『牝猫たち』白石和彌監督【ROMAN PORNO REBOOT】を語る


_11205572016年11月【日活ロマンポルノ】は45周年を迎え、【ROMAN PORNO REBOOT(ロマンポルノ・リブート 略称“RPR”)】が遂にベールの一部を脱いだ。
【ROMAN PORNO REBOOT】とは、当時の撮影ルールに倣い
・上映時間80分前後
・10分に1回の濡れ場
・製作費は、全作品一律
・撮影期間は、1週間
・完全オリジナル作品
・ロマンポルノ初監督
という6箇条の製作条件が“お約束”として掲げられた、【日活ロマンポルノ】レーベルが世に問う渾身の“再起動”企画である。
老若どころか男女を問わずロマンポルノなど“ピンク映画”が楽しまれるようになった近年、新世代の再起動プロジェクトに名乗りを挙げたのは、塩田明彦監督、白石和彌監督、園子温監督、中田秀夫監督、行定勲監督という豪華な面々。第一線で邦画を支える働き盛りのの5人が揃ったというのだから、今回の“表現の祭典”への期待は否が応にも高まってる。

2016年11月26日(土)【ROMAN PORNO REBOOT】第1弾として封切となった、行定勲監督『ジムノペディに乱れる』(83分/R18+)は、新宿武蔵野館(新宿区 新宿)で大勢の映画ファンに好評を以て迎えられた。
芦那すみれ(BOMI)・岡村いずみら裸のヒロイン達に翻弄される映画監督を板尾創路が飄々と演じ切り、“古典にして前衛”というロマンポルノが内包する魅力を余すことなく伝える、新時代の看板作品となった。

12月17日からは、“RPR”第2弾として塩田明彦監督『風に濡れた女』(78分/R18+)が封切られる。
『風に濡れた女』ストーリー:
%e3%83%a1%e3%82%a4%e3%83%b3%e7%94%bb%e5%83%8f都会を離れ、山のバラック小屋で一人暮らし始めた高介(永岡佑)は、埠頭で野人のような美女・汐里(間宮夕貴)と出会う。剥き出しの感情をぶつけてくる汐里に付き纏われる内、高介は過去に棄てたはずの欲望を呼び起こされるのだが――。
スラップスティック劇と思わせて、オフビートな乾いた笑いが癖になる塩田監督の演出手腕が冴えわたる、“オトナのスクリューボール・コメディ”。熱い吐息で肌を撫でるような、きだしゅんすけの音楽も是非ご傾聴を。

そして2017年になると、1月14日からは白石和彌監督『牝猫たち』(84分/R18+)が公開される。
作品を鑑賞し、是非とも話を聞いてみたいと思った記者は、晩秋の名古屋で行われた合同記者会見に足を運んだ。

Q. 『牝猫たち』、出来は如何ですか?
白石和彌監督 撮るにあたって「ロマンポルノって何なんだ?」ということを考えました。“ポルノ”を突き詰めて考えた結果、インターネットを開けば誰でもエロ動画を観ることができる今、“人間をどう撮っていくか”だと思いました。とはいえ全くエロくないものを作るのも違うと考えましたが、女優陣が頑張ってくれたので、どちらの意味でも満足いくものになったと思っています。

