だし くら なんきち、えいがさい『第3回知多半島映画祭』レポート
だし くら なんきち、えいがさい--『第3回 知多半島映画祭』レポート--
愛知県には2つの半島がある。西の尾張側に知多半島、東の三河側に渥美半島。
知多半島の港湾都市・半田市は、知多の行政の中心として発展し、様々な魅力で観光客を集めている。
半田の象徴と言えば、“だし くら なんきち あかれんが”…山車・蔵・(新美)南吉・赤レンガ(旧カブトビール工場)である。
2013年10月19日、そんな半田市で映画祭が開催された。その名も「知多半島映画祭」、今回で3回目を数える。 二部構成で行われるプログラムの第1部は、招待作品『桐島、部活やめるってよ』の上映。
出演者 松岡茉優さんのトークイベントが行われることもあって、会場のアイプラザ半田は生憎の雨天にも係わらず沢山の映画ファンが長蛇の列を作った。
トークMCは、映画パーソナリティの松岡ひとみさん。図らずも、“W松岡”のトークセッションとなった。
松岡茉優さん 「『桐島~』が(日本)アカデミー賞を獲ったことに関しては、あんまりまだ信じてないです(笑)『桐島』に出てた生徒たち、仲良いんですね。みんなでよく集まって御飯食べたりするんですけど、アカデミー賞獲った前と後でもそんなに変わらなくて…多分みんな、そんなに信じてないです(笑)」
『桐島、部活やめるってよ』は言わずもがな、『悪の教典』『はじまりのみち』『鈴木先生』『35歳の高校生』『斉藤さん2』、そしてそして『あまちゃん』…映画・ドラマとフィールドを選ばず好演し続ける若き才能は、今後バラエティでの活躍をも強く予感させられる驚愕のトーク名人であった。
松岡茉優さん 「撮影入ってから、みんな「僕たちは沢山見てるけど、初めて観た人わかるのかなぁ?」って言ってたんです。そしたら、武文役の前野(朋哉)くんが…「おーまた!」の…彼は映画監督でもある方なんですけど、「いや、これ映像にしたらわかるから」って。私たち前野くん以外は映像を見せてもらってなかったんで不安だったんですが、前野さんの一言で集中できました」
予定時間20分を大幅に越える大変楽しいトークにすっかり満足した観客だったが、ここで帰る訳にはいかない。休憩を挟んだ第2部は、短編作品の上映並びにコンペティション。言うなれば、午後からが映画祭のメインなのだ。しかも休憩時間も、“住みます芸人”シンポジウム・大迷惑・ハンダシオンのトークイベント、知多半島イメージキャラクター「知多娘。」から大府あかね(CV:守屋ユウさん)・広小路クララ(CV:社本悠さん)のトークライブが行われ、幕間を感じさせない運営に感心した。
コンペティション作品の制作者トーク、MCは青木やすよさんが担当。監督たちから様々な裏話を引き出してくれていた。
『恋する小説家』監督:上田慎一郎 主演:堀内紀臣 29分
上田監督「いくつか次の短編を考えてる時に中々いい案が思い付かなくて…実際に登場人物が飛び出して来てくれて色々アドバイスをくれたらいいなぁって思って、映画にしようと思い付きました。どうせだったら、女子高生がいいな、とか…ミニスカートの女子高生がいいな、とか…可愛い女子高生がいいな、とか…(笑)」
堀内さん「今、役者はお休みしてまして…本当に小説を書いてます(笑)」
『消しゴム屋』監督:落合賢 主演:でんでん、大東駿介 17分
落合監督(画像右)「2年ぶりに知多半島に来まして…感慨深いものがありますね。(落合賢監督は、第1回 知多半島映画祭にて『美雪の風鈴』でグランプリを受賞)3D作品なので撮影時モニタで確認するのに3D眼鏡を付けてたんですけど、サングラスみたいな感じなんですよ。でんでんさん、僕がアメリカ帰りってこともあって、「カッコつけてサングラス掛けてるな、アイツ」って、ずーっと思ってたらしくて(笑)」
『東山ゾウ物語~出産・飼育の舞台裏』制作:椙山女学園大学 栃窪研究室 24分
丹羽由貴奈さん「ナレーションとディレクターを担当させてもらいました」
植松聖奈さん「私は、編集と音声を主に担当させて頂きました」
田中千明さん「私は、リポーターと編集を担当させて頂きました」
MC青木さん「実はこの作品、卒業研究だったそうです。映像を作ったと言う事で良い実績を残して頂いてますし、今日ここで舞台挨拶をして頂いていると言うのは良い経験になったと思います。ありがとうございました」
『動物の転校生』監督:MATSUMO 13分
MATSUMO監督「人間関係って言うと生々しいドラマになってしまうのと、言葉を持たない動物をキャラクタにすることによって内面の葛藤とかそう言ったものを強くアニメに反映したいなと思いまして、転校生を動物にしました。絵的にユーモアを交えたい意図もありました。具体的な時代設定はないんですけれど、80年代くらいをイメージしてます。観ていただいた方が小学校時代を思い出していただけるような感じで、こう言ったイメージにしました」
