『侍タイムスリッパー』2周年にキャスト続々登壇!舞台挨拶レポート

2024年8月17日に公開をスタートし、371日におよぶ上映を続けてきた池袋シネマ・ロサで1年ぶりに『侍タイムスリッパー』が上映。2周年的な1週間限定となるが、足を運んだファン同士にとっても同窓会のような雰囲気が本作らしさを物語っている。3回行われた舞台挨拶をダイジェストレポート。
8月15日には、主人公・高坂新左衛門を演じた山口馬木也とライバル・風見恭一郎役の冨家ノリマサが舞台挨拶に登場。本作始まって以来、初めての2人だけの登壇となる。
いつもは安田淳一監督がMCを兼ねているため完全なフリートークに戸惑いつつも、冨家が2年前の初日に「上映終わりの舞台袖でみなさんの拍手を聞いて泣いた思い出がよみがえった」と振り返り、見慣れた顔が客席に揃うなか「今日初めて観た方はいますか?」と冨家が問いかけると数名の手が挙がり、「自己紹介してないじゃないですか!ここに来たら田舎に帰ってきた感覚なので」と山口がリラックスムードのなかで自己紹介をする一幕で和ませた。
客席からの質問に答えるスタイルがはじまり、「酔っ払ってる時やケーキのシーンで戸惑う表情はアドリブか監督の指示か?」との質問に対して山口は「現場に行くまでにこんな風にセリフを言いたいと思っていても、その通りに言えたことがない。現場に行かないとその声が出なかったり、表情が出なかったりするタイプで。ケーキのシーンも僕がいきなり泣きはじめたので、結構周りが引いちゃって(笑)まぁアドリブですかね」と回答。
それに対して冨家が「他の俳優が新左衛門役をやったら、違う新左衛門になったと思う。僕は何回も言ってますが、撮影に入って2、3シーン撮った頃に彼の役の入り方と新左衛門の役の捉え方が本当に素敵ですごいなと思ったんです。アドリブというよりも山口さんが作り上げた新左衛門のリアクションだったという解釈でいいと思います」との見解を付け加えた。
しかし、「役を作ってるのはこっちではなくて、実は相手なんですよ。相手方がどう自分を見てくれるかだと僕は思ってるんです。だから相手に恵まれたんですよ。本当に素晴らしい共演者でした」と山口が返し、お互いのリスペクトによって生まれたキャラクターであることが明確になった。

スピンオフドラマ『心配無用ノ介 天下御免』の話題になり、2人も出演しているが、山口は自身の出演シーンを「瞬きをしていたら見逃す」と笑いを誘い、また、拡大公開から間もない2024年秋に田村と大阪で食事をした際に「心配無用ノ介のスピンオフができるといいね」という話をしていたと明かしたが、その時に「思っていたら絶対実現するから」とアドバイスし、実現した際には「ほら、言霊ってあるよ」、「そうですね」という会話があったという。
「若い人に伝えたいことは?」との質問が挙がり、冨家は「自分の好きなことを見つけられるような時間を作って欲しい。夢を忘れないで追い続けることがとても素敵なことだと思う」と見事な模範解答を披露すると拍手が起き、「先にしゃべらせてください(笑)」と慌てだした山口だが「言霊や目に見えない力を信用していて。感謝や思いやりも目に見えないだけでリアルに感じられるようになったら、何をしても実りある人生になるんじゃないかなということを伝えたい」と自身が感じたことを力説した。
「ラストの立ち回りシーンで、どちらが最初に刀を抜くか決めていたか?間の取り方はどう決めたか?」という質問に対して冨家は「監督からは40秒間はじっとしてくれと。斬りかかりは山口さんからと決まっていたが、相手の目と呼吸で間合いを探っていた」と話すと、山口も「一緒ですね」と同意見だった。

8月16日の舞台挨拶には、山形彦九郎を演じた庄野﨑謙、斬られ役安藤の安藤彰則、心配無用ノ介こと錦京太郎を演じた田村ツトムが登壇。
「みなさん、また来ちゃった」と、お江戸にくだってきた田村がはにかみながら会場を見渡し、庄野﨑は「安藤さんが上映を見ていたので控室で打ち合わせができなかった」と明かし、安藤は「久々に観たら本当に面白かった」とマイペースなままフリートークがはじまった。

スピンオフドラマ『心配無用ノ介 天下御免』の話題になると、自身が出演していることを「Xで知った」と驚きのエピソードを披露したのは庄野﨑。「出ることもまったく聞いていなかった」と続け、「(侍タイムスリッパーの)撮影データがいっぱいあるから監督が勝手に使ったんでしょうね。ギャラ貰ってください!」と田村が返した。さらには「毎週楽しみに観てます」と安藤がさりげなくつぶやくと「出てるじゃないですか!」とすかさず田村がツッコミを入れた。
質問コーナーでは昨日も挙がった「若い人に伝えたいことは?」について、庄野﨑は「感謝することを忘れないでほしい。ありがとうの気持ちは持っていてほしい」と話し、田村は「夢は必ず実現すると思って前に進んでほしい。主演を演じたいという夢を50歳を過ぎて『心配無用ノ介 天下御免』をみなさんのお力で実現することができました。諦めず、続けていれば絶対答えは出るということを思ってほしい」と呼びかけ、安藤は「一生懸命生きてほしい。子供の頃は夢があっても、目指すのが難しくなってきた時や思う通りにいかないこともあると思いますが、それでもやっぱり前を向いて一生懸命生きてほしい」と語った。