Q. 『牝猫たち』は、どんなお客様に向けて撮られたんですか?
白石監督 かつての日活ロマンポルノは、直営館があり、プログラム・ピクチャーとして番組を埋めていくセグメントでした。それが1,100本ほどありますが、現在も閲覧出来る1割に満たないくらいの作品が“名作”と呼ばれています。日活の直営館がなくなった今の時代、単館系の映画館やシネコンで掛けて頂くことを念頭において、1本で成立する映画を目指しました。僕もロマンポルノが大好きなので、この仕事を頂いて色々な想いがありました。2000年代に入って、ユーロスペース(渋谷区 円山町)や新文芸坐(豊島区 東池袋)でリバイバル上映している時に、時間があれば観に行っていたのですが、どこかのタイミングで、若い方、女性の方が増えました。橋本愛さんが新橋ロマン劇場でロマンポルノを観ている姿が目撃されて、Tweetされており、「偉い!」と思いました(場内笑)。「若い人にとってはポルノじゃないんだ。芸術なんだ」と。そうやって客層が変わったことは大きくて、日活としてももう一度リブートする後押しになったと思います。昔のロマンポルノは「男たちを勃起させろ!」って作ってきたと思いますが、今回の作品は女性も観ることを意識して作りました。
ロマンポルノはプログラム・ピクチャーとしての役割はなくなっているので、僕なりに何か解釈しなきゃいけないとは思いました。性愛の“性”という字は、心が生きると書きます。“ロマン”とは、心を見ながら僕たちは生きていくという宣言なのかと考えました。人が生きていくことを思って、こういう話にしました。荒井晴彦さんには、「エロくない」と言われましたが(場内笑)。日活ロマンポルノは1971年から始まって、終焉が1988年です。74年生まれの僕は中学3年くらいです。僕はロマンポルノを3本立てで観た経験がありません。1,100本のうち観直せる1割弱をDVD等で観ましたが、今でこそ傑作と言われる作品は、当時は「エロくねえじゃん」と言われていたと思います。荒井さんにも「お前はロマンポルノが好きなんじゃなくて、田中登が好きなんだ」と言われたので、「そんなことないです、神代(辰巳)さんも好きです」と言うと、「それは皆、ロマンポルノじゃないんだ」と。荒井さんの言うロマンポルノは何かと聞くと、はっきり答えられませんでしたが、「3本立ての、箸にも棒にもかからない作品が、ロマンポルノなんだ」と仰ってました(場内笑)。でも、荒井さんが監督された映画を観ると、『身も心も』(監督・脚本/1997年/126分/R18+)にしても『共喰い』(脚本/2013年/102分/R15+)にしても『この国の空』(監督・脚本/2015年/130分)にしても、ロマンポルノでやりたかったことをやられているのかなと思います。

『牝猫たち』ストーリー:
%e3%82%b5%e3%83%96%e7%94%bb%e5%83%8f%e2%91%a0雅子(井端珠里)はネットカフェや常連客(郭智博)の部屋で泊まる、人気デリヘル嬢。同じデリヘルで働くシングルマザーの結依(真上さつき)、不妊症に悩む里枝(美知枝)とはお互い本名すら知らないが、池袋の夜を共有する“戦友”として心を通わせている。無責任な店長(音尾琢真)、無節操な運転手(吉村界人)に悩まされながらも、夜の街の“牝猫たち”は逞しく、綽やかに、今日をくぐり抜けていく――。

Q. 製作条件が様々ありました。通常とは違った作り方だと思いますが、如何でしたか?
白石監督 『牝猫たちの夜』(1972年/68分)という田中登監督の映画があって、新宿のソープランドが舞台でした。その“外枠”だけ借りて、現代のデリヘルにしました。風俗嬢を登場人物にした時点で若干反則気味ですが、濡れ場に困ったらお客さんのところに行けばいいという計算もありました(笑)。ですから、“10分に1回の濡れ場”に苦しむことは無かったです。一番大変だったのは、日数でした。ロマンポルノも昔は1週間で撮ってない作品はあったと思いますので、ここは厳しかったです。10分に1回ということは7~80分で7~8回の濡れ場がある計算ですが、1週間は7日しかない。ということは、1日平均1回ちょっと絡みを撮ることになります。絡みは撮影に時間が掛かります。見えてはいけないところを前貼りしたり、体位をそれぞれ変えたり、シチュエーションも考えていくと、中々進みません。毎日違うシチュエーションで分散できるかというと、そういう訳にも行きません。だから最初の2日間は、絡みを撮りませんでした。「あれ、ポルノ撮ってるのかな?」という感じでした(場内笑)。3日目から怒涛のように毎日2回ずつくらい絡みを撮りました。計画的に脚本を書いたつもりでしたが、そうは行かず、「ああ、一日でこんなに撮らなきゃいけないんだ」というのが、初日、2日目と続いて、慣れてきた頃に、撮影が終わったという感じでした。

Q. この物語は、どんな着想があって出来たお話なんですか?
白石監督 田中登監督の『牝猫たちの夜』はソープランドの話ですが、デリヘルにすれば、ホテルだったり家だったりそれぞれお客さんの所に行くので、画変わりの点で上手くいくと思いました。今回の企画、恐らく僕は4番目でした。中田(秀夫『ホワイトリリー』)監督の映画と塩田(明彦『風に濡れた女』)監督の映画が完成して、園(子温『アンチポルノ』)監督が撮り終わって仕上げ中でした。日活からは、「現代的な要素を入れてほしい」というオーダーもありました。僕も実録映画を撮ることが多いですが、“映画にするには何か足りない”けれど僕の中で溜まっていた事件を一つずつ形を変えて、しかも主人公が3人のオムニバス形式のようにすれば撮りやすいという計算の元、こういった形にしました。

