本気な闇鍋をやっちゃった、女子高生たち『暗黒女子』レビュー



セレブ女子高・マドンナの死・オンナ同士の裏切り。
“あるある”な展開と思わずにはいられない。が、さらなる裏があるある。

「ごきげんよう」
上品な挨拶が交わされる聖母マリア女子高等学院は、見るからにセレブな高校。そして、全校生徒の憧れの的であり、学院経営者の娘という典型的な才色兼備はやはり存在してくれる。彼女の名は、白石いつみ。だが物語は煌びやかな花園ではなく、暗闇からはじまる。

闇で鍋を囲む、4人。正式名称は「文学サークル 定例闇鍋朗読会」であり、彼女たちは白石いつみが主宰する文学サークルの部員。いつみが太陽ならば、逆の存在も欠かせないだろう。親友であり、月と呼ぶべき澄川小百合が闇鍋を進行する。

いつみは……この会にはいない。校舎の屋上から謎の死を遂げてしまったからである。
さらには、文学サークル部員の誰かが彼女を殺したという噂が流れ、この闇鍋は真相を明らかにするための、ドロドロと煮えたぎった朗読会。部員たちが想像する「いつみの死」を朗読し、文学少女たちが放つ言葉の魔術によって、それぞれを犯人に“仕立て”上げていく――。

学院のマドンナ・白石いつみを演じるのは、モデルから女優への道を歩きはじめた飯豊まりえ。W主演である澄川小百合役には、ドラマからバラエティまで幅広い活動が支持された、清水富美加。明るく元気はつらつなイメージを封印し、物静かで陰のある人物像は、新たな可能性を魅せてくれた。

文学サークル部員には、作家(清野菜名)、留学生(玉城ティナ)、料理好き(小島梨里杏)、貧乏な特待生(平祐奈)と若手女優が怪しいワードで名を連ねるが、秘密の花園に匂う影はまだ必要だ。文学サークルの顧問・北条先生(千葉雄大)が一輪の花となる。いつみの裏の顔と共に明かされる展開に、観る者すべてが騙されるだろう。

暗闇にいると目が慣れ、なんとなく見えてくる経験は誰もがあるはず。本作を例えるならその感覚であり、慣れによる思い込みは時には恐ろしいもの。また、原作・秋吉理香子による小説は、嫌な気分になるがクセになる魅惑のミステリー『イヤミス』と呼ばれており、裏を返せば「やめたいのにやめられない」、「人の不幸は蜜の味」とも捉えられる。

弱みを握ることで操り人形を欲し、人間は欲深い生き物だと語らんばかりに消えない罪と対になっていくが、本作で「暗黒」が意味するものは闇の中で催される鍋であり、部員それぞれの心の闇……いわば苦しみ。

真犯人の闇こそ、漆黒なのかもしれない。

『暗黒女子』
4月1日(土) 嘘つきroadshow
©2017「暗黒女子」製作委員会 ©秋吉理香子/双葉社

文・南野こずえ

記事が気に入ったらいいね !
最新情報をお届け!

最新情報をTwitter で