公開から2年となるが「改めていちばん好きなシーンは?」と問われると、「打ち上げのシーンで馬木也さんが台本を読んで、いろんな思いを巡っているシーンがすごくジーンとくる。僕のシーンでは、赤いポロシャツを着て風見先生のこと思いながら三角座りをしているシーン」と田村が挙げ、庄野﨑は「馬木也さんと峰さんの稽古のシーンは好き」と振り返り、安藤は「中打ち上げのシーンで馬木也さんがロックグラスでお酒飲む細かいリアクションが上手」とそれぞれのポイントが明かされた。
錦京太郎というキャラクターを作るにあたって、「いろんなアイデアをいただいています。宝塚歌劇団の目線の送り方や立ち方、大スターさんの豪快な立ち回り、歌舞伎役者が浴衣で楽屋を歩いている姿などを実際に見ていて、それらをチョイスして意識して作った」と話し、メイクは「2枚目俳優さんの誇張した感じではじまり、『心配無用ノ介 天下御免』の撮影の時には、それをさらに誇張しています。メイクを含め扮装には2時間かかって撮影に挑んでいる」と裏側の苦労を田村が語った。
3月28日のクランクインから撮影が約1ヶ月空いたが、その時に安藤から「稽古をしましょう」と提案があったと田村が話し、峰や剣会の面々も稽古に協力してくれたという。本山力からは「撮影終わったら立ち回りを辞めるって言わんといてね」と冗談交じりに言われたと苦笑い。
最後にクイズ大会が行われ、田村は「僕が演じていない心配無用ノ介のシーンがあるかないか」との内容に対して「実は僕が演じてないシーンがある。僕の役が決まったのが一番最後で撮影がちょっと進んでたんです。その間に東映の剣会の方が僕の役をやっていただきました。後ろ姿で映ってるシーン」と新たな注目ポイントを明かした。
庄野﨑は撮影中に監督に怒られたことを挙げ、A「立ち回りのシーンでまばたきが多いと言って注意をされた」B「馬木也さんとの立ち回りで馬木也さんと同じ構えをしてしまった」の二択を出し、答えはA。
打ち合わせに出られなかった安藤は舞台袖で慌てて考えたという「僕の髪型がカツラor地毛orペンで塗った」の3択を挙げ、会場を沸かせた。(答えはもちろん地毛)

8月21日の最終上映では、優子役の沙倉ゆうの、井上所長を演じた井上肇、安田淳一監督、ゲストの加藤雅也が登壇。連日、京都で某作品の撮影中のため、この日の東京滞在はわずか数時間という過酷なスケジュールのなか、控室でも壇上でもしゃべり倒す安田節は健在で、舌好調のMCヤスダ。

『侍タイムスリッパー』の最終上映から約1年経ち「おかえりなさい」の声に迎えられるなか、助監督であり、助監督役・優子を演じた沙倉は「みんなのマドンナ、沙倉ゆうのです!」と笑顔を振りまいたが、右腕に目立つアザについて、「立ち回りでと言えたら格好良かったのですが、うちの飼い犬の水面に噛まれました(笑)」と愛犬のシベリアンハスキーのしわざであることを自白。
前日に最終回を迎えたスピンオフドラマ『心配無用ノ介 天下御免』について触れ、「時代劇なのでまさか自分が出ると思っていなかった」と井上はオファー当時の心境を吐露し、安田監督は「ゆうのちゃんから『私をヒロインで使ってくれるよね!』との圧力を感じた」と20年の信頼あってのプレッシャーを明かし、第3話では優子が主人公である現代回を作ることになったとのこと。

ドラマの撮影当日、井上は太秦に向かう途中で古傷を痛めてしまい、現場で走るシーンを断念したが、その甲斐あって膝を痛める名演技シーンを「芝居をしていません。怪我の功名で」と笑いに変えた。
「怖い話がありまして」と前振りをした上で、安田監督は多額の住民税の請求があったと告白。さらには口座から大金がなくなっていることを明かし「詐欺にやられたわ!と思って名義を見たら知らない女の人の名前で。“サシオ サエ”さんとあって。差し押さえやっ!!!」と経緯を説明して会場は爆笑。
サプライズゲストで加藤雅也が登場し「主演の山口馬木也です」とさっそく笑いを取りつつ、当初の予定では『心配無用ノ介 天下御免』にて”情け無用ノ介”を加藤が演じる予定だったが、諸事情により叶わなかったという話題になり、「シーズン2があればニセの心配無用ノ介を演じてもらいたい」と安田監督が再度ラブコール。また、『侍タイムスリッパー』を260回観たレジェンドファンも客席におり、それを知った加藤が「今度出たら?」とのオファーに会場が沸いた。
沙倉は「みんなで大人の運動会をしたい!」とお茶目な発言が飛び出し、「トークショーをやりすぎて話すことがなくなったので、みんなで遊びたい!どう思いますか?」と投げかけると、ファンにとっては嬉しい夢の発言に大きな拍手が起きた。
発売されたばかりの漫画『侍タイムスリッパー』コミックス(全2巻)の話題になり、作画を担当したこりすは、Xで投稿していた“侍タイファンアート”が安田監督の目に留まったことがきっかけ。現在アニメージュで『心配無用ノ介 天下御免 外伝』も連載中だが、そちらはシナリオもこりすが担当。「ドラマのシーズン2があれば脚本を書いてもらいたいくらい。いい人と知り合えた」と絶賛。
全国各地で120回以上の舞台挨拶を行ってきたが、『侍タイムスリッパー』2周年という節目に何度もうれし泣きを共にしてきた特別な場所で、変わらずに応援してくれる見慣れた面々を眺め、安田監督は「同窓会を開けて嬉しい」と客席を目に焼きつけた。

取材・撮影 南野こずえ