映画の上映や芝居の上演が取りやめになることを、“お蔵入り”と称する。
日の目を見ずに終わることを蔵にしまいこむさまに譬えた粋な日本語表現だが、“お蔵入り”の語源には異説があるのをご存知だろうか。
公演最終日の千秋楽の“楽(らく)”を倒語にして、中止となった興行のことを“くら”と表現した梨園用語を起源としているという説だ。
“お暗”と表記する文献もあること、“ネタ”などと同様に倒語が広く流行していた江戸時代に定着したとされることを考え合わせると、この“お蔵=歌舞伎用語説”にも中々の説得力を感じざるを得ない。もしこちらの説が真実ならば、“おくら”“お暗”に“お蔵”の字を当てた人のセンスは称賛に値すると思う。

芸術分野に限らず恐らく全ての表現の世界では、この“お蔵入り”なる状況が避けられない。表現芸術の集積ともいえる映画であれば、尚のことである。
「公開の目処が全く立っていない」作品、「お蔵入りして何年も経っている」作品を公開し、謂わば“不良債権”と化しつつある不遇な映画に光を当てるのを主旨とした映画祭が、広島県尾道市、福山市で開催されていた。その名も【お蔵出し映画祭】という。日本映画は年間400本前後が公開されているが、一般公開されていない作品、即ち“お蔵入り映画”も少なくないのである。
『しあわせカモン』(監督:中村大哉/2009年/118分)『いのちの林檎』(監督:藤澤勇夫/2012年/115分)『朽ちた手押し車』(監督:島宏/1984年/134分)『スイートハート・チョコレート』(監督:篠原哲雄/2012年/105分/中国,日本)など、映画祭の受賞を切っ掛けに“お蔵出し”、即ち一般公開に漕ぎつけた作品も数多く存在する。

そんな【お蔵出し映画祭】の2015年でグランプリと観客賞をW受賞した『トマトのしずく』(監督:榊英雄/2012年/91分)が、全国の劇場で公開中だ。4年余り“お蔵入り”していた映画が、ようやく日の目を見たのだ。
2017年1月21日、名演小劇場(名古屋市 東区)には榊英雄監督が舞台挨拶に訪れた。名演小劇場のスクリーン1(105席)は、お蔵出しを待っていた多くの映画ファンが席を埋めた。

『トマトのしずく』ストーリー:
真(吉沢悠)とさくら(小西真奈美)は、夫婦でヘアサロンを営んでいる。結婚パーティを間近に控え幸せ一杯だが、出席者のことを考えると真は気が重い。さくらは父とずっと疎遠にしていて、パーティにも頑として呼ばないと言うのだ。
さくらの父・辰夫(石橋蓮司)もまた、悩んでいた。長い間絶縁状態である娘と結婚を機に仲直りしたいと決めたものの、自分の気持ちを素直に伝えられない。そんな父が想いを託したのは、自ら収穫したトマトだった。
亡き母が遺した家庭菜園で、父が丹精込めて育てたトマトは、娘との親子の絆を取り戻してくれるのだろうか――。

MC. 監督は、俳優さんであり、プロデューサーであり、いつもお忙しいですよね
榊英雄監督 自分がやりたくて監督業なり、プロデューサーなり、妻(榊いずみ)が音楽をやっていますのでツアーの時は僕が物販を売ったりギターを運んだり運転したりして……だから、名古屋も年に2回くらいは子供連れでツアーで来たりしています。映画を観ていただくと、子供もどこかにいるかも知れません(笑)。
MC. 奥様も、『トマトのしずく』で……
榊監督 はい、主題歌を歌っています。
MC. 監督は、メ~テレの『まかない荘』(2016年)の演出も担当されていますね?
榊監督 去年、ご飯ものでちょっとほっこりした家族のドラマを作ろうと企画したのがメ~テレの深夜ドラマ『まかない荘』でした。おかげさまで評判もよく、また作れればと思っています。撮影の合間に僕の亡くなった父の兄弟など親戚と何十年かぶりに会う機会をもらったんです。話を伺うと、僕の父は円頓寺(えんどうじ)商店街の床屋さんで修行していたことがあったそうです。親戚は今も愛知に住んでいますし、名古屋、愛知には縁があるんですよね。『トマトのしずく』も、僕と親父の関係を、娘と父親の関係にして書いた脚本がベースになっているんです。
MC. 脚本には、監督のお父様への想いが詰まっているんですね?
榊監督 もう亡くなって7、8年になるんですが、娘を……父にとっては孫を抱っこしてもらいたくて電話した時、ちょっとした諍いで口喧嘩しちゃいまして……「二度と会わないよ、バカヤロー!」ってガチャッて切ったら、それが最期になってしまったんですよ。それがずっと澱(おり)のように残っていました。その後に『誘拐ラプソディ』(2009年/111分)を撮っている時もその電話の応対が心の中に残っていたりしていたので、脚本を書く時に想いを込めたんですね。劇中、父と娘の関係性において大事なツールというかキーワードがあるんですけど、それは僕にとっての思い出でもあるんです。

