タイムマシンの一種かも知れない『フラッシュバックメモリーズ3D』体験記



『フラッシュバックメモリーズ3D』
タイトルが示す通り3D映画である。この映画、驚くなかれ自主製作なのだ。
インディーズ映画なのに、3D作品…その必然性は、体験した者だけが痛感できる。

「事故のこと、中々受け入れることが出来なかったんですが…この映画が完成して東京国際映画祭で観た時に、『もう事故前の自分を追っかけることはしなくてもいいんだな』と思ったんです」出演者のディジュリドゥアーティスト・GOMA氏は、そう語った。

『フラッシュバックメモリーズ3D』は、“鑑賞する”と言うより“体験する”作品である。

シネマスコーレ。この作品を上映する名古屋のミニシアターである。2D上映ではない、驚くなかれ3D上映なのだ。ミニシアターなのに、3D上映…しかも1/19の公開日、日本で一番早く上映した映画館なのである。2013/1/22 18:35の回に執り行われた舞台挨拶は、平日と言うのに完売札止となった。(画像左より・、直井卓俊氏・高根順次氏・GOMA氏・松江哲明監督・シネマスコーレスタッフ坪井篤史氏)

「ちなみに、シネコンの最前列とシネマスコーレの一番後ろが、同じ距離です」
SPOTTED PRODUCTIONS代表・直井卓俊氏がそう言うと、観客は一斉に歓声を挙げた。51席は瞬く間に埋まり補助席の総動員でも足りず立ち見までしている者を含めれば90名余りが犇めき合っている空間は、シネコンでは最前列のシートとスクリーンの間に収まってしまうのだ。

「最初、松江監督からは怒られたんですよ。『公開予定を見たらシネマスコーレは“3D上映”になってますけど…なんですか、これ!!』って」劇場スタッフ坪井篤史氏の口調には、想像を絶する紆余曲折が在ったことが滲んでいる。

「怖かったんですよ!若松孝二監督が創ったインディーズの聖地を、僕の作品で壊しちゃったらどうしよう…って…。とにかく、ミニシアターと言う環境で3D上映してもらったことが嬉しいです。あんまり客観的に観れないですね…済みません、お客です、今日は」松江哲明監督の声は、震えていた。

「松江監督から最初に話を聞いた時は、『なに言ってんだろう、このヒト?』と思いました(笑)“3D 安い”でグーグル検索することから始まった映画ですが、今考えるとこの劇場で公開するために生まれた作品なんだと思います」高根順次プロデューサーの言葉は、観衆の心とシンクロした。

天才・松江哲明が編みだした全く新たな3D手法は、革命どころか“発明”と称されるべき方法論だ。3D映像とは平面に奥行きを持たせる手段と思っていたが、なんと松江監督は映像に“時間”を刻みつけてしまった。同一の画面に異なる時間軸が存在する摩訶不思議な映像体験は、劇場で味わってもらうより他ない。観客はGOMA氏が刻む時間を追体験することとなる。そして、追っていたはずの時間軸が異なる時空へ遷り変るのを体感する。

「今回これを上映していただく為に3Dシステムを導入してくださったと聞いて、まずそれにお礼を言いたいです。ありがとうございます。凄いリスクを背負ってのことでしょうし、3Dかどうかで作品の伝わり方は全く違ってくると思うので、この映画を多くの皆さんに届けようとしてくださってる気持ちにお礼を言いたかったんです。本当にありがとうございます」GOMA氏の言葉に、満員の観客席から自然と拍手が沸き起こった。

自主製作なのに、3D作品…ミニシアターなのに、3D上映…
二つの“なのに”が手を取り合った時、この全く新しい3D映画は翼を持った。
三次元映像が四次元の扉を開く瞬間に、現在を生きる私達は立ち会うことができる。

2013年1月22日シネマスコーレ 取材・文 高橋アツシ

『フラッシュバックメモリーズ3D』 (第25回東京国際映画祭コンペティション部門 観客賞)
キャスト:GOMA 辻コースケ 田鹿健太 椎野恭一 監督:松江哲明
【ストーリー】
事故で記憶に障害を負ったディジュリドゥアーティストのGOMAが、リハビリを経て復活するまでの過程を追ったドキュメンタリー。首都高速で追突事故に遭い、「記憶の一部が消えてしまう」「新しいことを覚えづらくなる」といった後遺症に悩まされる。後にMTBI(軽度外傷性脳損傷)と診断され、一時はディジュリドゥが楽器であることすらわからないほど記憶を失うこともあった。リハビリ期間を経て再びステージに上がる姿を、GOMAと妻すみえの日記を交えて振り返る。突然異なる映像が頭の中に飛び込んでくる症状「フラッシュバック」をアニメーションで表現している。

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