Q. 社会的なテーマが折り込まれてるんですけど、終盤に至るにつれ段々明るくなる雰囲気がありました。
白石監督 閉鎖的な世の中をちょっとずつ描きながらも、じゃあ皆暗い顔をして生きているかというと、そうでもない。今回の登場人物たちも劇的に立ち位置が変わる訳ではありませんが、それはそれで人生だし、暗く描く必要もないと思いました。あと、「ロマンポルノって、何?」と考えると、1,100本作って観返せるのが100本あるか無いか……打率でいうと1割ですが、プログラム・ピクチャーだからこそ暗い映画も出来たと思います。今は環境が違うので、1本1本勝負していくしかない中で、単純に暗い映画は無いと思いこういった形にしました。

白石監督が「女優陣が頑張ってくれた」と言う通り、3人のヒロインたち(井端珠里・真上さつき・美知枝)は、作品を彩るだけでなく、実に味わい深い“匂い”を放っている。

Q. 女優さんが素晴らしかったです。役者さんはオーディションで選ばれたんですか?
白石監督 井端(珠里)さんは、若松(孝二)さんに『17歳の風景少年は何を見たのか』(2005年/90分)で「誰か探してこい」と言われて、探してきたのが井端さんでした。1シーンだけでしたが凄く印象に残っており、折々どうしているか気にしていました。『断食芸人』(監督:足立正生/2016年/104分/R15+)に出演しているのを観て久しぶりにお願いしました。真上さつきさんは、オーディションの時から、中間が無いというか、芝居として駄目な時は駄目だけど、嵌まったら爆発する印象がありました。“結依”というキャラクターはこんな感じの女の子だろうなと思って賭けました。美知枝さんは、安定感が抜群でした。女優陣に関して言うと、寂しい人たちの話なので、おっぱいの大きくない人が良いというイメージがありました。大きすぎると、幸せそうに見えちゃうというか(場内大笑)。偏見ですね、すみません。

Q. 観客に女性を意識されてるという話でしたが、劇中の女性に強さを感じます。
白石監督 男性より女性の方が絶対生命力があると思うし、僕も女性が大好きなので女性に幸せになってもらいたいという思いがあります。『凶悪』(2013年/128分/R15+)も『日本で一番悪い奴ら』(2016年/135分/R15+)も男性が主人公ですが、女性が男性の下にいる描き方はしていません。自主映画で撮った『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(2010年/115分)は女性が主人公で、『牝猫たち』と姉妹のような作品で女性を強く描くのは一貫していると思います。あと思い返すと、強い人と付き合ってきたかなと思います(場内大笑)。

Q. SMクラブのマダム役で、白川和子さんが出ていますね。
白石監督 他の作品にSM要素が無かったので、どうせならそういうシーンをやっておこうかなと思いました。「監督、SMモノって凄くビデオが売れるんですよ!」とプロデューサーから言われたこともありました(場内笑)。気の狂ったシーンというか、変な空間も面白いなと思ったことと、リブートするなら白川さんというレジェンドの存在があっても良いかなと思ったので、『凶悪』に出ていただいた縁もありお願いしました。縛るシーンは、緊縛師のプロの方とSMの女王様に取材に行った時に、「縛られた跡を付けないで帰すのがプロなんだ」という話を聞きました。そうしたら、美知枝さんは肌が弱くて、翌日(縄目が)バッツリ残っていました(笑)!(場内大笑)1週間なので、そういう事態が回避できません。よく見ると、付いてはいけない跡が付いていたりしますが、それも含めて映画だと思います。

そんな“牝猫たち”を、確りと支えるのが、こちらも多彩な男優陣だ。彼ら無しでは、作品の豊かさは醸し出すことは出来なかった。

Q. 男性キャストのことも聞かせてください。音尾琢真さんが素晴らしかったですね。
_1120547白石監督 『日本で一番悪い奴ら』に続いて出てもらいましたが、音尾さんは高校の1学年下にいました。その縁もあり「白石監督の映画は、スケジュールさえ合えばオファーは絶対に受ける」と言ってくれているので、「ロマンポルノでも出るのかな?」と、若干忠誠心を試すような感じで(場内大笑)オファーしたら、脚本を読む前に本当に二つ返事でした。彼の存在感と【TEAM NACS】でやってきた人間力は、本当に流石だと思います。一役者として凄く良いパートナーであり尊敬できる存在でもあるし、何かあれば常に一緒にやりたいと思っています。女性3人が大事なのは当たり前ですが、この映画は男性が肝だと思い、人選は慎重に行いました。