MC. 脚本を書かれたのは……
榊監督 2010年です。
MC. 今はもう2017年ですよね?
榊監督 温めすぎましてですね(笑)……『トマトのしずく』の撮影は終わったんですけど、トラブルがあって権利の処理がバラバラになってしまいまして、それを僕が100%の権利者になるべく一つずつ解決するのに数年掛かったんですね。そして、【お蔵出し映画祭】2015年に参加させていただいてグランプリと観客賞をW受賞いただきまして……宣伝費のご協力と映画の公開に対してのアシストがグランプリの特典だったんです。僕も『捨てがたき人々』(2012年/123分/R18+)や『木屋町DARUMA』(2014年/116分/R15+)や色々な作品をやる中で宣伝活動する時間も無く、けれど『トマトのしずく』は100%自分でやらなければいけない作品だったので。そんな色々な切っ掛けやタイミングがあっての2017年です。映画の一般的な流れとしては、2010年に撮れば大体2011年には公開なんですよ。でも、この7年があったのは僕にとっては凄く良いことで、2010年に撮った自分の視点と今の2017年になった僕の視点は全然違うので。映画を二度楽しめるということと、青いトマトが赤く成熟するようにこの映画には7年くらいの時間が必要だったのかなと思います。公開までの苦労がようやく報われた訳ですが、とはいえ映画の中身と事情は関係ないですからね。
MC. 旬なネタを扱った作品ではなく普遍的な家族の物語なので、時間が経っても色褪せないですもんね
榊監督 元々僕は家族的な映画を撮りたくて、自主映画ではずっとそんな作品ばかりだったんですよ。逆に『捨てがたき人々』や『木屋町DARUMA』は、かなりハードな­作品で僕の中では初挑戦だったので、そういうイメージで見られてる中で『トマトのしずく』が公開されて「どうしたの、榊くん?」って言われたりしたんですが(笑)……元々僕は小津安二郎監督が大好きで、『秋刀魚の味』(1962年/113分)がベストワンなんです。

