観る者は皆 共犯者『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』鑑賞記


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観る者は皆 共犯者 ――『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』鑑賞記――

「みなさん、ただいまーーーー!!!」
2014年10月25日、スクリーン前で亜紗美が絶叫すると、観客席からそれに負けない声援が飛んだ。
「おかえりーーーー!!!!」
そして、凄まじい拍手の大音響が湧き起こった。客席を埋め尽くした観衆は、4年ぶりとなった亜紗美の登壇を心の底から待っていた。
『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』シネマスコーレ(名古屋市 中村区)公開初日の舞台挨拶は、鎌田規昭(浜崎役)、亜紗美(マユミ役)両氏を迎え、こうして幕を開けた。

亜紗美「本当に大好きで昔からお世話になってる名古屋のシネマスコーレさんって言う劇場で、自分が集大成で挑んだ『女体銃』を掛けていただいて、“共犯者”である(光武蔵人)監督であったり成田(浬)さんだったり鎌田さんだったりと一緒に来よう!って言うのが、本当に夢で。それがポジティブ二人が抜けて、ナーバス担当の二人だけで来ちゃった!、みたいな…(場内爆笑)」
坪井篤史(劇場スタッフ:司会進行)「最高の組み合わせですよ(笑)!お客様も、満席ですからね」
亜紗美「ずっと不安だったんだよね」
鎌田規昭「(満席とか)嘘じゃないか?ってね(笑)」
亜紗美「3人くらいしか来てくれないんじゃないか?って、新幹線の中で…。本当にもう、ありがたいですね」
鎌田「ありがとうございます(場内拍手)」

『サムライ・アベンジャー/復讐剣 盲狼』(2008年)でジャンル映画を越えた情熱をスクリーンに叩きつけ日米の映画ファンの度肝を抜いた光武蔵人(みつたけ・くらんど)監督の最新作は、血の池に咲く妖艶なるミューズ・亜紗美をフィーチャーし、日本を代表するスタントコーディネーター・田渕景也(『十三人の刺客』(2010年)『HK/変態仮面』(2013年)をアクション監督に迎えた“血と復讐のエクストリーム・アクション”である。

『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』Story:
大財閥の息子・浜崎(鎌田規昭)に妻を殺された男“マスターマインド”(成田浬(なりた・かいり))は、復讐だけを誓い生きていた。やがて、彼はひとりの女の命を金で買い、暗殺者へと育て上げるのだった。壮絶な特訓の果てに射撃と格闘術を叩きこまれた女――マユミ(亜紗美)は、おぞましい快楽を貪る浜崎を討つべく、難攻不落の陸の孤島“The Room”に潜入する。体内に埋めこまれた銃だけを武器に……。

坪井「僕は、監督さんからの亜紗美さんへの完全なる“当て書き”だと思ってるんですが、如何ですか?」
亜紗美「監督と出会ったのは、5年前…監督が前作『サムライ・アベンジャー』で日本にいらっしゃってる時、お会いしまして。意気投合して「いつか一緒にやろうぜ!」って言ってたんです。その後すぐドイツのコンベンションのオファーがたまたま光武さんと私に来まして、一緒に飛行機に…意気投合したとは言え、まだそんなに仲良くなかったんですけど(場内笑)…10何時間も飛行機の中でずっと二人で居て(笑)…その中で、「こう言うことを俺今温めてるんだよね」ってお話を聞かしていただいて、「それ、演るの私しか居ないでしょ!」って…根拠の無い自信なんですけれど(笑)…どうせやるんだったら、現存するジャパニーズ・エクストリームを越える物、皆が観たことない亜紗美をぶっ放してやろうぜ!、と。そんなことがあって、監督が当て書きしてくださいました。最初、監督が学生の頃に死体の中に宝石とかを入れてやり取りするマフィアの話をやりたいって言うのがあったらしいんです。それが変わりに変わって…『女体銃』になったとか(笑)」
坪井「鎌田さんは『サムライ・アベンジャー』から引き続き監督作品へのご出演ですね」
鎌田「台本の1稿目くらいが出来た頃に、お話を頂きました」
坪井「演じてみて、如何でしたか…凄まじいトリッキーな役でしたが(笑)?」
鎌田「「全く何の抵抗もなかった」って言うと、人格疑われそうな気がするんですが(場内爆笑)、最初にオファーを頂いたのは、違う役だったんです。でも台本読んだら、どうしても“浜崎”の役が頭から離れなくなってしまいまして…」
亜紗美「…やっぱり、人格どうかしてますよね(場内爆笑)!?」
鎌田「(笑)。ただ、見た感じこんな悪くなさそうな感じなので…」
亜紗美「…「俺、優しく見えるでしょ?」ってこと(笑)?」
鎌田「(笑)。「それを、超えられるの?」って言われて…「中身はドロドロなんで、多分いけると思います」って言って…そんな会話でした(笑)」

『女体銃』では、“まさかの”と言って差し支えないであろう超大物俳優が、とある役で出演している。
ネタバレなので敢えて秘すが、『女体銃』観賞の際は是非とも注目していただきたい。因みに、エンドロールにも確りクレジットされている。

