欲望の闇をシュールに描いた『繪畑彩子監督特集上映』初日舞台挨拶レポート
『繪畑彩子監督特集上映』が初日を迎え、舞台挨拶に文ノ綾、岩本晋奈、大塚治、佐田淳、赤坂咲空、清なおみ、細井ゆうた、中原シホ、蒼田太志朗、栗山晃一(音楽)、道川昭如(カメラマン)、大塚圭悟(助監督・カメラマン)繪畑彩子監督が登壇した。(2024年8月3日 池袋シネマ・ロサ)
本作は、CGデザイナーや現代美術作家としても活動する繪畑彩子監督が手がけた短編映画3本を集めた特集上映となっている。
思い出を瓶に閉じ込める狂気が芽生えた「透明なかさぶた」(9分)。
主演を務めた文ノは少し影のある役柄について「繪畑監督作品の雰囲気に合うように心がけた。わりと暗く見られることがあるので役柄に近いのかな」とコメントし、友人役の岩本は「CGがすごい。インディーズ作品でこのCGを作れる繪畑監督はすごいですね」とCGデザイナーとしても活躍する繪畑監督だからこその見どころを紹介。
作家である父の失踪と、父の物語に登場する花の謎に迫る「悲願ノ花」(15分)。
主人公を演じた佐田はストーリーについて「物語が早期解決するじゃないですか。疑問が確信に変わっていくというのがなく、繪畑監督らしい」と正直な感想を吐露。また「メロンがすごい美味しかった」とオチに繋がる意味深な発言をすると、繪畑監督は「あれは2000円の安いメロンです。人からもらうと美味しいって言いますしね」と笑いを誘い、母親役の清も「残念ながら私はメロンを食べられなかった」と話すと会場は笑いの渦に。本作では重要なカギとなっている。
願いを叶える“てるてる坊主”との代償に身体を失っていく「あなたはわたしですか」(35分)。
3作のなかでも特に業が深く映し出されているが、主演の細井は「撮影中に自分の演じた映像を見て、ちょっと若く見えすぎるなと感じた。途中からノーメイクでお酒を飲んだりして老けて見えるようにした。演じた春樹の気持ちがわかる人が意外と多いんじゃないかなと思った」と振り返り、小陽を演じた中原は自身の役について「そんなに怖い顔をしているつもりはなかったけど、私って怖い顔をしているんだな」と自虐を披露。繪畑監督から「中原さんはわりとホラー顔。本人はお気づきじゃないかもしれないけど、ホラーは合っている」と太鼓判を押された中原は「これでホラーをやっていけます」とホラー女優としての自信を得たようす。
人間の欲望が生み出す闇と、行き過ぎた思いがシュールに描かれている短編3作が織りなす『繪畑彩子監督特集上映』は、8月9日まで池袋シネマ・ロサにてレイトショー上映。
取材・撮影 南野こずえ