Q. 郭(智博)さん、とろサーモンの村田(秀亮)さん、吉澤(健)さんは勿論なんですが、吉村界人さんと松永拓野さんという若手も素晴らしかったです。
白石監督 松永くんは『火花』(Netflixオリジナルドラマ/監督)のオーディションで僕が発見しました。『火花』を観てくれた人は「あの人、誰ですか?」って皆が言うくらい存在感があります。彼に関しても、タイミングさえ合えば必ずオファーしようと思っているくらい、僕の秘蔵っ子です。吉村界人は、2年くらい前にテレビ東京の深夜ドラマでオーディションに来ていて、その時は役の雰囲気と違って選びませんでしたが、凄く印象に残っていました。【オフィス作】という松田美由紀さんの事務所に所属していますが、美由紀さんのオーディションで選ばれている子はちょっと変わっています。吉村界人は、不器用で下手な時と上手い時の落差がありますが、嵌まった時の爆発力が凄いです。キャスティングをやってくれた方に「主役じゃないと使い切れないんじゃないですか?」と言われました。そういうタイプの役者です。
男性キャストといえば、子役は苦労しました。やはり、映画とはいえ日活ロマンポルノに出したがる親はいません。本当は2人兄弟の設定で、本当の兄弟が見つ付かりましたが、直前にインフルエンザで倒れてしまいました。

Q. 子役の子、劇中で“ガッパ”を持ってましたよね?
白石監督 子供2人って設定の時は一緒に遊ぶだろうということで必要ありませんでしたが、1人になったので持たせました。『シン・ゴジラ』の公開も控えていたので、ゴジラを持たせようかと思いましたが、「それは無理です」と断られました(笑)。その代わり、「日活には、ガッパがいます!」とプロデューサーに提案されました(場内大笑)。『ガッパ』(『大巨獣ガッパ』監督:野口晴康、橋本裕、林功/1967年/84分)を観直してみたら親子の話だったので、これはアリかなと思い使用しました。

白石監督が高らかに掲げた“心を見ながら生きていく”という旗印は、作品の中で“ロマン”という形で結実した。走りながら、歩きながら、転びながら、足掻きながら、死んだふりをしながら、人間は生きる。心の中に燻ぶる生への原動力を、人は少々鼻白みながらも称するのだ……浪漫、と。
そして、白石監督は『牝猫たち』のこぼれ話だけでなく、【ROMAN PORNO REBOOT】全般についても熱く語った。

Q. 物語の舞台に池袋を選ばれた理由を教えてください。
白石監督 僕が一番飲んだりする場所は新宿ですが、新宿も渋谷も雑多感が無くなって街が綺麗になってきました。僕が北海道から出てきた時に最初に住んだのは埼玉でしたが、バイトしながら池袋で遊んでいました。久しぶりに池袋に行ってみたら、まだ凄く雑多感が残っていたことが理由の一つです。あと、最初に行った風俗が池袋でした(笑)。

Q. 監督の師匠は若松孝二さんだと思うんですが、若松監督の作品をオマージュされなかったのは何故なんですか?
白石監督 若松さんはもちろん大好きですし、尊敬した上での話ですが、絡み、ド下手です(場内大笑)。僕も助監督をやらせてもらっていましたが、下手というか好きではありませんでした。仕事で撮らなきゃいけない時は、「ほら、やれ!ほら、撮れ!OK!」みたいな感じでした。荒井(晴彦)さんの話で、若松さんの監督で1本だけロマンポルノ買取(買い上げ)の作品があります。それが『濡れた賽ノ目』(1974年/72分)という作品で、荒井さんが脚本(出口出名義。出口出は数人の共同ネーム)を書いていました。『濡れた賽ノ目』の同時上映が『○秘色情めす市場』だったそうで、荒井さんは劇場に行って打ちのめされたそうです。若松さんには映画の撮り方を習ったというよりは、生き様やテーマの選び方、ケンカの仕方とか(場内笑)を学んだつもりでいます。あと行定(勲)さんの助監督も何本かやっているので、映画作りの実践でのアイデアの作り方は、行定さんからも学びました。

