ぶらり 深淵の旅 『渡辺護自伝的ドキュメンタリー上映』
ぶらり 深淵の旅 ――『渡辺護自伝的ドキュメンタリー上映』@シアターカフェ――
2015年3月21日、シアターカフェ(名古屋市 中区 大須)で公開される特別企画『ピンク映画五十周年記念作品『色道四十八手 たからぶね』(企画・原案:渡辺護)公開記念 渡辺護自伝的ドキュメンタリー上映』のトークショーに登壇されるお二人の来名をお迎えする機会に恵まれた。
井川耕一郎(脚本家・『色道四十八手 たからぶね』監督)氏、北岡稔美(製作・編集)氏である。言わずと知れたピンク映画の職人にして映画界の至宝、2013年12月24日に急逝された渡辺護監督の魂を直伝された“メモリーキーパー”の御二人である。
『ピンク映画50周年記念作品『色道四十八手 たからぶね』(企画・原案:渡辺護)公開記念 渡辺護自伝的ドキュメンタリー上映』
Aプログラム
渡辺護自伝的ドキュメンタリー第一部
『糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護』(2011年/122分)
Bプログラム
渡辺護自伝的ドキュメンタリー第二部
『つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史』(2012年/138分)
Cプログラム
『紅壺』(1965年/75分/扇映画)
『渡辺護が語る自作解説 新人女優を撮る』(30分)
Dプログラム
『(秘)湯の町 夜のひとで』(1970年/75分/わたなべプロ)
『渡辺護が語る自作解説 エロ事師を撮る』(30分)
この日の名古屋はソメイヨシノ開花も間近のポカポカ陽気で、穏やかな春分の日を迎えていた。
お二方は、先ずは名駅周辺の喫茶店で名古屋名物“モーニング”を体験され、“小倉トースト”(しかも、井川監督は“チーズ入り小倉トースト”)と言う大変ディープな“名古屋メシ”に舌鼓を打った。
お腹を満たした御二人の次なる訪問先は、天長山 久國寺(名古屋市 北区)であった。江戸時代初期から名古屋城の鬼門除けとして現在の場所に移った曹洞宗の古刹で、浅野祥雲作の護国観音像が建立されている。だが、久國寺と言えば梵鐘を第一に挙げるべきであろう。こちらのお寺にある鐘“歓喜”は、なんと岡本太郎氏デザインの釣鐘なのだ。北岡さんたっての希望で案内した久國寺であったが、鐘の内側まで覗き込むほどの堪能ぶりを見るにつけ、ご満足いただけたのだと胸を撫で下ろした。岡本太郎氏の持つ炎の魂は、時代を越えて歓喜を届けつづけるのであろう。
その後、太田耕一プロデューサーと合流した一行は、太田氏たっての希望と言うことでこれまたディープな名古屋メシ“あんかけスパゲティ”を食され、シアターカフェに戻り上映前の舞台挨拶に臨んだ。そして、上映後のレクチャーまでの2時間、頃合い良く開催されていた即売会に訪れるため、名古屋古書会館(名古屋市 中区)まで足を運んだ。
今回、地元民にとっても、改めて名古屋のある意味“アビス(深淵)”を覗きこむ絶好の機会となった。
井川耕一郎「『(秘)湯の町 夜のひとで』は、『色道四十八手 たからぶね』の下敷きになった作品です。『紅壺』は、京都みなみ会館(京都市 南区)に次いで(2014年12月12~19日『渡辺護レトロスペクティブ』)、残されたプリントのシーンの順番が違っているのを発見されたシナリオを基にして入れ替えた復元版になってます。貴重なものだと思いますので、ドキュメンタリー2編と併せて、是非御覧ください」
北岡稔美「『渡辺護自伝的ドキュメンタリー』は、渡辺護監督の“個人史”であるとともに、ピンク映画史の貴重な証言集でもあります。この作品をきっかけに、ピンク映画や渡辺護監督作品に興味を持っていただけると幸いです」
深淵を覗きこみ御機嫌の御両人であったが、さすがは“レクチャー教授と、その助手”……締めるべきところは、確りと締めてくれた。『ピンク映画五十周年記念作品『色道四十八手 たからぶね』(企画・原案:渡辺護)公開記念 渡辺護自伝的ドキュメンタリー上映』各プログラムは、3月27日までの公開となる。
ご紹介した“深淵”に勝るとも劣らぬ名古屋の“ディープ・スポット”シアターカフェを、是非とも覗いてみてほしい。
取材 高橋アツシ 取材協力 坪井亜紀子