鎌田「僕も成田浬も、『○○○』(記者注:上記大物俳優主宰の劇団)を受けてるんです…お互い、入れなかったんですが。監督がその話をしたら、「ごめんねって言っといて」って言われたそうで(場内笑)…もう、報われました(場内爆笑)」
『女体銃』の大きな魅力の一つは、海外ロケでしか撮ることの出来ない映像である。
画面に溢れる緊迫感は言わずもがなであるが、特に目を奪われるのは銃である。ナオミが手にするヘッケラー・ウント・コッホ製UPSコンパクト、“マスターマインド”が構えるスターム・ルガー製Mk1、“The Room”職員が装備するフランキ製SPAS-12――。どれも圧倒的な存在感で観る者を魅了する。
坪井「一部を除いて、全て海外ロケなんですよね?」
鎌田「そうですね。99パーセント海外です」
亜紗美「一部を撮ったのは新宿歌舞伎町や渋谷で…戦地に出向いてストリートギャングとかをリアルで撮ってるようなフォトグラファーで…人いっぱいの中で寝っ転がって「泣けー!亜紗美、泣けーー!!」って(場内爆笑)…そんな撮影で。残りは全部海外に行かせていただいて撮ってるんですけど…いやぁ、もう天国でしたね(場内笑)」
坪井「皆さんこの映画で一番気になることは、銃だと思うんですよ」
亜紗美「発砲ってなると違うスタッフが必要になるらしくて、発砲はCGなんですけど…出てくる銃は、全部実銃なんです。光武監督が、生粋のガンマニアなんですよ。『女体銃』の為に銃を手に入れたって言ってますけど、絶対嘘ですね(場内爆笑)」
鎌田「銃の為(に『女体銃』を撮ったん)だよね(笑)」
亜紗美「実銃なのでモデルガンなんかよりずっと重いのと、それに加えて新しい銃なので固いんですよ。海外に行く一ヶ月くらい前に光武さんから「右手の握力を鍛えといてくれ」って(場内笑)…スポーツ店行ってハンドグリップを買ってきて、ずっとやってました。今握力は、左は24kgなんですが、右が54kgあります(場内爆笑)。後もうちょい頑張れば、リンゴ割れるみたいな(笑)。プロの方の分解の仕方があるらしいんですよ…女性の握力じゃ、難しいんですね。「ガンマニアの為のサービスカットだから!」って監督に言われたんですが、「お前の為のだろ!?」って現場でもずっと言ってました(場内爆笑)。撮影終わるとマスターマインド役の成田浬さんと監督の自宅に行って、ずっと夜な夜銃の分解・接合の練習して…監督のおかげで…って言うか、監督のせいで、分解・接合は二人とも目を瞑っても出来るようになりました(笑)」

『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』予告編
『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』は、終盤凄まじい展開となる。タイムリミットがまさしく生死を分かつ極めて特殊な制約が巧みに用意されており、観客は登場人物と同じく呼吸をも忘れるほどの緊迫感に晒される。

坪井「もう、最後はあの壮絶なシーンですからね」
鎌田「初対面が全裸だったと言う…(場内爆笑)」
亜紗美「え?初対面は、ホテルで私が…」
鎌田「あ、違う違う、役としての話(笑)。今話しに出た本人としての初対面は、泊まってたモーテルに僕が買い物して帰ってきたら、ロビーにボロ雑巾着た女が居たんですよ。僕10年くらい向こうに住んでたんで、「ああ、懐かしい光景だな…こう言う人、よく居たな…」って思って。で、後で下りてきたら、「おはようございます!」ってボロ雑巾が挨拶してきて(場内爆笑)…」
亜紗美「酷い男でしょ!?偽善者の皮を被ってる男なんだから(笑)」
鎌田「で、ボロ雑巾を僕の車に乗せて、現場に行ったんです(笑)」
亜紗美「でも、もっと色々やりたかったんですけど…アッと言う間に終わっちゃいましたよね…」
鎌田「僕のシーンが、本当に最後の…「後1時間しか撮れない」って言う最後の1時間だったんです」
亜紗美「本当に時間が無いからやれるところまで撮って、駄目だったらもう一回撮ろうって話だったんですけど…一回で行きましたね。偶然と、あとカメラマンの俊さん(今井俊之氏)の腕なんですけど…俊さん、ありがとう(笑)」
鎌田「一回しか芝居してないんです。だから、ちょっと物足りないなとも思います(笑)」
もっともっと聞き続けていたいトークの真っ只中だが、ミニシアターの哀しい宿命――次の上映時間が迫っていた。
坪井氏は、観客誰もが聞きたいと思っていた質問をぶつけてくれた。
坪井「『女体銃』の続編…もしあるとしたら、如何ですかね?」
鎌田「台詞にだけ出てくる役があるんですけど…あれ、(僕に)似ててもいいんだろうな、と…(場内笑)。また違う悪者が出来るんじゃないかな、とは思ってます」
亜紗美「やりたいのは、“女体銃”対“女体銃”を(場内笑)…向こうの女優さんでタッパも体格も凄い方を用意していただいて、何かもう…ショットガン出てくる、とか(場内爆笑)」

思わぬ次回作の構想(?)が聞けたところで、舞台挨拶はお開きとなった。
その後、シネマスコーレ向いのスコーレCAFEで帰りの新幹線ギリギリまでサインをしたお二人が小走りで駅に向かう中、沿道に残っていた大勢の映画ファンは鎌田・亜紗美両氏の背中が見えなくなるまで拍手を送り続けた。
凄まじいものを観たいなら、『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』を観るといい。
そして、映画の“共犯者”になった貴方には、“逃走経路”は存在しない。

取材:高橋アツシ

『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』公式サイト
シネマスコーレ公式サイト

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