『映画馬鹿のススメ~80s⇒90s PFFリバイバル上映~』橋口亮輔監督×北川仁監督トークショーレポート!!
2012年1月28日(土)、オーディトリウム渋谷で『映画馬鹿のススメ~80s⇒90s PFFリバイバル上映~』が開催された。写真左より、北川仁監督、橋口亮輔監督。
『映画馬鹿のススメ』とは…?
バンタンデザイン研究所の学生有志が、過去にインディーズ映画界の登竜門的映画祭である「ぴあフィルムフェスティバル」で受賞した矢口史靖監督、橋口亮輔監督、塚本晋也監督の貴重な8ミリ作品を上映したイベント。当日は、ゲストとして『ハッシュ!』、『ぐるりのこと。』をはじめとした映画界の最前線で活躍をする橋口亮輔監督と、「第33回ぴあフィルムフェスティバル」PFFアワードにてグランプリを受賞した『ダムライフ』の北川仁監督が登壇。新旧PFFアワードグランプリ監督の対談は、進行役を務めた学生を気遣う場面も見られ、会場は終始和やかな雰囲気に包まれた。
橋口亮輔監督×北川仁監督トークショー
Q.フィルムからデジタルへの移行について
橋口:僕はずっとフィルム撮影をしてきましたが、これから作ろうとしている短編ではビデオ撮影になります。フィルムとは肌触りが違いますが、どちらが良い悪いということはなくて、コストと画質だけの問題だと思います。
北川:僕はビデオで撮影している世代ですが、フィルムの映画を観て育ったので、最初に撮った時にはなんて軽い映像なのだろうと思いました。フィルムへの憧れは持ち続けているので、変わっていくというよりは変わらないということをやっていって、昔僕が観ていた映画に近づけていきたいです。
Q.フィルムからデジタルへ移行するなか、今後も変わらないことは?
橋口:結局は作り手が何を作りたいのか、何を皆さんに伝えたいのかということが大事なので、カメラが変わり技術が進歩しても、そこは変わらないと思います。映画賞の審査をやらせてもらうことが多いのですが、今は皆ビデオ撮影したものをパソコンで編集して応募しています。編集が誰でも出来る時代になったので、テクニックはプロ顔負けです。でも、肝心の演出や脚本が出来ていない。テレビで似たものをやっていたと感じる作品や、作り手の思いが届かない作品が多くなっています。CG、3Dにも段々感動が少なくなっている時代なので、作り手は自分のスタイルをもっと追求していかなければと思います。
Q.今の時代だからこそ表現したいもの、テーマは何ですか?
北川:僕はまだ自分のやりたいことをはっきりとは見つけられていません。内容やテーマにはこれといったこだわりがまだ無い分、ブラックな笑いを追求していきたいと思います。内容というよりは、出し方や手法にこだわっていきたいです。
橋口:僕は、自分が生きながら作るもののテーマを抱え込んでしまうという人間です。今までがそうだったので、今後もそうやっていくしかない。それでも、お客さんが100%満足する映画や観終わった後に足取りが軽くなるような映画を作りたいと思っています。
今回の実行委員長である山盛博隆さんに上映会のきっかけをお伺いした。
「学校の授業で映画上映会をすることになり、やるなら映画館の上映ならではのものをやろうと思いました。偶然、矢口史靖監督の昔の作品を見たときに、規模は小さくても今の監督の作品と変わっていなくて、すごく面白かった。まだ自分の知らない作品は多くありますし、今の日本の映画界を支えている監督の自主制作時代の作品を観ることができたらと思い、企画しました。」
フィルム撮影からデジタル撮影への移行が問題視されている今、映画作りにおける“覚悟”と今後の“可能性”を感じることができ、「映画馬鹿」な方々のお腹も満たされるイベントとなった。
取材・編集 佐藤久美