MC. 主人公がさくら(小西真奈美)さんということもあってか、桜並木が一杯出てきます。撮影時期を合わせるのは大変だったんじゃないですか?
榊監督 凄くタイトでした(笑)。もう、開花予報と満開予報をスタッフと首っ引きでした。ロケ地は東京の目黒川沿いの桜並木なんで大体3月末から4月上旬なんですが、それが1週間ずれるかどうかはその季節によって違うので……今回は運よくスケジュールがバッチリ合いました。桜は『誘拐ラプソディ』でも撮ってますし、好きな被写体なんです。
MC. 桜と、あとトマトがお好きですか?
榊監督 トマトは、元々は苦手でしたけど……今は好きです(笑)。
MC. 出演者の方々も素晴らしいです。小西さん、吉沢(悠)さん、そして何より石橋蓮司さんが
榊監督 蓮司さんは素晴らしい俳優さんで大先輩です。個人的な話なんですが、10年前の僕の結婚パーティで最後の締めの挨拶を蓮司さんがやってくれたんです。僕の父と蓮司さんは同い年なので、東京のお父さんみたいな感じなんです。ただ、現場ではこてんぱんにやられました(笑)。「“こういう風な芝居”と言われても分からない。ちゃんとお前がどういう想いでやりたいのか、説明しろ!」「“そこで、ただ歩け、座れ”って、お前……俺らは人間なんだよ、バカヤロー」そんな禅問答みたいな、まさに父が息子を鍛えるかのような(笑)。当時、蓮司さんは60代後半、僕は30代後半で、人間に対しての洞察や物事に対しての感覚を凄く学ばせてもらいました。そんな簡単に人間を切り取れるものではない、と。この映画は、撮影が全部終わった後、もうちょっと良くするために追撮(追加撮影)したことがあったんです。2011年に撮影は終了したんですけど、権利問題で苦しむ中でどんどん自分自身が見えてくるところがあって、ただでさえ大変なのにもう一回予算を集めて追撮をして完成させたんです。どの場面かは分からないと思いますが、ただ映画が終わってエンドロールが流れても劇場が明るくなるまで『トマトのしずく』は観ていただきたいと思います。観た後に誰かの顔が思い出せれば、映画を作った意味があると思っています。

諸般の事情なるモノで日の目を見ずに終わるのは余りに勿体ないと心から思える映画なので、目の肥えた映画ファンにこそ確かめて頂きたい。【お蔵出し映画祭】グランプリ・観客賞のW受賞は、伊達ではないのだ。
2015年を最後に【お蔵出し映画祭】は休止中なので、『トマトのしずく』は“お蔵出しの暗の暗”である。名演小劇場『トマトのしずく』の“暗日”は2月3日なので、御観逃しなきよう。
観客の眼さえ暗くならなければ、日本映画界もまだまだ捨てたものではない。

