずは被災地に行って記録しようと思いました。

変わり果てた町とご実家を見て、何を感じましたか?
大久保:帰るまでは思いを巡らせて、泣いてしまうのか、ショックを受けるのかと思っていましたが感情的なものがほとんど出なかったんです。ただいるだけ、ただそこに立っているだけでした。映像の編集が終わったあと、涙が出てきました。

どのような経緯で一緒に上映することになったのですか?
大久保:4月に僕の母校である成城大学・映研のOBが「大久保家を励ます会」を開いてくれたのですが、その時に『槌音』の基となる映像を上映しました。そこに、僕の先輩と知り合いだった森元さんにも来ていただいて、後日『大津波のあとに』と一緒に上映しないかという話をしていただきました。
森元:『槌音』を観た時、衝撃を受けました。自分の家族や家が流されている状況の方が作る作品は、観る人の目も変わるし、本人もわだかまりや葛藤があると思いますが、純粋にいろんな人に観てもらいたいと思ったので声をかけて、8月に1回限りの上映をしました。

その上映はキャンセル待ちの方がでるほどでしたが、反響はどうでしたか?
大久保:自分の街と家族の映像なので、第三者の方はこの作品を観てどう思うのだろうと不安でしたし、今もその気持ちはあります。けれど、ボランティアがきっかけで震災前の大槌町を知りたかったという方や、何万という家族にも同じことが起こった普遍性を感じることができたという方に感想をいただけて、上映に対しての不安が減りました。
森元:上映当日まで不安でしたが、普段映画を観に行かないという方々にも多く来ていただきました。7月くらいからTVで震災の番組を放送しても視聴率が伸びなくなったそうです。報道は悲惨な話か感動の話のどちらかに偏ってしまうと思いますが、僕たちの作品にはそういった誇張や強調がないので、わかりやすい。だから、多くの方々に来ていただけたのだと思います。人の不幸を映画にするなんて、観るのが辛いなどの意見もありましたが、今上映する意味はあったと思います。報道のプロの方が取材に行った映像と、自分の映像は随分違うと思いますが、ああいう風にしかできなかった。観た人に何かを考えるというよりは、感じてもらえたらなと思います。

2作品の今後について、最終的な目標はありますか?
大久保:フィクションであれば明確な意図があるのですが、上映が目的で作った作品ではないので、お客さんに見てもらう立場として、毎回複雑な心境なんです。 ただ、自分の町を記憶に留めてもらうというアクションとしては、意味のあることだとは思うんです。
森元震災のことが風化されてしまうのではと思っていたので、本当は8月より前に上映するつもりでした。けれど、関西の知り合いの方から阪神大震災の話を聞いた時、“そう思うのは忘れることができるからだ”と言われました。風化する、しないというのは被災地以外の基準であって、震災が次の世代に伝える歴史になったとしても、当事者の方たちには風化しようがないことだと思います。辛いかもしれないけれど、学校などで子供たちに観てもらいたいという気持ちはありますね。

上映される度に反響を呼んできた2作品は、今後も愛媛県・長野県・北海道など全国各地でロードショーされ、2012年3月10日(土)よりオーディトリウム渋谷にて1週間限定公開が決定している。

『大津波のあとに』監督:森元修一 『槌音』監督:大久保愉伊
公式HP http://fartheron.soragoto.net/index.html
(C) 2011 Shu^ichi Morimoto & Yui O^kubo All Rights Reserved.