『上にまいります』監督:堀河洋平 主演:市川 幹、平田大輔 23分
堀河監督「僕はヘルパーの仕事をしてまして、実際経験した内容を目の当たりにして、怒りから生まれた映画なので…この映画がどう言う風に完成していくかは分からなかったんです。出演した市川さんは実際の脳性麻痺の方でして、そのヘルパー役の平田くんも介護福祉士で…ふたりは実際に利用者・介護者の関係で、全部本当の話です。タイトルは劇中の状況だけでなく、福祉や介護、バリアフリーと言ったものの優先順位が少しでも上にあがるように…そう言う思いで、『上にまいります』と付けました」
『ウクレレ哀歌』監督:阿部正良 出演:ウクレレえいじ、優木まゆ、小堀敏夫 23分
阿部監督「僕たち“必死プロ”と言う映像ユニットをやってるんですけれども、この作品が記念すべき第1回目の作品で、かなり思い入れの強い作品でした。このように大勢の方に御覧いただき、またこう言う機会を作っていただき、本当に本日は有難いと思っております。ありがとうございます」
ウクレレえいじさん「本日はお忙しい中たくさん集まっていただきまして、本当にありがとうございました」
優木さん「皆さん初めまして、優木まゆです。今日はありがとうございました」
小堀さん「三波春夫でございます!!…あれ、軽くスベった感じですけれど…今の無し、もう一回チャンスを!…南こうせつでございます!!……同じですね(苦笑) 小堀敏夫と申します。ありがとうございました!」
コンペ作品は、以上6作品。会場から投票用紙が回収され、即時開票で応募総数110作品の頂点が決まる。
集計作業中、もう一つの招待作品が上映された。知多半島特別枠『RAFT』(27分16秒)である。
こちらの上映後トークには、三宅伸行監督と、なんとなんと、出演の松岡茉優さんが再登壇したのだ。
MCは、青木さんから第1部と同じく松岡ひとみさんにマイクが渡った。
三宅監督(画像右)「3年前に作った映画なんですけれども、知多半島で制作してここで上映出来たって言うことは凄く光栄なことなので、今日は凄く嬉しいです。ありがとうございます」
松岡茉優さん「今18歳なんですが、当時15歳…高校1年なんですね…」
MC松岡さん「3年前と言うことは、『桐島~』とかより…」
松岡茉優さん「前です、全然…私、高校2年より前の作品は観なかったんですね…最近、ちょっと距離を置いてたんですよ。でも今回、この機会に観たんですが…悪い意味で…初々しい!!(笑)まぁ…私なりに、頑張ってたんだと…はぁ(溜息)」
三宅監督「松岡さんが撮影する時、すっごい風が出てきて…自転車のシーンなんで危ないって言われたんですけれど…風が吹いてる時、松岡さんが凄いよくて(笑)」
トークセッションが終わると、映画祭はそのままフィナーレを迎える。コンペティションの結果発表である。
準グランプリは、『消しゴム屋』。
落合監督「同じ場所にある程度時間を置いて来ると、凄く感慨深い気持ちになって…今までの僕と、今の僕と、どう変わったのかなって、映画を観ながら思っておりました。これからもまた沢山映画を作って、成長してまた戻ってきますんで、その時は是非宜しくお願いします。どうもありがとうございます」
そして、110作品の頂点に立つ、グランプリは…
『上にまいります』であった。
堀河監督(画像右)「天気が悪くて心配だったんですけれど、沢山の方にこの映画を観ていただきまして、本当に嬉しいです。自分の役目は、バリアフリーのことを…心のバリアフリーのことを伝えていくことだと思ってますので、これからも映画を作ってまた知多半島映画祭に戻ってこれるように頑張っていきたいと思います。ありがとうございました!」
映画祭は、知多半島映画祭実行委員会 鈴木啓介代表の一言で幕を閉じた。
「知多半島で、所謂フィルムコミッションと言うものを作りたいんですよ。フィルムコミッションがあって、映画を作って、映画祭で上映できる…そう言った場を知多半島に作っていきたいと思ってるんです。第1回が開催されるまで、「映画祭になるのか?」と言われました。「理想を掲げて、何が楽しいんだ?」と言われました。だけど、こうして集まってる監督さんや俳優さん皆、理想を掲げて活動してるんです。そして、活躍してるんです。我々も現実を理想で覆したいと思ってます。第4回を来年秋に開催する予定ですけれども、皆さん知多半島映画祭を本当に宜しくお願いいたします」
半田名物と言えば…
“山車” “蔵” “南吉” “赤レンガ”
そして、 “映画”
取材 高橋アツシ