人間は、物凄く複雑になったアンドロイド『さようなら』ワールドプレミア
人間と本物のアンドロイドが共演。死にゆく人間と、死を知らないアンドロイドが、放射能汚染に侵された近未来の日本を舞台に、寄り添いながら生きる姿を描く。
第28回東京国際映画祭コンペティション部門にノミネートされた『さようなら』のワールドプレミア上映が行われ、ジェミロイドF(アンドロイド)、ブライアリー・ロング、村上虹郎、石黒浩、深田晃司監督が舞台挨拶に登壇。本作は劇作家・平田オリザ氏と、ロボット研究の第一人者である石黒浩によるロボット演劇プロジェクトによる戯曲を映像化したもの。(2015年10月24日 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)
深田晃司監督 「原発問題を扱っている作品なので、ワールドプレミアは日本で行いたいと思っていました。こうやって最高の場をいただいたことを光栄に思っています」
ブライアリー・ロング 「初出演作品である『歓待』は、2010年に「日本映画・ある視点」部門で作品賞を獲った作品です。私は東京国際映画祭に育てていただいているので、とても嬉しいです」
ジェミロイドF(アンドロイド)「舞台には何度も出演していますが、映画出演は初めてで戸惑うことも多かったのですが、深田監督の素晴らしい指導のもと、このような大役を演じ切ることができ、素晴らしい経験として私の中にインプットされました」
村上虹郎「(ジェミロイドFに)挨拶した時、軽く触ったのですが、手の感触がヤバイです(笑)」
石黒浩「アンドロイドを演劇で使い、ついに映画にも登場することになって。普通のハリウッド映画と違って、CGでのロボット表現をしておらず本当のロボットが演技をしているので、映画の中での大きな一歩かなと思います。人間ではできない表現がいくらでもできるので、新しい可能性が広がったと思います」
Q.あらゆる女優の中でも、初のアンドロイドとの共演ですが、いかがでしたか?
ブライアリー・ロング「華がある大先輩ですので、光栄でした」
Q.カメラの前で演じてみて、いかがでしたか?
ジェミロイドF(アンドロイド)「映画も素晴らしいと思いましたが、私の演技も思いのほか良かったので、最優秀女優賞をいただけるのではないかと思っています。私が受賞すると、アンドロイドが女優賞を受賞するのは世界初のことなので、東京国際映画祭さんとしても、話題になっていいのではないでしょうか(会場笑)」
また、記者会見にも登壇した深田監督は、「人間ほど高度な脳みそが入っている訳ではないのですが、ある瞬間、人間よりも人間っぽく見える瞬間が何度も訪れます。観るお客さんによっては、アンドロイドの中に人間性を見出す人もいれば、人間の中にアンドロイド性を見出す人もいると思います。人間はものすごく複雑になったアンドロイドにすぎないのでないかということを、思いめぐらせる時間になると思います」と、異例作ならではの見どころを語った。
取材・スチール撮影 南野こずえ
『第28回東京国際映画祭』 会期 2015年10月22日~10月31日
会場 六本木ヒルズ、新宿バルト9、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿 他