取材・編集 南野こずえ 佐藤久美

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Cinema Colors(シネマ カラーズ)インタビュー画像満載!取材レポ佐藤久美,南野こずえ2週間後の被災地を撮った『大津波のあとに』(森元修一監督)、『槌音(つちおと)』(大久保愉伊監督)。 2011年8月、1度限りの上映を前提に公開されたが反響を呼び、山形国際ドキュメンタリー映画祭、アップリンク(東京)などの上映を経て、全国各地でロードショー公開となった。被災地の現状を目の当たりにした、2人の監督の想いをお伝えします。撮影をしようと思ったきっかけを教えてください。 大久保愉伊監督(以下、大久保):まずは帰省という形で震災から二週間後、大槌町に行きました。僕は監督を目指して街を出たので、記録するということが必要だと思っていましたが、実際は家族の衣類や食料などを鞄に詰めていたので、カメラを持って行く余裕がありませんでした。ただ、自分の街の現状を初めて目の当たりにした時、やっぱり記録しないといけないと思いスマートフォンで記録を始めて、滞在する5日間ただ撮り溜めていきました。それから東京に帰ってきて、夢現な消化できない気持ちが続いていたので、たまたま上京時に持ち出していた震災前の映像と絡めて1本作ったら、自分の気持ちや震災に対しての向き合い方が変わるのではと思い、個人的な映像として4月上旬に『槌音』を作りました。 森元修一監督(以下、森元):3月は東京にいても被災地にいても、危険なのは一緒だと思っていました。同じ国に起こったことでも、どこか他人事になってしまっている。それを他人事にしないためにはどうしたらいいかと思い、まずは被災地に行って記録しようと思いました。変わり果てた町とご実家を見て、何を感じましたか? 大久保:帰るまでは思いを巡らせて、泣いてしまうのか、ショックを受けるのかと思っていましたが感情的なものがほとんど出なかったんです。ただいるだけ、ただそこに立っているだけでした。映像の編集が終わったあと、涙が出てきました。どのような経緯で一緒に上映することになったのですか? 大久保:4月に僕の母校である成城大学・映研のOBが「大久保家を励ます会」を開いてくれたのですが、その時に『槌音』の基となる映像を上映しました。そこに、僕の先輩と知り合いだった森元さんにも来ていただいて、後日『大津波のあとに』と一緒に上映しないかという話をしていただきました。 森元:『槌音』を観た時、衝撃を受けました。自分の家族や家が流されている状況の方が作る作品は、観る人の目も変わるし、本人もわだかまりや葛藤があると思いますが、純粋にいろんな人に観てもらいたいと思ったので声をかけて、8月に1回限りの上映をしました。その上映はキャンセル待ちの方がでるほどでしたが、反響はどうでしたか? 大久保:自分の街と家族の映像なので、第三者の方はこの作品を観てどう思うのだろうと不安でしたし、今もその気持ちはあります。けれど、ボランティアがきっかけで震災前の大槌町を知りたかったという方や、何万という家族にも同じことが起こった普遍性を感じることができたという方に感想をいただけて、上映に対しての不安が減りました。 森元:上映当日まで不安でしたが、普段映画を観に行かないという方々にも多く来ていただきました。7月くらいからTVで震災の番組を放送しても視聴率が伸びなくなったそうです。報道は悲惨な話か感動の話のどちらかに偏ってしまうと思いますが、僕たちの作品にはそういった誇張や強調がないので、わかりやすい。だから、多くの方々に来ていただけたのだと思います。人の不幸を映画にするなんて、観るのが辛いなどの意見もありましたが、今上映する意味はあったと思います。報道のプロの方が取材に行った映像と、自分の映像は随分違うと思いますが、ああいう風にしかできなかった。観た人に何かを考えるというよりは、感じてもらえたらなと思います。2作品の今後について、最終的な目標はありますか? 大久保:フィクションであれば明確な意図があるのですが、上映が目的で作った作品ではないので、お客さんに見てもらう立場として、毎回複雑な心境なんです。 ただ、自分の町を記憶に留めてもらうというアクションとしては、意味のあることだとは思うんです。 森元:震災のことが風化されてしまうのではと思っていたので、本当は8月より前に上映するつもりでした。けれど、関西の知り合いの方から阪神大震災の話を聞いた時、“そう思うのは忘れることができるからだ”と言われました。風化する、しないというのは被災地以外の基準であって、震災が次の世代に伝える歴史になったとしても、当事者の方たちには風化しようがないことだと思います。辛いかもしれないけれど、学校などで子供たちに観てもらいたいという気持ちはありますね。上映される度に反響を呼んできた2作品は、今後も愛媛県・長野県・北海道など全国各地でロードショーされ、2012年3月10日(土)よりオーディトリウム渋谷にて1週間限定公開が決定している。『大津波のあとに』監督:森元修一 『槌音』監督:大久保愉伊 公式HP http://fartheron.soragoto.net/index.html (C) 2011 Shu^ichi Morimoto & Yui O^kubo All Rights Reserved. 取材・編集 南野こずえ 佐藤久美シネマから、はじめよう。