上村侑、これからは「インプットに挑戦したい」『雨ニモマケズ』インタビュー
1年前に亡くなったゴスペル音楽家を偲んだメモリアルパーティの舞台裏で、22人の人生の交錯を描いた90分のノンストップ音楽エンターテインメント映画『雨ニモマケズ』。安野澄、諏訪珠理らとともにトリプル主演を務めた上村侑にお話をうかがった。
――今回トリプル主演という形での主演ですが、オファーを受けた際の印象は?
ゴスペルの映画と伺っていたので、歌うんだろうなと。歌うにしてもどういう形があるかなって考えた時に、基本的にはクワイアのみなさんと歌うんだろうなと思っていて。監督から「この⼈たちと⼀緒にやるよ」ってgrooviestさんの映像を送っていただいて、それを⾒た時に「あー、なるほど」と。grooviestのみんなが踊っている前で、歌っている画が想像できたんですよ。でも顔合わせの時に「ちょっと⼀緒に踊ってみようか。歌はいらないかもなぁ」って急に監督が⾔い出して(笑)。台本にも歌うって書いてあったじゃん︕と思いながらも、「踊りだけでいけるよね︕」って⾔われて。歌うつもりでオファーを受けたのに、まさか踊るだけっていう全然違う形になったのを覚えています(笑)
――⽗親からの理解が得られないミナトを演じてみていかがでしたか︖
最近の若者っぽくない感じがしましたね、あの不器⽤さは。最近の若者って、うまく⽣きてるじゃないですか。親に反対されても、どうしたら納得してもらえるかなっていうところに思考が⾏く感じで。あからさまに反抗した態度を取るミナトはちょっと⼀昔前のタイプという印象で。だから、あの親あってのあのミナトというか。結局そういう親⼦なんだなっていうのは演じていて感じました。はたから⾒たら似たもの同⼠ですよね。
――⽗親との世代間や価値観・理解が違う場合はどうしますか︖
基本的にはとことん話しますね。割と理性的で。親としての感想を受け⼊れた上で「これをやらせてもらいたい」と。夜が明けるまで話し合うことも多かったんじゃないかなと思います。⾃分の意思をはっきり⽰してきたタイプですね。でも⾃分は⾔葉⾜らずだし、役者として親とは別の世界に進んでいるのでやっぱり⼼配は多かったと思います。お互いに思いを伝え合って、折り合いのつくところで終着するという感じでした。
――ミナトは型にはまらない挑戦をしていますが、挑戦してみたいことはありますか?
最近、この年になってちゃんとしようと思いまして。ちゃんと朝起きるとか、⾃分の管理をするとか、ご飯を⾷べるとか(笑)⾃分のことにあまり興味がないので本当に何もしてこなかったんですよ。逆にそれがいい時期もきっとあると思うんですよね。空っぽの中に何かを⼊れていくように、俳優として空っぽから作り上げていくことが今までは良かったんですけど、⾃分の中から新しく出てくるものは、やっぱり過去の積み重ねでしかないと。アウトプットばかりでしたが、結局アウトプットはインプットからしか⽣まれないなと感じているので、インプット作業に⼒を⼊れることが挑戦ですね。
――演じた役とご自身で重なる部分はありますか?
間違いなく重なるのは、尖ってる部分(笑)それはやっぱり感じました。良くも悪くも普通が嫌いというか。普通のことってみんなができるからつまらないんじゃないかなって感覚が⾃分の中にもあって。だからこそ奇抜なことをやってみよう︕という思考に⾄りますが、ミナトは⼀つの分野でずっと続けることによって、形を⽣み出していて。映画で語られているのは試みが成功した瞬間だけですが、そこに⾄るまでには様々な試⾏錯誤がきっとあったはずで。⾃分はそういう試⾏錯誤をこれからやっていかなきゃいけない部分も重なってるなと思いつつ、ミナトは⽣きるのが下⼿だなとも感じるので、ちょっとそこは。まあ、でも似てるのかな︖(笑)⾃分はそうならないようにしようって思っていること⾃体が、きっとそうなっているってことですよね。
――物語の中心にいる安野さんが演じた南はどんな印象ですか?
多分、ミナトに聞いても僕自身が見ていても、南さんの本懐ってどこにあるんだろうね?というのは感じているのだと思います。僕は役者でミナトはゴスペルで表現をする。自分のやりたいことをやっている身からすると、裏方でサポートするのが南さんの本当にやりたいことなのかな。と思う場面があります。もちろんサポートすることが好きな方もいるとは思うので、そこは南さんに聞いてみないとわからないんですけど。普段ゴスペルを歌っている南さんを知っているミナトは少しむず痒い部分もあるのかな。
――物静かなタイプである諏訪さんが演じたタツヤはどんな印象ですか?
個人的には、あのバランス感は難しい役だったんじゃないかなって思いますね。どちらかに振り切ってしまえば楽なんでしょうけれど、キャラクターっぽくなってしまうし。だから諏訪さんはすごいなぁと。あの役を演じてみろと言われたら自信はないですし、僕が演じてもあの雰囲気は出せないですね。
――撮影中で驚いたことや印象に残っているエピソードはありますか?
まさかあんなに短期間で撮るとは思わなかったですね。バックヤードは⼤変だったと思いますよ。劇中でのてんやわんや感が裏でも実際にありましたね。
――今回の中で演じてみたいと思ったキャラクターはいますか?
ミナトでよかったなぁと思いました。どのキャラクターもその役者さんの色で成り立っていたので、自分はミナトだったんだろうなと改めて感じます。
――最後にみなさまにメッセージをお願いいたします。
前半部の緊張から実際にステージが始まった時のほぐれた雰囲気というか、それぞれが思い描くゴスペルを歌っている姿に緊張と解放が感じてもらえたらいいなと思います。僕はゴスペルを語れる立場ではありませんが、この映画がゴスペルをするきっかけになれば嬉しいです。個人的な推しポイントはgrooviestさんのダンスです。ゴスペルであんなに踊るグループは珍しいと思うので、注目して観てください!
取材・撮影 南野こずえ
『雨ニモマケズ』
出演:安野澄 / 諏訪珠理 / 上村侑 木村知貴 / 山中アラタ / 中野マサアキ / 和田光沙/ 福谷孝宏 / 深来マサル / 山崎廣明 / 宇乃うめの / 三森麻美 / 片瀬直 / 富岡英里子 / 笠松七海 / 生沼勇 / 神林斗聖 / 南條みずほ / 小寺結花 / 尾込泰徠(子役)
梅垣義明/ 東ちづる(特別出演) 監督:飯塚冬酒
製作・配給:ガチンコ・フィルム
(C)GACHINKO Film
公式HP http://g-film.net/ame/
2025年2月8日より新宿K’s cinemaほか全国順次公開