『カメ止め』上田慎一郎監督ら最新作、ワールド・プレミア上映に喜び!『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019』



『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019』が開幕。オープニング・セレモニーには審査委員長の三池崇史監督、荻上直子監督をはじめ、審査員やノミネート作品の監督らが登壇した。(2019年7月13日 SKIPシティ)

若手映像クリエイターの登竜門として名高い本映画祭は、『孤狼の血』『凪待ち』の白石和彌監督、『湯を沸かすほどの熱い愛』『長いお別れ』の中野量太監督、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督など、日本映画界にかかせない監督たちを世に送り出している。

「国際コンペティション」(審査委員長、三池崇史監督)と、長編・短編部門に分かれる「国内コンペティション」(審査委員長、荻上直子監督)の二部門3カテゴリーの上映を中心に、特集上映など様々なプログラムにて行われる。

8月16日の全国公開に先駆け、ワールド・プレミアとなる『イソップの思うツボ』がオープニング上映を飾り、石川瑠華、井桁弘恵、紅甘、斉藤陽一郎、佐伯日菜子、浅沼直也監督、上田慎一郎監督、中泉裕矢監督が舞台挨拶に登壇した。

本作は、2018年に一大ムーブメントを巻き起こした『カメラを止めるな!』の上田監督のオリジナル脚本であり、トリプル監督で構成されている。上田監督とともにメガホンを握るのは、『カメラを止めるな!』の助監督でスピンオフ版の監督を務めた中泉裕矢。同作でスチールを担当した浅沼直也の2人。今回も繰り広げられる劇中の仕掛けに、驚きと快感が約束されている。

2012年に本映画祭で出会った3人の監督が、オープニング作品を手掛けられたことも相まって、最高の場所での初上映に興奮のようす。浅沼監督は「2012年に出会い、色んな企画を一緒に行ってきて、今やマブダチになったなって気がしますね」と絆の深さを語った。

しかし上田監督が「2012年は仲良くはなっていないんです。2015年に『4/猫-ねこぶんのよん-』というオムニバスの4本の短編映画を撮って、ちょっと仲良くなったんです。その後、冗談半分で1本の作品を3人で監督しようという話になったんです」と経緯を吐露。

また、2年に渡り企画が固まらなかったそうで「2年間はお互いを理解する時間として、互いの作品を観たり、互いの好きな作品を観た合ったりしていた。長い夏休みだったような気がしています」と撮影に至るまでに時間がかかった理由を浅沼監督が説明した。

トリプル監督による演出に対して、井桁は「シーンごとに監督が違うこともあったので、分からないことをどなたに聞けばいいかを相談していた」と戸惑いがあったようす。石川も「シーンごとに監督が違って。最後のシーンで……」と言いかけると、間髪入れず「気をつけて!これから上映だから!」と上田監督がネタバレを阻止する一幕も。

劇中では3つの家族が登場するが、上田監督は「家族ごとに担当監督をざっくり決めて、交わるシーンでは都度話し合いで担当していた。1つのシーンの中で共に監督をすることもあった」と明かしたが、紅甘から「監督が3人いるんですけど、もはや1人もいない」と迷言が飛び出し、キャスト陣も思わず爆笑。

佐伯は、撮影現場で監督同士がもめるのではないかと心配していたそうで「すごくいいチームワークをされていた」と振り返り、「撮影が9日間だったので、もめている余裕がなかったですね。(企画の)2年間がもめにもめていたので(笑)」と上田監督は笑いを交えながらコメント。

ヒロインとなる3人の話題になり、中泉監督は紅甘のことを「喋ると個性的でワードのセンスがある。ご本人よりも映像の役のほうが可愛いと思う。より魅力的に撮れた」と話し、佐伯も「独特の輝きかたをされる方」と絶賛。

石川については「無邪気なあどけない少女に見えると思うんですけど、(劇中では)色んな表情を見せられるし、オーディションの時に、何を考えているかわからない色気に惹かれた」と上田監督は抜てき理由を述べた。浅沼監督は井桁のことを「太陽ですね。太陽って、自分の明るさに無自覚で」と明るいイメージが役にマッチしていたと語った。

共同監督で映画を作るという異例の手法について反対の声もあがったようで、「世界的にもほとんど例を見ないことなので、周りの大人からも“絶対上手くいかないよ、やめておけ”と言われたんですけど、やめておけと言われたら言われるほどやってみたくなってチャレンジした」と上田監督らしさが垣間見える発言。

さらには「今の時点で作れて良かったと思う瞬間が撮影中にあって。そう思えたのが嬉しかったです。リラックスして観てくださいと言いたいところですが、序盤からいろんな仕掛けがあるので、前のめりになって楽しんでいただければと思います」と期待をあおりながら自信ものぞかせた。

取材・撮影 南野こずえ

『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019』(第16回)
会期:2019年7月13日(土)~7月21日(日)
会場:SKIPシティ映像ホール/多目的ホールほか

『イソップの思うツボ』
配給:アスミック・エース
©埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
8月16日(金)より全国ロードショー

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