取材・文:高橋アツシ

© 2012ファミリーツリー­

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お蔵で成熟した果実『トマトのしずく』鑑賞記http://eigairo.com/wp-content/uploads/2017/01/1130213-600x401.jpghttp://eigairo.com/wp-content/uploads/2017/01/1130213-200x150.jpgシネマカラーズシネマな名古屋お蔵出し映画祭,トマトのしずく,吉沢悠,名演小劇場,小西真奈美,榊英雄,石橋蓮司,高橋アツシ映画の上映や芝居の上演が取りやめになることを、“お蔵入り”と称する。 日の目を見ずに終わることを蔵にしまいこむさまに譬えた粋な日本語表現だが、“お蔵入り”の語源には異説があるのをご存知だろうか。 公演最終日の千秋楽の“楽(らく)”を倒語にして、中止となった興行のことを“くら”と表現した梨園用語を起源としているという説だ。 “お暗”と表記する文献もあること、“ネタ”などと同様に倒語が広く流行していた江戸時代に定着したとされることを考え合わせると、この“お蔵=歌舞伎用語説”にも中々の説得力を感じざるを得ない。もしこちらの説が真実ならば、“おくら”“お暗”に“お蔵”の字を当てた人のセンスは称賛に値すると思う。芸術分野に限らず恐らく全ての表現の世界では、この“お蔵入り”なる状況が避けられない。表現芸術の集積ともいえる映画であれば、尚のことである。 「公開の目処が全く立っていない」作品、「お蔵入りして何年も経っている」作品を公開し、謂わば“不良債権”と化しつつある不遇な映画に光を当てるのを主旨とした映画祭が、広島県尾道市、福山市で開催されていた。その名も【お蔵出し映画祭】という。日本映画は年間400本前後が公開されているが、一般公開されていない作品、即ち“お蔵入り映画”も少なくないのである。 『しあわせカモン』(監督:中村大哉/2009年/118分)『いのちの林檎』(監督:藤澤勇夫/2012年/115分)『朽ちた手押し車』(監督:島宏/1984年/134分)『スイートハート・チョコレート』(監督:篠原哲雄/2012年/105分/中国,日本)など、映画祭の受賞を切っ掛けに“お蔵出し”、即ち一般公開に漕ぎつけた作品も数多く存在する。そんな【お蔵出し映画祭】の2015年でグランプリと観客賞をW受賞した『トマトのしずく』(監督:榊英雄/2012年/91分)が、全国の劇場で公開中だ。4年余り“お蔵入り”していた映画が、ようやく日の目を見たのだ。 2017年1月21日、名演小劇場(名古屋市 東区)には榊英雄監督が舞台挨拶に訪れた。名演小劇場のスクリーン1(105席)は、お蔵出しを待っていた多くの映画ファンが席を埋めた。『トマトのしずく』ストーリー: 真(吉沢悠)とさくら(小西真奈美)は、夫婦でヘアサロンを営んでいる。結婚パーティを間近に控え幸せ一杯だが、出席者のことを考えると真は気が重い。さくらは父とずっと疎遠にしていて、パーティにも頑として呼ばないと言うのだ。 さくらの父・辰夫(石橋蓮司)もまた、悩んでいた。長い間絶縁状態である娘と結婚を機に仲直りしたいと決めたものの、自分の気持ちを素直に伝えられない。そんな父が想いを託したのは、自ら収穫したトマトだった。 亡き母が遺した家庭菜園で、父が丹精込めて育てたトマトは、娘との親子の絆を取り戻してくれるのだろうか――。MC. 監督は、俳優さんであり、プロデューサーであり、いつもお忙しいですよね 榊英雄監督 自分がやりたくて監督業なり、プロデューサーなり、妻(榊いずみ)が音楽をやっていますのでツアーの時は僕が物販を売ったりギターを運んだり運転したりして……だから、名古屋も年に2回くらいは子供連れでツアーで来たりしています。映画を観ていただくと、子供もどこかにいるかも知れません(笑)。 MC. 奥様も、『トマトのしずく』で…… 榊監督 はい、主題歌を歌っています。 MC. 監督は、メ~テレの『まかない荘』(2016年)の演出も担当されていますね? 榊監督 去年、ご飯ものでちょっとほっこりした家族のドラマを作ろうと企画したのがメ~テレの深夜ドラマ『まかない荘』でした。おかげさまで評判もよく、また作れればと思っています。撮影の合間に僕の亡くなった父の兄弟など親戚と何十年かぶりに会う機会をもらったんです。話を伺うと、僕の父は円頓寺(えんどうじ)商店街の床屋さんで修行していたことがあったそうです。親戚は今も愛知に住んでいますし、名古屋、愛知には縁があるんですよね。『トマトのしずく』も、僕と親父の関係を、娘と父親の関係にして書いた脚本がベースになっているんです。 MC. 脚本には、監督のお父様への想いが詰まっているんですね? 榊監督 もう亡くなって7、8年になるんですが、娘を……父にとっては孫を抱っこしてもらいたくて電話した時、ちょっとした諍いで口喧嘩しちゃいまして……「二度と会わないよ、バカヤロー!」ってガチャッて切ったら、それが最期になってしまったんですよ。