念願の満席で迎えた『莉の対』公開記念舞台挨拶レポート!
世界三大映画祭に次ぐ映画祭と言われている『第53回ロッテルダム国際映画祭』にて最優秀作品賞(タイガーアワード)を受賞した長編映画『莉の対』(れいのつい)の公開記念舞台挨拶が行われた。(2024年6月1日 テアトル新宿)
本作は東京と北海道を舞台に出会うはずのなかった2人の男女の物語であり、とりまく周りの人たちも様々な問題を抱えていることを映し出し、人間の脆さや弱さを自然の美しさと対を成すように描いた190分のヒューマンドラマ。
キャストとしても出演している和木亜央、舘若奈によるMCの呼び込みで、主演の鈴木タカラ、大山真絵子、森山祥伍、池田彰夫、勝又啓太、田中稔彦(としひこ)監督が大きな拍手に迎えられながら登壇した。
満席で迎えた舞台挨拶の開始早々、監督補であり慎也役の池田が「朝起きて、満席になったのを知ってテンション上がっちゃいました!」と喜びをあらわにするとキャスト陣も頷き、「200回くらいテアトル新宿のホームページにアクセスして、客席の埋まり具合をチェックしていた」と話すのは、舞台を中心に活動している俳優でもある田中監督。劇中ではヒロインの相手役で耳の聴こえない写真家・真斗も演じている。
映画制作経験が全くなかった畑違いのアマチュアスタッフ達だけで全編を撮影していることが特徴となっているが「かなり特殊な制作体制でしたよね?」との問いに、キャスト陣から「不安しかなかった」、「天候予備日がなかった」、「スタッフが全員素人」、「常に余裕がなかった」と次々と愛あるディスりに場内は笑いの渦に。田中監督はタジタジになりながらも、主人公の親友・麻美役の大山から「でもお弁当の内容は頑張ってくれた。ご飯は大事!」との褒め言葉に安堵の表情を見せた。
北海道と東京を舞台にしている本作だが、印象に残っているシーンについて劇団員・武田を演じた勝又は「東京パートの山場と言われた河原の場面。僕と(鈴木)タカラさんの重いシーンで。年末の寒さが厳しいなかプレッシャーでした」と振り返ると、田中監督からは「あの時、僕が川の中に入って撮影していたんです。このシーンのことか!と思って観ていただければ」との撮影秘話も明らかに。
最優秀作品賞を受賞したオランダの『ロッテルダム国際映画祭』の話題になると、麻美の夫・公平を演じた森山は「シェアハウスを借りてキャスト・スタッフ9人で生活をしていた。僕が料理担当でした」と、現地では料理の腕を振るっていたそうで、主人公・光莉を演じた鈴木は「女子は食べる専門でした!」と笑顔で振り返り、大山もふたたび「ご飯は大事!本当に美味しかった!」と主張し、“チーム莉の対”の仲の良さが垣間見えたエピソード。
さらには「授賞式でトロフィーを落としましたよね?」と池田が問い詰めると、「みんなが胴上げをはじめて。それで焦って落としてしまった」と田中監督は釈明。胴上げをした理由について池田は「受賞する前提で宣伝担当が前もって用意したプレスリリースに“監督をみんなで胴上げする”って書いてあった。これはやらなきゃいけないなと思った」という裏話が飛び出し、場内は爆笑。
終始、軽快なチームワークでトークを繰り広げ、最後の挨拶では鈴木が「3時間10分という時間の中にはたくさんの人間が出てきます。幸せも不幸せも結末も、人によって受け取り方が違うと思うので気楽に観ていただき、上映時間が長いので隣の方のトイレには寛容になっていただければ」とコメントし、田中監督は「商業的なエンターテインメントを作る気ははじめから全くなかった。どこにでもいる人間たちの葛藤や息苦しさ、弱さや汚さを描きながら、自然の美しさや厳しさ、温かさをコントラストとして描きたかった。3時間という長旅ですが、最後までご覧ください」と締めくくった。
本作の上映はテアトル新宿では6/6まで。キノシネマ新宿にて6/7より上映、以降全国順次公開。
取材・撮影 南野こずえ、松井和幸
『莉の対』(れいのつい) ※ 英題『Rei』
監督:田中 稔彦 (たなかとしひこ)
上映時間:190分
キャスト:鈴木タカラ、大山真絵子、森山祥伍、池田彰夫、勝又啓太、田野真悠、菅野はな、内田竜次、築山万有美/田中稔彦
©No Saint.&Bloom CO., Ltd. 配給:©No Saint.&Bloom CO., Ltd.
公式HP:https://reinotsui.com