Q. 他の作品の監督と情報交換されてたんですか?
白石監督 僕らが直接というよりは、日活がネタ被りしないようにしていました。だから、他作品がどんなジャンルなのかは確認していました。中田監督はレズもので、園監督の作品は説明しても分からないと思います……みたいな(場内笑)。あと、撮影時期が近く、過去に助監督をやっていた行定さんからはよく電話が掛かってきました。

Q. 今回のロマンポルノ・リブートを撮るにあたっての意義は、何ですか?
白石監督 一番は、オリジナル作品であることです。今は「原作は何ですか?」と「誰が出るんですか?」でしか企画に判子を捺してもらえない状況が凄くあります。今回は、内容は一切問題になりませんでした。製作条件はありましたけど、そこさえクリアしてしまえば大丈夫でした。ただ、行定さんが、最初に書いたものはスカトロ要素のあるもので、「それは駄目だ」と言われたそうです(場内大笑)。その時は激昂して、夜中に何度も電話がありました。「スカトロものが駄目って言われた……日活、どうなってるんだ!これは、本当に美しい話なんだよ!」と(笑)。その話は2001年にWOWOWのドラマで助監督に入った時から言っていて、延々と企画が通らない(笑)。行定さん渾身の企画なので、「もう自主映画でやる!」と言っていました(笑)。

白石監督が“説明しても分からない”と言われた園子温監督『ANTIPORNO(アンチポルノ)』(78分/R18+)は、2017年1月28日(土)より公開となる。
『ANTIPORNO』ストーリー:
%e3%83%a1%e3%82%a4%e3%83%b3%e7%94%bb%e5%83%8f1黄色い床、青いベッド、黒いソファ、赤い個室……色の洪水のような部屋に、アバンギャルドなキャンバスが壁を埋め尽くす。部屋の主であるアーティスト・京子(冨手麻妙)に、今日も分刻みのスケジュールを伝えるマネージャー・典子(筒井真理子)。プロジェクターから映射される色褪せた動画は、“過去の悪夢”なのか、“舞台装置”なのか……京子の“世界”は、色彩だけでなく混沌も色濃くなっていく――。
自己否定と自己愛がぶつかり合い、実像と虚構が相食む――冨手麻妙が新人とは思えない美事な演技で、狂った部屋から出られない京子を演じ切る。彼女を支え、翻弄するのは、変幻自在の肉体言語で魅せる筒井真理子。『ANTIPORNO』とは、撮った作品が全て問題作となる“永遠の問題児”園子温が放つ、極彩色の過激作である。

そして、中田秀夫監督は、2017年2月11日(土)公開の『ホワイトリリー』(80分/R18+)で、同性愛ならぬ人間愛を描いてみせる。
『ホワイトリリー』ストーリー:
%e3%83%a1%e3%82%a4%e3%83%b3%e7%94%bb%e5%83%8f2結城はるか(飛鳥凛)は、女流陶芸家・乾登紀子(山口香緒里)の一番弟子として、住み込みで陶芸を学んでいる。公私に亘り登紀子に寄り添うはるか、そんな彼女らを周囲は訝しげに見るが、二人は過去に哀しくも深い絆で結ばれていた――。
ロマンポルノの現場を助監督として知る中田監督は、ホラー色を封印しつつ、肌を刺すスリリングな空気感で魅了する。そして、飛鳥凛のフレッシュな裸体が、山口香緒里の熟れた裸身が、甘美に、耽美に、観る者を酔わせる。

【ROMAN PORNO REBOOT】プロジェクト作品は全て、新宿武蔵野館を皮切りに随時全国公開となるので、是非とも御見観逃しなく。劇場での鑑賞体験こそが、ロマンポルノの醍醐味である。

常設館が姿を消し、一度は灯が消えるかと思われた【日活ロマンポルノ】は、新たな層を取り込みながら映画界で着実に生き続けている。
その新たな再出発の先陣を切った、塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫、行定勲、5人の映画監督のことを、映画ファンは決して忘れないであろう。
遠からぬ未来、彼らのことを“新生ロマンポルノ五福星”なんて称する日が来ないとも限らない――。

取材:高橋アツシ

©2016 日活
『ロマンポルノ・リブート・プロジェクト』公式サイト

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