それがずっと澱(おり)のように残っていました。その後に『誘拐ラプソディ』(2009年/111分)を撮っている時もその電話の応対が心の中に残っていたりしていたので、脚本を書く時に想いを込めたんですね。劇中、父と娘の関係性において大事なツールというかキーワードがあるんですけど、それは僕にとっての思い出でもあるんです。MC. 脚本を書かれたのは…… 榊監督 2010年です。 MC. 今はもう2017年ですよね? 榊監督 温めすぎましてですね(笑)……『トマトのしずく』の撮影は終わったんですけど、トラブルがあって権利の処理がバラバラになってしまいまして、それを僕が100%の権利者になるべく一つずつ解決するのに数年掛かったんですね。そして、【お蔵出し映画祭】2015年に参加させていただいてグランプリと観客賞をW受賞いただきまして……宣伝費のご協力と映画の公開に対してのアシストがグランプリの特典だったんです。僕も『捨てがたき人々』(2012年/123分/R18+)や『木屋町DARUMA』(2014年/116分/R15+)や色々な作品をやる中で宣伝活動する時間も無く、けれど『トマトのしずく』は100%自分でやらなければいけない作品だったので。そんな色々な切っ掛けやタイミングがあっての2017年です。映画の一般的な流れとしては、2010年に撮れば大体2011年には公開なんですよ。でも、この7年があったのは僕にとっては凄く良いことで、2010年に撮った自分の視点と今の2017年になった僕の視点は全然違うので。映画を二度楽しめるということと、青いトマトが赤く成熟するようにこの映画には7年くらいの時間が必要だったのかなと思います。公開までの苦労がようやく報われた訳ですが、とはいえ映画の中身と事情は関係ないですからね。 MC. 旬なネタを扱った作品ではなく普遍的な家族の物語なので、時間が経っても色褪せないですもんね 榊監督 元々僕は家族的な映画を撮りたくて、自主映画ではずっとそんな作品ばかりだったんですよ。逆に『捨てがたき人々』や『木屋町DARUMA』は、かなりハードな­作品で僕の中では初挑戦だったので、そういうイメージで見られてる中で『トマトのしずく』が公開されて「どうしたの、榊くん?」って言われたりしたんですが(笑)……元々僕は小津安二郎監督が大好きで、『秋刀魚の味』(1962年/113分)がベストワンなんです。MC. 主人公がさくら(小西真奈美)さんということもあってか、桜並木が一杯出てきます。撮影時期を合わせるのは大変だったんじゃないですか? 榊監督 凄くタイトでした(笑)。もう、開花予報と満開予報をスタッフと首っ引きでした。ロケ地は東京の目黒川沿いの桜並木なんで大体3月末から4月上旬なんですが、それが1週間ずれるかどうかはその季節によって違うので……今回は運よくスケジュールがバッチリ合いました。桜は『誘拐ラプソディ』でも撮ってますし、好きな被写体なんです。 MC. 桜と、あとトマトがお好きですか? 榊監督 トマトは、元々は苦手でしたけど……今は好きです(笑)。 MC. 出演者の方々も素晴らしいです。小西さん、吉沢(悠)さん、そして何より石橋蓮司さんが 榊監督 蓮司さんは素晴らしい俳優さんで大先輩です。個人的な話なんですが、10年前の僕の結婚パーティで最後の締めの挨拶を蓮司さんがやってくれたんです。僕の父と蓮司さんは同い年なので、東京のお父さんみたいな感じなんです。ただ、現場ではこてんぱんにやられました(笑)。「“こういう風な芝居”と言われても分からない。ちゃんとお前がどういう想いでやりたいのか、説明しろ!」「“そこで、ただ歩け、座れ”って、お前……俺らは人間なんだよ、バカヤロー」そんな禅問答みたいな、まさに父が息子を鍛えるかのような(笑)。当時、蓮司さんは60代後半、僕は30代後半で、人間に対しての洞察や物事に対しての感覚を凄く学ばせてもらいました。そんな簡単に人間を切り取れるものではない、と。この映画は、撮影が全部終わった後、もうちょっと良くするために追撮(追加撮影)したことがあったんです。2011年に撮影は終了したんですけど、権利問題で苦しむ中でどんどん自分自身が見えてくるところがあって、ただでさえ大変なのにもう一回予算を集めて追撮をして完成させたんです。どの場面かは分からないと思いますが、ただ映画が終わってエンドロールが流れても劇場が明るくなるまで『トマトのしずく』は観ていただきたいと思います。観た後に誰かの顔が思い出せれば、映画を作った意味があると思っています。諸般の事情なるモノで日の目を見ずに終わるのは余りに勿体ないと心から思える映画なので、目の肥えた映画ファンにこそ確かめて頂きたい。【お蔵出し映画祭】グランプリ・観客賞のW受賞は、伊達ではないのだ。 2015年を最後に【お蔵出し映画祭】は休止中なので、『トマトのしずく』は“お蔵出しの暗の暗”である。名演小劇場『トマトのしずく』の“暗日”は2月3日なので、御観逃しなきよう。 観客の眼さえ暗くならなければ、日本映画界もまだまだ捨てたものではない。 取材・文:高橋アツシ © 2012ファミリーツリー­シネマから、はじめよう。