シネマdeサンバ!Vol.5『女たちの都〜ワッゲンオッゲン〜』


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地域活性化ブームの昨今、ゆるキャラや、地域グルメ、街コンなどがメディアによって取り上げられていますが、本当の意味での活性化はまだまだ難しいようです。僕の住む田舎、埼玉県H市でもとてもかわいいゆるキャラが登場しましたが、最近では話題にのぼることも少なくなり、一過性のブームと共に消え去ってしまう予感がしています。本当の意味での地域活性化とは、やはり継続的に続いていくものでなければならず、その土地に定住する人々を確保することに他なりません。だけど、これがとても難しいんですよね。

過疎化、高齢化、少子化。今や東京以外の多くの地方都市が、この問題に直面しています。田舎にいても、職は無い、娯楽も無い、夢も無い。若者たちは、そんなお先真っ暗な田舎に見切りをつけ、都心に出ていってしまいます。つまるところ、若者の都心への流出を食い止めないことには、地方都市には次の世代に繋がっていく未来は無いのです。

今回紹介する作品は、地方都市が頭を抱えるこの問題にヒントを与えてくれる「街起こし映画」です。舞台は熊本県天草市牛深。かつて豪華絢爛な花街として栄えた天草は、現在衰退都市日本一となり、街全体が活気を失っています。現状を変えようとは思っているものの、口だけ達者で、仕事も無く酒を飲んでばかりの男たち。そんな男たちに愛想を尽かした女たちが「女」を武器に、街の活性化計画を推進していきます。

「元遊郭だった三浦屋を料亭に!」天草の女たちのプロジェクトが動き始め、全国から芸者候補の女たちが続々と集まります。三浦屋を中心に衰退都市日本一の天草は少しずつ活気を取り戻していきますが、輝き出す女たちの前には数々の障壁が・・・。jaijai_sub
苦しみながらも、果敢に障壁を乗り越えていく天草の女たち。そんな天草の女たちが歯を食いしばって頑張る姿には、『大きな愛』が溢れています。

黒澤明監督の名作『生きる』は、主婦たちが役所に「子供たちが遊べる公園を作ってくれ!」と押し掛けるシーンで始まります。『生きる』が公開されて約50年、『女たちの都』で「三浦屋をやらせてくれ!」と女たちが役所へ押し掛けるシーンに、僕は女性たちの普遍的な『愛』を感じました。「公園を作ってくれ!」と押し掛けた主婦たちも、「三浦屋をやらせてくれ!」と押し掛けた天草の女たちも、故郷の未来を担う若い世代のために闘っています。主人公の弓枝は、都心に出ていった娘の美香に言います。「お母さんは美香が帰ってきたくなる天草ば作ると」と。それが自分の夢であると。

この映画は上天草市生まれの福田智穂さんの企画から始まりました。福田さんは本作の試写会でこのように挨拶しています。「この映画は全国のお父さんお母さんに捧げる映画となっています!」
子供たちの未来を、自分が愛する故郷に作り出していきたい。そのためには自分たちが動き、子供たちに故郷で暮らせる場所を作ってあげなければならない。

今秋、天草の女たちの大きな愛で生まれた三浦屋に是非、遊びに行ってみませんか?天草の女たちは、最高のもてなしであなたの心を元気にしてくれます。そして、大きな愛で教えてくれます。愛する故郷には、ワッゲンオッゲン(天草弁で、お前の家、俺の家)が必ずあるということを。

シネマdeサンバ! ~映画の情熱届けます~ ライター 松尾 哲

『女たちの都〜ワッゲンオッゲン〜』
大竹しのぶ主演! 松田美由紀、杉田かおる、西尾まりら豪華実力派俳優陣で送る社会派人情劇!
「男なんかそがんもんよ、原動力はオンナと金!」女たちの大きな愛がふたたび町と人生を輝かせる!

出演:大竹しのぶ 松田美由紀 杉田かおる 西尾まり ブラザートム 遠藤憲一 中村有志 長山藍子 他
監督・脚本:祷映 配給:映画24区、アルゴ・ピクチャーズ(C)2012「ワッゲンオッゲン」製作委員会
公式HP:www.jaijai-movie.com
2013年秋シネスイッチ銀座にてロードショー

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